信用取引とは?仕組み・手数料・メリットとデメリットについてわかりやすく解説

株式取引をしていると、「信用取引」という言葉を聞いたり、目にしたりすることはないでしょうか。

また、信用取引という言葉を聞いたことがあっても、とにかく「ハイリスク」「難しい」「プロがするもの」という、縁遠いイメージなどがあるかもしれませんね。

しかし実際には、信用取引をすることで株価全体に大きな影響を与えます。

全く知らないままでいると、適切な株取引ができず損をしてしまうかも知れません。

信用取引の知識は、するしないに関わらず株をする上でとても重要なことです。

そこでこのページでは、そんな信用取引が今よりもっと身近な存在になるよう、信用取引の特徴や使う場合のメリット・デメリットについて詳しく紹介していきますね。

信用取引とは?仕組み・手数料・メリットとデメリット

信用取引って何?

まずは、信用取引の基本から。
信用取引とは、証券会社から借りたお金でおこなう投資方法です。

自分が持っている資金や株式を担保にして、最大約3.3倍のお金を借りて取引ができます。

しかし、一口に信用取引と言っても「制度信用」と「一般信用」の2種類があるので、次の項目でそれぞれの違いを確認しましょう。

制度信用と一般信用の違いは?

制度信用と一般信用の違い
制度信用一般信用
返済期限6か月無期限
取引銘柄取引所が決めた銘柄だけほぼ全ての銘柄
手数料全体的に安い全体的に高い
逆日歩可能性ありなし

制度信用って何?

制度信用取引とは、返済期限と銘柄が決まっている取引のことです。

具体的には、返済期限が6か月、取引できる銘柄は証券取引所によって決められています。

一般信用よりも手数料や金利が安いのがメリットですね。

制度信用で選べる銘柄は、買建と売建どちらもできる「貸借銘柄」と、買建しかできない「信用銘柄」の2種類に分けられます。

買建と売建については、信用取引の手順で詳しく紹介しますね。

一般信用って何?

一般信用取引とは、返済期限と銘柄が自由に決められる取引のことです。
返済期限は無期限で、取引銘柄にも制限がなく自由に選べます。

制度信用よりも手数料や金利が高いのがデメリットですが、逆日歩がないのがメリットなのです。

逆日歩とは、制度信用で株を借りて取引する時に、勝手にかかってしまうかも知れない追加の手数料のことをいいます。

信用取引で空売り(株を借りての取引)が多くなると、現物より圧倒的に株が足りなくなってしまいますよね。

そこで証券会社が追加で株を調達するわけですが、逆日歩とはその調達手数料を投資家が負担するために発生するのです。

制度信用ではかなりの厄介者なんですが、一般信用では逆日歩の心配がないので安心ですね。

ちなみにネット証券では、一般信用にも返済期日をもうける代わりに、手数料や金利が安くなっているプランがあります。

例えば、SBI証券なら日計り信用取引松井証券なら一日信用取引というプランです。

どちらもデイトレード専用の一般信用取引で、当日が返済期限になります。

コストをできるだけ抑えながら逆日歩のない一般信用取引ができるので、デイトレードをメインにするならおすすめですよ!

信用取引の手順は?

信用取引の難しさは、その手順が複雑なところだと思います。
ここでは、できるだけ丁寧に説明していきますね。

まず、信用取引では、証券会社からお金を借りてスタートする取引を「買建」、株式を借りてスタートする取引を「売建(空売り)」と呼んでいます。

そして、信用取引ではお金や株を借りるので、必ず返済をしなければいけません。

この返済方法を理解するのが、ちょっと難しいのです。

実は、買建と売建、それぞれに2つの返済方法が存在します。

買建の返済1:反対売買

株を売って、借りた分の代金や手数料を返す方法です。
スタート時よりも株価が上がっていれば、投資家の利益になります。

現物の株を売る時と、考え方は変わらないです。

買建の返済2:現引

株を売らずに、借りた分の代金と手数料だけを返す方法です。
株は現物として引き取り、手元に残して保有し続けることができます。

株主優待を狙った信用取引では、この方法で決済すると余計なコストがかからずお得ですよ。

売建の返済1:反対売買

売建でも反対売買ができます。

ただし、こちらは株を買い戻す作業なので、スタート時よりも株価が下がっていれば利益が出るという仕組みです。

ややこしいですが、買建との違いをしっかり覚えてくださいね!

売建の返済2:現渡し

借りた株と同じ株を現物で持っている場合にできる返済方法です。

「返済期限がせまっているのに株価が下がらない」という時に、現渡しをすると損失を防げる可能性が高くなります。

わざわざ借りた株を買い戻さなくていいので、手続きも比較的スムーズに終わりますよ。

信用取引のメリットは?

信用取引の手順がわかりましたが、そもそも信用取引することにどんなメリットがあるのかが気になるかと思います。

信用取引には、以下のようなメリットがありますよ。

  • 高額な取引ができ、大きな利益が見込める
  • 株主優待をほぼ無料で受けられる
  • 手数料が安い
  • 株価が下がっても利益が出る

高額な取引ができ、大きな利益が見込める

信用取引では、最大で約3.3倍のお金を借りて株取引ができます。

例えば、手持ちの資金が10万円でも、信用取引なら33万円ものお金を借りることができるのです。

利益が出たら、普通の取引を行うよりも大きく儲けられますよね。

まるでテコの原理のように、少ない元手から何倍もの利益を生み出すことを「レバレッジ効果」といいます。

信用取引では、このレバレッジ効果を利用して、少ない資金でも高額な取引ができ、大きな利益が期待できるのです。

株主優待をほぼ無料で受けられる

信用取引では、「クロス取引(つなぎ売り)」という方法で、株主優待をほぼ無料で受けることができます!

しかし、もちろん完全無料で取引できるわけではなく、売買手数料や最低限の金利はしっかり取られてしまうので「ほぼ無料」という書き方にしました。

クロス取引は、「現物取引の買い注文」と「信用取引の売り注文(空売り)」を同時に行うことです。

買い注文と売り注文を同時にすれば、その後の株価がどう変動しようとも影響を受けませんよね。

株価が下落しても大きな損失を出すことなく、株主優待だけはしっかりゲットできるので、優待好きにはとてもお得な方法なのです。

手数料が安い

どの証券会社でも、信用取引にかかる手数料は現物取引よりも安いです。

できる限り手数料を払いたくないなら、現物取引よりも信用取引を選んだ方が、手数料の節約になりますよ。

ただし、信用取引で買った株をそのまま保有し続けると、どんどん金利がかかってしまいます。

余計な金利を防ぐためには、株を買ったらすぐに返済して信用取引を終わらせておきましょう。

信用取引の返済方法は「反対売買(返済売り)」と「現引」の2種類がありますが、節約には現引が断然おすすめです。

株を売って返済する反対売買では、株価が値下がりしている時に売ると損失が出ますし、売り注文分の手数料もかかります。

現引なら、実際に株は売らず代金だけを返済する方法なので、金利がかからない現物株として保有し続けることができるです。

さらに、現引では売り注文をしないので手数料も節約になりますよね。

株価が下がっても利益が出る

クロス取引をすれば、株価の値動きに関係なく株主優待をゲットすることができます。
また、売建をして反対売買をすれば、株価が下がっても利益になりますよね。

現物取引では、株価が上がらなければほとんどメリットになりません。

しかし、信用取引では株価が下がっても、それはそれでメリットに繋がるのです。

個人的には、現物取引と信用取引を一緒にしていれば、最高のリスク対策になると思っていますよ。

信用取引のデメリットは?

高リスクといわれる信用取引ですから、デメリットこそしっかりチェックしておきたいところですよね。

  • 毎日金利がかかる
  • 特殊な費用がかかる
  • 損失にもレバレッジがかかる
  • 制度信用なら返済期限がある
  • NISA口座は使えない
  • 投資経験1年未満は取引できない

毎日金利がかかる

証券会社にお金を借りているので、借りている日数分はしっかり金利がかかっています。

メリットの項目でも触れましたが、信用取引で株を買った場合は、すぐに現引で代金を返済すれば最低限の金利負担で済みますよ。

特殊な費用がかかる

信用取引では、売買手数料があるのはもちろん、貸株料という特殊な手数料もかかるんです。

現物取引しかしていないと見落としがちになってしまうこともあるので、契約前に負担する費用をしっかり確認しておきましょう。

さらに、ある日突然かかってしまう特別要注意なコストもあるので、次の項目で詳しく説明しますね!

損失にもレバレッジがかかる

信用取引のメリットは、自己資金以上の高額な取引ができて、その分大きな利益が見込めることです。

しかし一方で、損失を出してしまうと、損失額もレバレッジ効果で大きくなってしまいます。

これが、「信用取引は高リスク」といわれる大きな理由ですよね。

株主優待狙いでクロス取引をするなら心配ないかも知れませんが、純粋に売買益で儲けたいなら、損失によるレバレッジ効果のリスクはある程度想定しておかなければいけません。

制度信用なら返済期限がある

一般信用取引を選べば返済期限はありません。

しかし、制度信用取引には6か月という返済期限があるので、お金を借りたら期限内までに返しましょう。

期限までにお金を返さないと、反対売買で強制的に決済されてしまいますよ!

NISA口座は使えない

NISA口座で信用取引を行うことはできません。
また、NISA口座で持っている株を信用取引の担保にすることもできないんです。

どうしても信用取引の担保が必要なら、NISA口座の株を課税口座へ移管する手続きを行いましょう。

投資経験1年未満は取引できない

信用取引は高リスクなので、専用口座を開設するためには投資経験が最低でも1年以上必要です。

また、投資経験さえあれば誰でも取引できるわけではなく、資産・年齢などの条件や審査もあります。

証券会社によっては、申込をした後、さらに電話で面接をする厳しいところもあるくらいです。

特に要注意な2つのコスト:逆日歩と追証

信用取引では現物取引にはないコストがあるので、取引を始める前にしっかり内容を覚えることが大事です。

特にちゃんと覚えて欲しいのが「逆日歩」と「追証」で、ある日突然、勝手にかかっていることもあるのです。

逆日歩

一般信用の説明で簡単にご紹介しましたが、ここでも丁寧に解説しますね。

逆日歩は、制度信用取引をしている時にかかる可能性があります。

必ずかかるものではなく、売建(空売り)が多くなった時に不足した株を調達するための手数料です。

もともと株の発行数の少ない株は、特に逆日歩がかかりやすいので気をつけましょう。

また、株主優待を狙ったクロス取引が増えそうな銘柄も、高額な逆日歩がつきやすいので要注意です!

追証(おいしょう)

追証とは、追加で保証金(担保)がかかってしまうことです。

信用取引をするために差し出した担保が株式だった場合、市場に連動して担保の株も値動きしますよね。

もしも担保にしている株が急激に値下がりしてしまったら、担保としての価値も下がってしまいます。

これでは、信用取引が安定して行えません。

そこで、証券会社は担保が一定の維持率を下回ると、投資家に追加で担保を入れてもらうんです。

もしも、期日までに追証をしなかった場合には、強制的に反対売買されてしまうこともあるので気をつけてください。

ちなみに、担保の維持率を専門用語で「委託保証金維持率」といい、20~30%が追証の目安です。

担保に対し、借りられる額ギリギリまで取引をしていると追証のダメージが大きくなるので、信用取引では金額に余裕を持たせるよう心がけましょう。

また、最初から株式ではなく、お金を担保にしておくと追証の心配はありませんよ。

信用取引は何のためにあるの?

そもそも、どうしてこんなにハイリスク・ハイリターンな信用取引が生まれたのでしょうか?

それは、株取引をよりオープンにして活性化させるためです。

もしも現物取引しかできなければ、市場を動かせるのは一部のお金持ちのみに限られてしまいます。

すると、お金を持つ人にとって都合の良い経済社会になってしまいますよね。

一部の人たちの都合で株価が大きく上下することがあっては、日本経済が不安定になってしまいます。

信用取引はリスクが大きいですが、資金が少ない人にも積極的に株の売買をしてもらって、市場経済を安定させようという狙いが込められているのです。

2013年信用取引制度改正とは?

信用取引は、2013年1月からルールが一部変わりました。

具体的な変更点は、以下の通りです。

  • 同じ保証金で1日何回でも取引できる
  • 確定利益をすぐに保証金として使える
  • 建玉返済後すぐに追証が解消される

これから信用取引を始めるなら、最初から変更済みのルールで覚えることになるので大丈夫だとは思いますが、念のため変更前との違いを確認しておくと安心ですよね。

同じ保証金で1日何回でも取引できる

例えば、1日30万円分の信用取引をしようとした場合、これまでは10万円の株を売買したら残りは20万円分の取引しかできませんでした。

しかし、2013年からは10万円の売買が完了すれば、同じ日にまた30万円分の信用取引が可能になったのです!

当日に決済さえできれば、同じ日に何回でも無制限で売買ができますよ。

確定利益をすぐに保証金として使える

2013年から、信用取引の決済によって利益が出たらすぐに保証金に反映されるようになりました。

もともと保証金が50万円で当日に3万円の利益を出したとすると、その日のうちに保証金は53万円となります。

すぐに保証金が増えて、取引に使えるのはうれしいですよね。

しかし注意してほしいのは、利益だけではなく損失を出しても同じということです。

決済をした結果、損失が出てしまうと、保証金はその分減ってしまいます。

建玉返済後すぐに追証が解消される

建玉とは、信用取引で借りたお金や株式が返済されていない状態をいいます。
建玉返済とは、信用取引で反対売買や現引・現渡をして、借りた分を返済することです。

ただ、これまでは一度追証が発生してしまうと返済では解消されず、絶対に追加で担保を入金しなければいけないというルールでした。

しかし、2013年からは返済によって追証を防ぐことできるようになったのです。

信用取引にとって、追証は一つの不安材料なので、たとえ発生してもすぐに解消できれば少し気持ちが楽になりますよね。

さいごに

冒頭でも書きましたが、株取引をする人にとって信用取引の知識は必須です。

信用取引のしくみを理解することで、市場全体の価格予想がしやすくなります。

「信用取引は高リスクだから手を出さない。自分には関係ない」とは思わず、知識だけでも身に付けておけば現物取引にも役立つはずですよ!

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この記事を書いた人

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