こんにちは!
金融ライターの大西カツシ(@katsushio1603)です。
財形貯蓄(ざいけいちょちく)という言葉を聞いたことはないでしょうか。
もしかしたら、勤務先から財形貯蓄について説明を受けたことがあるかもしれませんね。
財形貯蓄を利用すれば、貯金が苦手でも無理なくお金を貯めることができますよ。
ただし、財形貯蓄は誰でも利用できるわけではなく、利用できる場合も注意しなければならないことがあります。
そこでこのページでは、財形貯蓄の仕組みやメリット・デメリット、金利、引き出し、解約について説明していきますね。
財形貯蓄はどんな制度?
財形貯蓄とは、勤労者財産形成促進法という法律に基づき、企業が従業員の財産づくりを国とともに支援する制度です。
財形貯蓄に加入すると、企業は毎月の給与やボーナスから一定額を天引きして金融機関に預け入れてくれます。
収入の一部を強制的に貯金に回せるので、確実にお金を貯めることができますよ。
財形貯蓄は福利厚生のひとつであるため、利用するかは従業員が自由に選べますが、勤務先が財形制度を導入していないと利用できません。
また、財形貯蓄はフリーランス・個人事業主など、個人では加入できないので注意してくださいね。
財形貯蓄は全部で3種類
財形貯蓄には、一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄の3種類があります。
ここでは、それぞれの特徴について説明していきますね。
一般財形貯蓄
一般財形貯蓄は、使用目的を限定せず、貯まったお金は自由に使える財形貯蓄です。
結婚・出産などのライフイベント、ケガや病気への備え、旅行・レジャーなど、幅広い目的に利用できますよ。
積立期間は原則3年以上で、貯金開始から1年以内は引き出ししないことが契約要件となっています。
ただし、あくまでも契約要件であり、履行義務があるわけではないので、実際はいつでも自由に引き出しできますよ。
一般財形貯蓄には、利子が非課税になる優遇措置はなく、給与天引きできるところ以外は銀行預金と大きな違いはありません。
一般財形貯蓄は目的を限定せず、将来やもしものときの備えとして貯金したい場合におすすめですよ。
財形住宅貯蓄
財形住宅貯蓄は、使用目的が住宅の建設・購入・リフォームの財形貯蓄で、住まいの資金づくりに適しています。
次に説明する財形年金貯蓄と合わせて、貯蓄残高550万円までは利子が非課税になりますよ。
積立期間は原則5年以上ですが、実際は一般財形貯蓄と同じくいつでも引き出し可能です。
ただし、住宅の建設・購入・リフォーム以外の引き出しは、財形住宅貯蓄の要件を満たさないため、引き出しが行われた月から5年間さかのぼって利子に課税されます。
財形住宅貯蓄の、建設・購入・リフォームするマイホームの主な要件は以下の通りです。
- 床面積が50㎡以上
- 中古住宅は築20年(耐火構造は25年)以内、または一定の耐震基準を満たすもの
- 工事後の住宅の床面積が50㎡以上(リフォームの場合)
- 工事費用の総額が75万円超(リフォームの場合)
財形住宅貯蓄を引き出すときは、念のため、要件を満たしているか勤務先を通して確認するといいですよ。
財形住宅貯蓄は、マイホームの購入資金を貯めたいときに利用するのがおすすめです。
財形年金貯蓄
財形年金貯蓄は、60歳以降に年金として受け取る財形貯蓄で、老後資金づくりに適しています。
財形住宅貯蓄と合わせて、貯蓄残高550万円(保険の場合は払込額385万円)まで利子が非課税になりますよ。
積立期間は原則5年以上ですが、一般財形貯蓄・財形住宅貯蓄と同じくいつでも引き出し可能です。
受取期間は60歳以降に5年以上20年以内で、積み立て終了から年金受け取り開始まで、5年以内の据え置き期間を設定できます。
たとえば、据え置き期間を5年に設定すると、積み立てが終了してから5年経過後に年金の受け取りが開始になりますよ。
目的外の引き出しを行うと、財形年金貯蓄の要件を満たさないため、5年間さかのぼって利子に課税されるので注意してください。
財形年金貯蓄は、老後資金づくりのために貯金したい場合におすすめです。
財形貯蓄の適用金利
財形貯蓄の適用金利は、企業が利用している金融機関によって異なるので、勤務先の担当部署に確認しないと正確な金利は確認できません。
ここでは参考として、みずほ銀行、三菱UFJ信託銀行、中央労働金庫(ろうきん)の財形貯蓄の適用金利をまとめました。
金融機関 | 適用金利(年率:税引前) |
---|---|
みずほ銀行 | 0.01% |
三菱UFJ信託銀行 | 0.01% |
中央労働金庫 | 0.15% |
労働信用金庫の金利は、みずほ銀行と三菱UFJ信託銀行に比べると少し高くなっていますね。
財形貯蓄は定期預金で運用されるため、どの金融機関もそれほど金利は高くありませんよ。
たとえば、みずほ銀行の財形貯蓄で100万円を1年間運用した場合、もらえる利子は100円(100万円×0.01%)です。
利子には20.315%の税金がかかるので、一般財形貯蓄の場合は税金が約20円(100円×20.315%)差し引かれ、手取り額は約80円になりますね。
一方、財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄は利子が非課税になるため、税引前の100円がそのまま手取り額になります。
手取り額が増えるのはいいのですが、現在は低金利なので、非課税のメリットはそれほど大きくはありません。
そのため、財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄で目的外の引き出しをしても、それほど影響はないですよ。
より高い金利を求めるなら、金利が高いネット銀行の普通預金・定期預金を利用するのがおすすめです。
参考:金利の高くて良いおすすめ銀行はどこ?普通預金の利息を徹底比較して貯金を増やそう
参考:定期預金金利の高い銀行で徹底比較!定期預金の利息と税金が計算できるツールも
財形貯蓄のメリット
先ほど紹介したように、財形貯蓄の金利はそれほど高くありませんが、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、財形貯蓄のメリットを3つ紹介しますね。
先取り貯金ができる
財形貯蓄の一番のメリットは、先取り貯金ができることです。
給与天引きで貯金できるので、強制的にお金が貯まる仕組みを作ることができますよ。
お金が残ったら貯金しようと思っても、よほど強い意志がない限り、お金はあるだけ使ってしまうのではないでしょうか。
財形貯蓄で給与天引きにして、最初からなかったものとして生活すれば、自分の意志とは関係なく貯金できます。
たとえば、財形貯蓄で毎月2万円を給与天引きにして1年間働けば、確実に24万円貯まりますよね。
さらに年2回ボーナスが出るなら、追加で13万円ずつ天引きにすると1年で50万円、2年働けば100万円貯まります。
ボーナスに手をつけなければ、1年で100万円貯めるのも夢ではないですよ!
また、財形貯蓄を引き出すには、担当部署に連絡して手続きしなくてはなりません。
簡単には引き出せないため、貯金を続けやすいメリットもあります。
私は会社員時代に一般財形貯蓄で100万円以上貯めましたが、がんばって貯金している感覚はありませんでした。
たまに貯蓄残高の通知がくると、思っていた以上に貯まっていて引き出したくなりましたね。
しかし、手続きが面倒なので思いとどまることができ、退職するまで続けられました。
給与天引きにするとストレスなく貯金できるので、勤務先で財形制度があるなら利用するのがおすすめですよ。
転職先に財形制度があれば継続可能
財形貯蓄は転職で勤務先が変わっても、転職先が財形制度を導入していれば継続できます。
退職後2年以内に所定の手続きをすれば、転職先でも財形貯蓄を続けられますよ。
今までの勤務先と転職先で、取扱金融機関が異なる場合でも継続可能です。
転職後も財形貯蓄を継続する場合は、転職先の担当部署に相談して手続きしましょう。
財形持家転貸融資(低金利の住宅ローン)が利用できる
財形貯蓄は、財形持家転貸融資(ざいけいもちいえてんたいゆうし)という低金利の住宅ローンが利用できますよ。
財形持家転貸融資は、財形貯蓄の加入者が利用できる住宅ローンで、利用するための主な要件は以下の通りです。
- 自分で所有および居住するための住宅を建設・購入・リフォームする
- 財形貯蓄残高が50万円以上
- 一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄いずれかの積み立てを1年以上継続して行っている
- 申込日現在の年齢が70歳未満で、完済時の年齢が80歳まで
融資額は、財形貯蓄残高の10倍相当額以内(最高4,000万円以内)、かつ実際に必要な費用の90%以内です。
金利は5年間固定金利制で、5年経過日ごとに適用金利が見直されますよ。
2019年7月1日現在の利率は年0.59%です。
かなりの低金利でローンが組めますね!
財形持家転貸融資は、マイホームを購入するときに、住宅ローンの金利を低く抑えたい場合におすすめです。
ただし、企業によっては、退職時に退職金などでローンの残債を全額返済すると規定している場合もあります。
低金利で住宅ローンが利用できるのは魅力ですが、転職する可能性があるなら、財形持家転貸融資の利用は慎重に判断したほうがいいですよ。
財形貯蓄のデメリット
財形貯蓄は、貯金するために使うならデメリットはほとんどありません。
取扱金融機関に本人名義の口座で積み立てられるので、会社が倒産しても資金に影響はないですよ。
また、万が一取扱金融機関が倒産しても、元本1,000万円とその利息までは全額保護されるので、安心して利用できます。
ただし、財形貯蓄の金利は高くないので、お金を増やしたい場合は向いていません。
貯金ではなく、お金を増やしたい場合は、運用益が非課税になるつみたてNISAやiDeCoを活用して、投資信託の積立投資に取り組むのがおすすめですよ。
財形貯蓄の引き出し方法
財形貯蓄を引き出す場合は、勤務先を通じて金融機関で手続きを行います。
手続き方法は勤務先によって異なるので、担当部署に確認しましょう。
一般財形貯蓄の場合は問題ありませんが、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は目的外で引き出しすると、5年間さかのぼって利子に課税されてしまうので注意してくださいね。
ただし、先ほども説明したように、現在は金利が低いので、課税されても影響はそれほど大きくありません。
また、利子に課税されるだけで元本が減るわけではないので、本当にお金が必要な場合は引き出しの手続きを行いましょう。
財形貯蓄の解約方法
引き出しではなく、財形貯蓄そのものを解約する場合は、基本的に勤務先を通じて金融機関に解約の手続きを行うので、まずは勤務先の担当部署に連絡しましょう。
私が退職するときに財形貯蓄を解約したときも、勤務先の担当部署に連絡して手続きしてもらいましたよ。
ただし、勤務先によっては、従業員本人が金融機関に出向いて直接手続きをするケースもあるようです。
勤務先によって解約方法が異なるので、担当部署に連絡して解約方法を確認しましょう。
さいごに
財形貯蓄は、給与天引きで先取り貯金ができるのが一番のメリットです。
給与天引きで最初からなかったものとして生活すれば、確実に貯金できますよ。
私も会社員時代は財形貯蓄に加入していましたが、ストレスなく貯金できました。
また、マイホームを購入する場合は、財形持家転貸融資で低金利の住宅ローンが利用できるメリットもあります。
勤務先が財形制度を導入しているなら、財形貯蓄に加入して、給与天引きで先取り貯金に取り組むのがおすすめですよ。