年末調整では、よくわからないまま書類を記入して提出しますよね。
会社側が「では、提出してください」というばかりで、何をどうしていいのか不安になることもあるかと思います。
資料があったとしてもわかりづらいことがありますね。
僕は前職の給与課で、全従業員約250名分の年末調整の処理を1人でしていました。
「提出されてくる書類の間違いが、ひとつでも減るように!」という思いで、とても詳しい資料を作ったこともあります。
そこでこのページでは、給与所得者の保険料控除申告書の、書き方・計算方法について紹介していきますね。
年末調整書類の資料作りの経験を活かし、徹底的に細かくしていますよ!
令和元年分 給与所得者の保険料控除申告書の書き方と記入例
給与所得者の保険料控除申告書は、加入している生命保険や医療保険、地震保険などで書き方が変わってきます。
一方で何も加入しておらず、保険料控除の必要がない場合は、給与所得者の保険料控除申告書の提出は不要です。
給与所得者の保険料控除申告書の上部分の書き方
▼給与所得者の保険料控除申告書の、上の部分から紹介します。
▼まずは左側。
記入するところは、以下の通り。
- 給与の支払者(会社)の所在地等の所轄税務署の名称
- 勤務している(在籍している)会社の名前
- 会社の法人番号(マイナンバー)は会社が記入するので、書かなくてもよい
- 会社の登記住所
▼右側です。
記入するところは、以下の通り。
- 氏名とフリガナ
- 住所
印鑑を忘れないようにしましょう。
シャチハタはNGですよ。
給与所得者の保険料控除申告書の左部分の書き方
いよいよ保険料控除の欄に記入していきます。
▼まずは左側から。
▼4つのパーツでできています。
- 一般の生命保険料
- 介護医療保険料
- 個人年金保険料
- 計算式と生命保険料控除額
それぞれにわけて、詳しく紹介していきますね。
一般の生命保険料欄の書き方
まずは、一般の生命保険料欄の書き方です。
▼10月頃からだんだんと保険会社から、生命保険料控除証明書などが手元に届いていませんか?
中に入っている資料を見ながら、記入していきましょう。
▼一般の生命保険料欄の書き方は、一例として紹介していきます。
まず、生命保険料控除証明書を見ながら記入するのは、以下の内容です。
- 保険会社等の名称
- 保険等の種類
- 保険期間または年金支払期間
- 保険等の契約者の氏名
- 保険金等の受取人の氏名
- 保険金等の受取人と本人との続柄
- 新・旧の区分
- 本年中に支払った保険料等の金額
▼こちらは、日本コープ共済生活協同組合連合会の控除証明書です。
一例として、どこに何が書いてあるか紹介します。
- 保険会社等の名称と略称
- 保険等の種類
- 保険期間または年金支払期間
- 保険等の契約者の氏名
- 新・旧の区分
- 本年中に支払った保険料等の金額
気を付けたい点は、1枚の控除証明書に「生命保険料控除」と「介護医療保険料控除」が載っていることです。
「介護医療保険料控除」は、一般の生命保険料欄の下側にあるので、あとで記入します。
▼ちなみに、上に紹介した控除証明書の場合、一般の生命保険料欄には以下のように記入しますよ。
とても簡単です。
一般の生命保険料欄の計算方法と書き方
保険料の情報を書いたあとは、控除金額の計算をしましょう。
▼「新・旧の区分」で保険料を分けて書きます。新・旧が複数あった場合は、加算してくださいね。
▼計算式に当てはめて計算します。
▼新保険料の計算式で計算は、以下のとおり。
▼旧保険料の計算式で計算は、以下のとおり。
▼計算式は、生命保険料控除欄の一番下にあります。
保険料の金額によって計算式が違うので、注意しましょう。
また、1円未満の端数がでた場合は、切り上げです。
▼「計(1+2)」の欄へ、1と2を加算した数字を書きます。
合計が67,500円となりますが、「計(1+2)」の欄へは「最高40,000円」までの記入しかできません。
▼最後に「2と3のいずれか大きい金額」欄へ、2と3を比べたときに大きなほうを書きます。
介護医療保険料欄の書き方と計算方法
介護医療保険料欄の書き方や計算方法は、さきほどの一般の生命保険料欄と、ほぼ同じです。
- 保険会社等の名称
- 保険等の種類
- 保険期間または年金支払期間
- 保険等の契約者の氏名
- 保険金等の受取人の氏名
- 保険金等の受取人と本人との続柄
- 本年中に支払った保険料等の金額
「新・旧の区分」はなく、すべて「新」の区分です。
▼計算式は、生命保険料控除欄の一番下にあります。
保険料の金額によって計算式が違うので、注意しましょう。
また、1円未満の端数がでた場合は、切り上げです。
▼計算は以下のとおり。
個人年金保険料の書き方と計算方法
個人年金保険料の書き方と計算方法は、一般の生命保険料欄と、ほぼ同じです。
- 保険会社等の名称
- 保険等の種類
- 保険期間または年金支払期間
- 保険等の契約者の氏名
- 保険金等の受取人の氏名と支払開始日
- 保険金等の受取人と本人との続柄
- 新・旧の区分
- 本年中に支払った保険料等の金額
「新・旧の区分」で保険料を分けて書きます。新・旧が複数あった場合は、加算してくださいね。
▼計算式に当てはめて計算します。
▼新保険料の計算式で計算は、以下のとおり。
▼旧保険料の計算式で計算は、以下のとおり。
▼計算式は、生命保険料控除欄の一番下にあります。
保険料の金額によって計算式が違うので、注意しましょう。
また、1円未満の端数がでた場合は、切り上げです。
▼「計(4+5)」の欄へ、4と5を加算した数字を書きます。
合計が67,500円となりますが、「計(4+5)」の欄へは「最高40,000円」までの記入しかできません。
▼最後に「5と6のいずれか大きい金額」欄へ、5と6を比べたときに大きなほうを書きます。
生命保険料控除額欄の書き方と計算式
生命保険料控除額欄の欄は、とても簡単です。
これまで計算してきた、以下3つを加算します。
- 一般の生命保険料の控除額
- 介護医療保険料の控除額
- 個人年金保険料の控除額
合計が125,000円となりますが、生命保険料控除の欄へは「最高120,000円」までの記入しかできません。
書ききれない場合は2枚利用する
たとえば、たくさん保険に入っていて、全部を保険料控除申告書に記入しようと思うと、書ききれないことだってありますよね。
記入欄が足りません!!
そんなときは、給与所得者の保険料控除申告書を2枚使いましょう!
担当者からは1枚しかもらっていないと思うので、「もう1枚ください」と伝えればもらえますよ。
自宅にプリンタがある場合は、国税庁のページからダウンロードした用紙を印刷してもいいですね。
参考:令和元年分給与所得者の保険料控除申告書のダウンロード(国税庁)
地震保険料控除額欄の書き方と計算式
地震保険料控除額欄の書き方と計算式を紹介していきますね。
▼記入する項目は、以下の通りです。
- 保険会社等の名称
- 保険などの種類(目的)
- 保険期間
- 保険等の契約者の氏名
- 保険等の対象となった家屋等に居住または家財を利用している者等の氏名
- 本人との続柄
- 地震保険料または旧長期損害保険料区分
- 本年中に支払った保険料
▼「地震保険料」と「旧長期損害保険料」の合計にわけます。
▼「地震保険料控除額」を計算しましょう。
- B欄は最高50,000円まで
- C欄は10,000円未満の場合は、その金額
- C欄が10,000円以上の場合は、計算
▼旧長期損害保険料の計算は以下のとおり。
▼先ほど計算した金額を合計します。
合計が54,400円となりますが、地震保険料控除額の欄へは「最高50,000円」までの記入しかできません。
社会保険料控除欄の書き方
社会保険料控除の欄には、以下の保険料を支払った場合に記入できます。
主に中途入社の場合、書く事が多いです。
- 国民健康保険の保険料や国民健康保険税
- 健康保険、厚生年金保険や船員保険の保険料(任意継続被保険者の
負担すべき分を含む) - 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料(後期高齢者
医療制度の保険料) - 介護保険法の規定による介護保険の保険料
- 国民年金の保険料や国民年金基金の加入員として負担する掛金
- 農業者年金の保険料や雇用保険の労働保険料など
「国民年金の保険料や国民年金基金の加入員として負担する掛金」のみ、証明書を添付する必要があります!
▼「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」は、11月上旬ごろに送られてきました。
▼社会保険料控除欄へ書き込む金額は、「合計欄」に載っているものです。
▼社会保険料控除欄へ書く項目は、以下のとおり。
- 社会保険の種類
- 保険料支払先の名称
- 保険料を負担することになっている人の氏名
- 保険料を負担することになっている人との続柄
- 本年中に支払った保険料
- 保険料の合計
小規模企業共済等掛金控除欄について
小規模企業共済等掛金を支払った場合、この欄に記入します。
▼種類は、以下のとおり。
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構と締結した共済契約(旧第2種
共済契約を除く)に基づく掛金 - 確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金
- 確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金
- 地方公共団体が条例の規定により精神又は身体に障害がある者に関
して実施する心身障害者扶養共済制度で一定の要件に該当する契約に基づく掛金
記入した場合、独立行政法人中小企業基盤整備機構や国民年金基金連合会、地方公共団体が発行した証明書類の添付が必要です。
▼国民年金基金連合会から届いた、小規模企業共済等掛金控除証明書。
小規模企業共済等掛金と、難しい単語ですが「iDeCo」のことですね。
また、小規模企業共済に加入している場合は、その書類も届いていると思います。
給与所得者の保険料控除申告書の記入例
加入している生命保険や医療保険などにより、さまざまなパターンがあります。
そのうちの1つとして記入例を紹介しますね。
年末調整で記入する書類一覧
年末調整には、記入して提出する書類がたくさんあります。
なお、従業員全員が以下の全てを提出するわけではなく、控除が必要な書類に限りますよ。
▼記入する書類は、以下のとおりです。
- 給与取得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の配偶者控除等申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書(この記事で紹介した書類)
▼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除を行いたい場合は、以下の書類も記入して提出します。
- 住宅借入金等特別控除申告書
「ふるさと納税もやっている!」という場合、年末調整で何か書類を提出して、控除をうけないければならないと思うかもしれません。
でも、ふるさと納税の場合は確定申告で控除手続きをするので、年末調整のときは気にしなくて大丈夫です。
ワンストップ特例制度も利用してみましょう。
おまけ:年末調整をなぜするの?
会社員をしていると、毎月会社から給料をもらいます。
給料からは、所得税がひかれていますよね。
実は毎月の給料からひかれる所得税は、ざっくりとした計算(基準)で行われています。
そのため、1年で考えると多く引かれている場合もあったり、逆に少ない場合もあるんですよ。
また毎月の給料からは、たとえば「生命保険料控除」などを考えて所得税をひいているわけでもありません。
1年の終わりにまとめて各種保険料の控除や、扶養控除などを加味し、納付すべき所得税を導き出します。
年末調整をするからこそ、キチンとした所得税が計算されるんですよ。
年末調整をしない場合は、翌年の2月16日から3月15日までの間に、確定申告を自分でやらなくてはいけませんよ!
さいごに
年末調整事務をしている担当部署の担当者は、数多くの書類を見ているので、書き方について詳しいと思います。
わからないときは、聞いてみるのが一番いいですよ。