株式投資の信用取引をしていると、「現渡し(げんわたし)」という言葉が出てきます。
そもそも、この現渡しってどういう意味だろうと気になりませんか?
現渡しのことを知っていると、手数料を節約できるかもしれなくなり、お得ですよ。
信用取引をするならもちろん、しなくても知っておいて損はない知識です。
そこでこのページでは、知っておくと役立つ「現渡し」の仕組み・メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
現渡しとは?
現渡しとは、信用取引の「信用売り」で行う決済方法の1つです。
信用売りとは、証券会社から借りた株で売買する取引方法で、株を借りている以上は必ず返さなければいけません。
返し方は、以下の2通りから選べます。
- 反対売買(差金決済)
- 現渡し
1つ目は「反対売買」といって、証券会社から借りて売りに出していた株を買い戻すことで差益を狙う方法です。
反対売買では、「損益=売った価格-買い戻した価格」という計算になるので、株価が下がるほど利益になります。
取引が終了したら、証券会社から担保と損益額を受け取ることができますよ。
2つ目は、今回のテーマである「現渡し」による方法です。
現渡しをするには、前もって信用売りで手に入れた株と同じ銘柄かつ同じ数の現物株を保有していることが条件になります。
新たに株を買い戻す反対売買とは違って、現渡しではもともと持っていた現物株を証券会社に渡すことで決済完了になるのです。
現渡しをした後は、証券会社から担保と売付代金(信用売りで払った金額)を受け取ることができますよ。
ちなみに、現渡しは「品渡し(しなわたし)」と呼ばれることもあります。
現渡しする4つのメリット
現渡しをするには、わざわざ前もって現物株を保有しなければいけないので少し面倒なイメージですよね。
しかし、以下のようなメリットがあって、十分やる価値のあるお得な方法ですよ!
- 手数料を節約できる
- 時価を気にしなくていい
- 現物株の値下げリスクを防ぐ
- 信用売りの値上げリスクを防ぐ
手数料を節約できる
信用取引をするには証券会社ごとに売買手数料がかかりますよね。
しかし、現渡しは手数料がかからない取引になります。
最初の信用売りの時にだけ手数料を払えばいいので、現渡しは手数料の節約になりますよ。
また、ほとんどの証券会社では、信用取引の方が現物取引よりも売買手数料を安く設定しています。
特に株主優待が目当てで株を買うなら、最初から現物株を買うと手数料が割高でもったいないので、信用取引で空売りしてから現渡しをする「つなぎ売り」がおすすめですよ!
つなぎ売りに関しては、あとで詳しく紹介しますね。
時価を気にしなくていい
信用取引で株を保有している間にはずっと金利がかかってしまいますし、逆日歩(ぎゃくひぶ)の可能性も高くなりますから、決済はできるだけ早くするのが鉄則です。
しかし、そうは言っても株価が予想以上に下がらず損失を出すのは嫌ですよね。
現渡しによる決済は、元から持っている現物株で行います。
リアルタイムの株価を気にしなくていいので精神的に楽ですよ。
現物株の値下げリスクを防ぐ
持っている現物株が急に値下がりし始めた時、思い切って現渡しに使って見切りをつけるという手段もあります。
もちろん将来的に値上がりするかも知れないので、このまま保有してもいいでしょう。
しかし、現渡しをすれば、現在どれほど値下がりしていても信用売りと同じ銘柄・株数なら決済に使えるので安心です。
もし、絶対に損失を出したくないのであれば、我慢して値上がりを待つよりも現渡しに使ってリスク回避に徹しましょう。
信用売りの値上げリスクを防ぐ
信用売りをして普通に買い戻そうとすると、株価は値下がりしなければ利益になりません。
株価が下がりそうにない株をいつまでも持ち続けていると、株を借りている日数分のコストだけがどんどん膨らんでしまいます。
信用売りをしたら、できるだけ早く決済して取引を終了させましょう。
現渡しする2つのデメリット
現渡しはメリットが多いですが、もちろんデメリットもあります。
以下の点に気をつけて、事前に確認を行ってくださいね!
- 取り消しができない
- NISAの対象外
取り消しができない
現渡しができる時間は証券会社によって違い、現引きとペアで厳密に決まっています。
注文のタイミングがずれると、株主優待や配当がもらえなくなってしまうこともあるので気をつけてくださいね。
さらに注意して欲しいポイントは、注文を取り消しできる時間帯が短いこと、または一度注文してしまうと絶対に取り消せない場合があるということです。
例えば、SBI証券では営業日の6時30分から15時30分までの注文分は取消できませんし、ライブスター証券は時間に関わらず取消不可と決められています。
念のために、現渡しは一度注文を出したら取消しないという前提で行ってくださいね。
また、事前に証券会社のHPで注文と取消可能な時間帯を調べておけば確実ですよ。
NISAの対象外
信用取引ではNISAのメリットを受けることができません。
NISA口座で保有している現物株を、現渡しに使うことはできないんです。
現渡しで使える現物株は、一般口座か特定口座だけになっていますから十分に注意してくださいね!
残念ですがこればかりは仕方がないので、その分手数料の安さや株主優待で取り返しましょう!
つなぎ売りとは?
現渡しは、株主優待をほぼ無料でもらうための「つなぎ売り(クロス取引)」をするためによく使われます。
つなぎ売りの手順は以下の通りです。
- 株主優待が欲しい銘柄を「現物株」で買う
- 同日に、同じ銘柄と株数で「信用売り」を行う
ポイントは現物の買いと信用売りを同じ日に行うことで、1日分の金利と売買手数料という最低限のコストのみで株主優待がゲットできますよ!
そして、信用売りした分の株を現渡しすれば、株価の値動きに関わらず安全に決済が終了するという訳です。
ちなみに、株主優待をもらうには権利付き最終日に現物株として保有していることが条件なので、売買のタイミングがずれないように気をつけてくださいね。
さらに、銘柄によっては株の保有期間に条件があったり、信用取引では扱っていないものもあります。
実際に取引をする前に、狙っている銘柄がつなぎ売りできそうかを確認すればスムーズにいきますよ!
現渡しと現引きの違い
同じ信用取引で行う「現渡し」と「現引き」は、名前が似ているので混合されることが多いですが全く違います。
現引きとは、信用買い(証券会社からお金を借りて株取引をする方法)で行われる返済方法の1つです。
使うタイミング、得られるメリット、発生するかもしれないリスクをしっかり確認して区別してくださいね!
さいごに
信用取引は、金利や逆日歩があって、とてもリスクの高いものというイメージが強いですよね。
しかし、しっかり内容を知って自分の目的に合ったやり方をすれば、とても便利に利用できるのです。
現渡しの場合は、信用取引をするならもちろんですが現物株がメインの取引でも、知っておけばいざという時に役立つはずですよ。
お得なテクニックはどんどん使って、少しでも多く利益につなげていきましょう!
特に先ほど紹介した株主優待のつなぎ売りでは、現渡しが必須のテクニックになります。
おまけ:証券会社ごとの現渡しのやり方記事まとめ
ノマド的節約術では、証券会社ごとに現渡しのやり方を詳しく記事にしています。
もし、使っている証券会社があれば、参考にしてみてくださいね。