株式投資をしていて、「貸株サービス」という言葉を聞いたことはないでしょうか。
貸株サービスは、保有している株式を証券会社に貸し出すと貸株金利がもらえるサービスです。
株式投資で利益を得る場合、売却益の獲得を目指したり、長期保有して配当金や株主優待をもらったりする方法が一般的ですが、貸株サービスで利益を得る方法もありますよ。
ただし、貸株サービスにはデメリットやリスクもあるため、利用する前に仕組みを理解しておくことが大切です。
そこでこの記事では、貸株サービスのメリット・デメリット、リスク、税金、おすすめの証券会社について詳しく説明していきますね。
貸株サービスとは
貸株サービスとは、保有中の株式を証券会社に貸し出すと、銀行預金の利息のように貸株金利を受け取れるサービスです。
証券会社は借り受けた株式を機関投資家などに貸し出して貸株料を受け取り、その貸株料を原資に貸株サービス利用者へ貸株金利を支払う仕組みになっています。
株式投資で利益を得る方法は、売却益と配当金、株主優待の3つが一般的ですが、貸株サービスを利用すればさらに貸株金利ももらえますよ。
貸株金利は証券会社や銘柄によって異なり、最低金利は年率0.1%程度ですが、年率1%を超える銘柄も多くあります。
▼楽天証券で確認すると、年率10%超える高金利の銘柄もありますね。
長期保有している株式があるなら、貸株サービスを利用して貸株金利を受け取るのがおすすめですよ。
貸株サービスを利用するにはどうすればいい?
貸株サービスを利用するには、貸株サービスを取り扱っている証券会社で口座開設する必要があります。
口座開設後は証券会社のマイページにログインして、貸株サービスの申し込みをするだけで利用できますよ。
▼楽天証券の場合は国内株式メニューの貸株画面を開き、「貸株サービスお申し込みはこちら」ボタンを押して手続きを行います。
どの証券会社が貸株サービスを取り扱っているかは、あとで詳しく説明しますね。
貸株中でも株主優待や配当金はもらえる
貸株中は株式の所有権が証券会社に移転するため、権利確定日に貸株をしていると、通常は株主優待や配当金を受け取れなくなってしまいます。
しかし、貸株中でも株主優待や配当金がもらえるように、権利確定日になると自動で株式を返却してくれる証券会社もありますよ。
たとえば、楽天証券の貸株サービスでは、以下3つのコースが用意されています。
- 金利優先コース(貸株金利を優先)
- 株主優待優先コース(株主優待の受け取りを優先)
- 株主優待・予想有配優先コース(株主優待と配当金の受け取りを優先)
金利優先は権利確定日も貸株が継続されるので、株主優待はもらえません。
しかし、株主優待優先または株主優待・予想有配優先を選ぶと、自分で貸株を外す手続きをしなくても株主優待をもらえますよ。
また、金利優先と株主優待優先は、企業から配当金をもらうことはできませんが、代わりに証券会社から配当金相当額が支払われます。
貸株サービスを提供している証券会社のほとんどは株主優待の自動取得に対応しており、配当金や配当金相当額も受け取れますよ。
貸株中でも株式は売却可能
貸株サービスを利用して保有している株式を貸し出すと、かんたんに売却できなくなると思うかもしれませんね。
しかし、貸株中の株式は手続きなしで売却できるので、売却タイミングを逃すことはありません。
購入した株式を貸株に出して、貸株金利を得ながら売却益も狙うことも可能ですよ。
株主優待の継続保有特典を失う可能性がある
貸株サービスで株主優待を優先するコースを選択すると、権利確定日に自分で貸株を外さなくても株主優待をもらえます。
ただし、株主である期間が長いほど優待内容が増える「継続保有特典」がある銘柄については注意が必要ですよ。
たとえば、ビックカメラ(3048)の株式を100株保有すると、年間3,000円分の買い物券をもらえますが、1年以上の継続保有で1,000円分、2年以上の継続保有で2,000円分が追加されます。
継続保有特典がある銘柄は、まれに権利確定日以外の任意の日に継続保有の判定が行われることがあるため、株主優待を優先するコースを選択しても継続保有の権利を失う可能性があるのです。
貸株金利より株主優待を優先したい場合、継続保有特典がある銘柄は貸株に出さないほうが安全ですよ。
貸株中に証券会社が倒産すると株式を失うリスクがある
証券会社には会社財産と顧客財産を分別管理する義務があり、証券会社が破綻しても、通常は投資者保護基金によって1,000万円までは補償されます。
しかし、貸株サービスは投資者保護基金の保護対象外です。
貸株中は株式の所有権が証券会社に移転するため、証券会社が倒産すると株式を失うリスクがありますよ。
証券会社が急に破綻するケースは考えにくいですが、可能性はゼロではありません。
貸株サービスを利用するときは、証券会社の経営状況を気にかけておくことが大切ですよ。
貸株サービスと信用取引口座が併用できない証券会社もある
信用取引口座を保有していると、貸株サービスを利用できない証券会社もあります。
株式投資で現物取引しか行わない場合は、特に気にする必要はありません。
しかし、信用取引口座を保有している場合は、貸株サービスを利用できない可能性があるので注意してくださいね。
貸株サービスの税金について
証券会社で特定口座を開設していれば、株式の売却益や配当金にかかる税金は源泉徴収され、証券会社が代わりに納税してくれます。
しかし、貸株サービスで受け取る貸株金利と配当金相当額は雑所得に該当し、総合課税の対象となるため、基本的には確定申告する必要がありますよ。
年収2,000万円以下の会社員で、給与所得以外の所得が20万円以下の場合は確定申告不要ですが、自営業者などは確定申告が必要になります。
確定申告が必要かどうか自分で判断できない場合は、所轄の税務署に確認しましょう。
配当金相当額の二重課税に注意
貸株サービスで証券会社からもらえる配当金相当額は、所得税が差し引かれた後の金額で入金されます。
配当金相当額は雑所得に該当し、確定申告するとさらに所得税と住民税が課税されるため、貸株サービスを利用すると逆に手取り額が少なくなる場合がありますよ。
たとえば、年収400万円(所得税10.21%、住民税10%)の人が、配当金10万円を受け取るケースについて確認してみましょう。
貸株サービスを利用せずに、配当金を受け取る場合の手取り額は以下の通りです。
- 源泉徴収額:10万円×20.315%(所得税15.315%+住民税5%)=20,315円
- 手取り額:10万円-20,315円=79,685円
一方、貸株サービスで配当金相当額を受け取る場合の手取り額は以下のようになります。
- 配当金相当額:10万円-(10万円×15.315%)=84,685円
- 所得税・住民税:84,685円×20.21%(10.21%+10%)=17,114円
- 手取り額:84,685円-17,114円=67,571円
個人の状況によって違いはありますが、配当金相当額を受け取ると最終的な手取り額は少なくなることが多いですね。
配当金相当額の二重課税を防ぐためにも、貸株サービスでは株主優待と配当金の両方を受け取れるコースを選択するのがおすすめですよ。
貸株サービスを実施している主な証券会社一覧
貸株サービスを実施している主な証券会社をまとめました。
個人的に一番おすすめなのは楽天証券ですね。
楽天証券の貸株サービスは、株主優待と配当金の両方を受け取れる「株主優待・予想有配優先」が選択できます。
また、信用取引口座と貸株サービスの併用も可能です。
楽天証券以外では、配当金の自動受け取りに対応しているマネックス証券と松井証券がおすすめですよ。
さいごに
貸株サービスは、保有中の株式を証券会社に貸し出すだけで貸株金利がもらえるお得なサービスです。
ただし、貸株金利や配当金相当額は雑所得に該当するため、基本的に確定申告が必要になります。
また、配当金を配当金相当額として受け取ると、所得税が二重課税されて手取り額が減ってしまうことがあるので注意が必要です。
貸株サービスを利用する場合は、楽天証券のように株主優待と配当金の両方を受け取れる証券会社がおすすめですよ。