信用取引をしていると「貸借銘柄」という言葉をよく見ると思います。
よく見かけるので、知っておいたほうがいいのではないかと思ったかもしれませんね。
貸借銘柄について正確に知れば、信用取引だけではなく、現物取引でも株の売買がもっと賢くできるようになりますよ。
そこでこのページでは、そんな貸借銘柄にするとどんなことができるのか、どんなメリットやデメリットがあるのかについて詳しく紹介していきますね。
貸借銘柄とは?
貸借銘柄は、信用取引の中でも制度信用取引で扱っている銘柄をいいます。
大きな特徴は、買建と売建の両方ができることですね。
ちなみに、同じく制度信用取引で扱う銘柄でありながら、買建だけで売建ができない銘柄を信用銘柄といいます。
また、信用銘柄には他にも呼び名があって、貸借融資銘柄や非貸借銘柄と書いてある場合もありますが同じものですよ!
制度信用取引の中では以下の2種類の銘柄があり、このページではその中の貸借銘柄について説明しています。
- 信用銘柄(買建のみ)
- 貸借銘柄(買建も売建も可能)
貸借銘柄が売建できる理由は?
同じ制度信用取引なのに、売建できる銘柄とできない銘柄に分けなければいなけいのはなぜなのか、疑問に思いますよね。
そもそも制度信用取引は、「返済期限が6か月、取引所が決めた銘柄だけ」というルールのもとで出来るだけ安定した信用取引を目指しています。
貸借銘柄はもちろん信用銘柄でさえも、現物株や一般信用取引の銘柄よりは厳しい条件で選ばれたものだけがそろっているんですよ。
ただし、信用銘柄は資金不足や株券不足になったときに、証券会社が証券金融会社から不足分を調達できないというルールになっています。
売建では資金不足や株不足が頻繁に起こるので、せっかく制度信用取引を選んでも信用銘柄だけならできないですよね。
そこで、信用銘柄の中からさらに厳しい基準で貸借銘柄にグレードアップさせることで、証券金融会社から不足分を調達できるようになります。
これでやっと、資金不足・株不足の問題は解決し、晴れて売建ができるようになるという訳です。
制度信用取引の銘柄になるだけでもルールが厳しいのに、そこからさらに選ばれた優良な銘柄だけが貸借銘柄なれるので、取引は長期でも安定した値動きが期待できますよ。
ちなみに、証券金融会社とは証券会社に資金と株を貸付ける専門の株式会社で、金融商品取引法のもとで免許を受けた特殊な会社です。
2017年までは複数あった証券金融会社ですが、2019年現在は日本証券金融株式会社だけとなっています。
貸借銘柄の選定条件は?
具体的に、貸借銘柄になるためにはどんな条件が必要なのかを簡単に挙げてみますね。
- 流通株式の数が、2万単位以上
- 株主数が、1,700人以上
- 直近6か月間の売買高が、月平均100単位以上
- 直近6か月間の値付率が、80%以上
- 上場廃止見込みじゃないこと
- 上場廃止の猶予期間じゃないこと
- 監理銘柄、整理銘柄、特設注意市場銘柄、規制銘柄じゃないこと
まだまだ細かいルールはありますが、ざっくり説明すると、「株式をたくさん市場に流していて、売買も盛んに行われていて、危うい銘柄としてマークされていないこと」が貸借銘柄の必須条件になります。
ちなみに、2019年に貸借銘柄に選定された有名銘柄をいくつか紹介すると、1月19日にソフトバンク、3月7日にシャープ、4月12日にスシローグローバルホールディングスの名前がありましたよ。
また、一部のETFも貸借銘柄になっていて、2019年に選ばれたのは「MAXISトピックス(除く金融)上場投信」、「ダイワ上場投信-東証REIT Core指数」、「NEXT FUNDS野村株主還元70連動型上場投信」などです。
貸借銘柄に選ばれたということは今後も安定した株取引が見込めるという意味なので、信用取引だけではなく現物株の取引にも取り入れてみることをおすすめします!
貸借銘柄はどこでわかるの?
最新の貸借銘柄の一覧は、日本取引所グループのページから確認できますよ。
信用取引をする場合に限らず、現物取引しかしなくてもこまめにチェックしておきましょう。
さらに、日本証券金融会社でも貸借銘柄の一覧が見ることができます。
注意喚起が出ている銘柄も同じところでチェックできるので、信用取引をするなら特にしっかり見ておくと安心ですね。
貸借銘柄のメリットは?
貸借取引のメリットは、下の2つです。
- 空売りができる
- 銘柄の信頼性が高い
信用取引では売建といって、証券会社から株を借りて行う取引方法があります。
売建の中でも、現物で持っていない株を借りて行う取引が「空売り」です。
売建も空売りも貸借銘柄じゃないと、そもそも取引自体ができません。
また、繰り返しになりますが、貸借銘柄に選ばれたものは証券取引所と証券金融会社の二重チェックを通った優良な銘柄である証明です。
リスクの高い信用取引をするなら特に、貸借銘柄を選んで高い信頼性と安定性のもとで取引をしたほうがいいと思います。
貸借銘柄のデメリットは?
貸借銘柄にもデメリットはあります。
- 銘柄数が少ない
- 逆日歩の危険性がある
まずは、厳しい選定があるので他の取引と比べると対象銘柄が少ないのは仕方がないですね。
市場第1部は全体の85%が貸借銘柄で多いですが、それ以外の市場では極端に数が少なく、ほとんど貸借銘柄になっていないのが現状です。
具体的な数は、次の項目で詳しく解説しますね。
さらに、制度信用取引をすることになるので逆日歩(ぎゃくひぶ)のリスクは避けられません。
逆日歩は信用取引全体の中で最も気をつけなければいけないリスクなので、ぜひしっかり内容を理解して備えて欲しいです。
逆日歩について徹底的に知りたいなら、ぜひ下の記事も合わせて読んでみてくださいね。
貸借銘柄はどれくらいあるの?
どの市場にどれくらいの貸借銘柄があるのか気になりますよね。
そこで、分かりやすいように図にしてみました。(2019年4月時点)
市場第1部 | |
---|---|
貸借銘柄 | 上場銘柄 |
1,824 (85.6%) | 2,130 |
市場第2部 | |
---|---|
貸借銘柄 | 全上場銘柄 |
142 (28.7%) | 494 |
マザーズ | |
---|---|
貸借銘柄 | 全上場銘柄 |
48 (17.4%) | 276 |
JASDAQ | |
---|---|
貸借銘柄 | 全上場銘柄 |
131 (18.0%) | 726 |
選定条件が厳しい貸借銘柄は、圧倒的に市場第1部に多いです。
他の市場は全て3割にも満たないので、ほとんどの銘柄は対象外になってしまいます。
これは、決して市場第1部以外の銘柄が不安定という意味ではありません。
貸借銘柄になるにはそれほど高いハードルがあるということで理解してくださいね。
貸借銘柄が取消されることはあるの?
一旦は貸借銘柄になれても、その後に対象から外されてしまうこともあります。
貸借銘柄が取消される場合の条件を、簡単にまとめてみました。
- 流通株式の数が、1万単位未満(1年の猶予期間あり)
- 株主数が、1,200人未満(1年の猶予期間あり)
- 株券の上場廃止が決定したとき
- 債務超過になったとき
債務超過とは、資産額より負債額のほうが多く返済しきれない状態のことです。
上場廃止や債務超過なら貸借銘柄を取消されても当然と思えますが、流通株式や株主数を見るとけっこう厳しめな気もしますね。
流通株式や株主の数が条件未満になっても、市場全体では生き残れる銘柄だってあると思います。
ただ、売建をするには最低限の流通株式と株主が必要ということなんでしょうね。
さいごに
貸借銘柄は、株式市場の全銘柄の中でもとりわけ安定性の高い銘柄がそろっています。
信用取引だけではなく、現物取引でも貸借銘柄を意識して選んでみると手堅い取引ができると思いますよ!
貸借銘柄の情報はまめに更新されるので、気になったらすぐにチェックしてみましょう!
株主優待を取るためにクロス取引をしている場合にも参考になりますよ。