今回対談は、ノマド的節約術の松本と、ブログ「ミラクリ」を運営されている小林敏徳(トシノリ)さんによるものです。
小林さんは、現在はフリーライターとして様々な媒体で執筆されているのですが、実はノマド的節約術のライターさんでもあります。
最初はノマド的節約術で執筆するのに不安があったという小林さん。
しかし、松本とふたりで話し合いを重ねていって、ノマド的節約術に合わせた執筆ができるようになり、ある気づきがあったそうです。
おふたりの出会いや家計のお金の管理はもちろん、小林さんがライターとして意識していることなどは、ライター業を行っている方にもぜひ読んでもらいたい内容です。
ノマド的節約術松本とライター小林さん対談
インタビュー日:2016/6/10
── ノマド的節約術にはライターの一覧ページがあるんですけど、書いた記事数が多い順番に並んでいます。一番上がもちろん松本さん。その次が、小林さんなんですよね。
小林敏徳(トシノリ)(以下、小林):
2015年11月からライターとして参加させてもらっています。正直、最初は不安やったんですよ。節約って、無意識にやってることだったから。
ノマド的節約術を読んでいると、ポイントの使い方とかを、松本さんが詳しく掘り下げて記事を書いていて、最初は「俺はこんなに意識してないけど大丈夫かな」って思ってました。
ただ、言葉にしていくと意外に「こんなこともやってるな」というのがあって。試行錯誤しながら、ご迷惑をおかけしながらやってきました。
松本博樹(以下、松本):
いえいえ。たくさん書いてくださってありがたいです。ここ1、2ヶ月くらいで型が出来てきたというか、進め方が明確になりましたね。
小林:
うん。最初は、自由に作ってると、ちゃんと押さえておくべき点が抜けてることが多くて。
今から1ヶ月半前ぐらいに相談して、事前に構成を練ってふたりで擦り合わせてスタートしよう、っていうことを決めてからは、スムーズになりましたね。
松本:
そうですね。無駄なやりとりを減らすことができたと思います。
小林:
今では楽しくやらせてもらってます。
松本:
ああ、よかった。
小林:
ノマド的節約術って、書けるネタが生活に密着しているんですよ。普段の行動がすべてネタになる。
松本:
そう。そこに気づいてもらえるのは、ほんとありがたいですよ。
ふたりの出会い
── もともと、おふたりが出会う前はお互いに知ってた感じですか?
松本:
もちろん知ってましたよ。
小林:
僕は、知り合いになる1年ぐらい前に、松本さんが書かれた「自分がフリーランスとしてやってきたこと」という長文の記事を読ませてもらって。
今、サイト運営でちょっと形になってきてる、という内容を読んで、プロフィールを見たら神戸だったので「あ、意外と近くにこういう人いんねんな」って思ったのが最初です。
僕は当時、フリーランス一年目だったから「へえー」と思って、あるときブロガーの前原さんが興味を持ってくれて、ふたりで会ったんですね。
ほんで、「これからどこ行くの?」って聞いたら「神戸の松本さんとこ」って言われて「あ、そうなんや、松本さんてあの人やんなあ」って話をしたんですね。
それからちょっとして、また誰か別の方からも「松本さんとこに行く」って話を聞いたんで、これはもう会ったほうがいいんじゃないかと思って、直接コンタクトしたんですよ。
松本:
そうですね。
小林:
結構長いこと話しましたよね。で、また数ヶ月後とかにちょっとずつお仕事の話をするようになって、今に至ります。
松本:
それが去年(2015年)の11月ですね。
── 松本さんは、会う前の小林さんの印象とかありましたか?
松本:
最初はツイッターで何度かやりとりしていて、ブログを読んで「この人、なんかちょっと違う。普通の人じゃない感じがするな」と思ったんですよ。
── 普通の人じゃない感じ(笑)。
小林:
今思えばね、前情報なしでよく会ってくださったなと思いますよ(笑)。
家計のお金の管理
── 家庭でのお金の管理はどうしてますか?
小林:
管理は、完全に嫁です。だから僕は、離婚したらやばいと思う。身ぐるみ剥がされてても気がつかない。「あなた貯金こんだけしかなかったから」って言われたら、「ああ、そうかあ」って言うてしまう(笑)。
── ははは(笑)。松本さんはどうしていますか?
松本:
うちは全部、僕ですね。
── じゃあ、生活費を月にいくらか渡すって感じですか?
松本:
そうですね。会社として役員報酬があるので、それを振り込んでその中から使ってもらう感じ。
小林:
松本さんは、売上から経費、家計、税金、積立って、全部やってるから。それで、ライター別のPVとか、サイト関連の数字も管理してるんですよね。
松本:
そうそう。ライター別の数値は結構大変(笑)。
小林:
ほんまあれ大変やと思う。数字へのこだわりが異常ですよ。
松本:
僕はもともと数字オタクですから(笑)。そうそう、小林さんに会ったときに思いついて書いた記事があるんですよ。
小林:
数字マニアなんですよ。数字を見て興奮する。
松本:
あははは(笑)。
── 前回のお話で出てきたのが、マリオカートとか風来のシレンとか、ゲームをめちゃくちゃ極めるっていう話もあって。
松本:
その話もしましたね(笑)。
── マリオカートって、何十回も何百回も走って0.0何秒を縮められるかどうかの世界じゃないですか。それも、数字を見てるんですか?
松本:
そうそう。それが楽しいんですね。ゲームで数字を追っていたのが、今はブログになったんです(笑)。
小林:
この間めっちゃおもしろかったのは「この記事ができたら、この記事とこの記事で繋がるから快感です」ってメッセージが来て、そんなところに快感をおぼえるのか、と思いました。
── 守岡さんとの対談のときも、ところどころで振り返り記事を自分で書いてるから、話に合わせて、振り返り記事を差し込める快感があったという話がありましたよね。
対談記事を改めて編集してたら、要所要所でちゃんと振り返りの記事を書いてた自分すごいと思った。パズルのピースが組み合わせる感じ、爽快!
— Hiroki Matsumoto (@peter0906) 2016年5月22日
松本:
ありましたね。あれは、めっちゃ気持ちよかったです。自分でも絶妙なタイミングで書いてるなあと思って。自分で言うのもおかしいかもしれないけど(笑)。
興味を持ってくれたら、その他の記事も読んでくれたらうれしいですね。
小林:
そういう話を聞くと、公開された日にバズる(SNS上で拡散されて多くの人に読まれる)かどうかも大事だけど、長く生き残るものは意外と地味だったり普遍的だったりするんですよね。
文学や音楽もそういう普遍的なものが残り続ける。今の時代は、SNSでみんな「有名になりたい」「フォロワーを増やしたい」って言うんだけど、本質的なところはまた別にあるのかなって思います。
小林さんのブログは「伝えたいメッセージがない」
── 「本質的なところ」と言うと、小林さんのブログが目指すところはあるんですか?
小林:
僕は基本的に、ブログに伝えたいメッセージがないんですよ。読んだときに、ひとりでもいいから、ちょっと豊かな気持ちになってくれればそれでいいんです。
ブログは最近全然書いてないし、バズることもないです。更新本数は減ったけど、今のほうがメッセージとかもらえるようになってきましたね。
── どんなメッセージが届くんですか?
小林:
「仕事を辞めてこうなりました」とか。「この記事を読んで、仕事を辞めてよかったです」みたいなメールをくれたときは、一言だけ返信することもあります。
ただ、自分では、ネット的な自己表現とか、ブランディングをまったく考えてないんですよ。よく「メッセージ性があります」とか言われるんですけど、実際は、伝えたいことないんですよ。
松本:
僕は小林さんって、自分の信念があって、主張が強いイメージがあります。
小林:
前はそう思ってたんですけど。実際、ないなって自分で気づいちゃったんです。ライターの仕事も、お問い合わせいただいたときに「どんなテーマが得意ですか?」って必ず聞かれるんですけど。
「得意なテーマないです」って言うんですよ。僕は匿名でも全然構わないし、キャラ立てしたコラムを書いてくれと言われたら書くし。
── 改めてなんですけど、今のお仕事は100%ライターですか?
小林:
そうですね。
ライターとして意識していること
── ライターとして、こうやって次のステップを踏んでこういうふうになりたい、という想定はないんですか?
小林:
よく聞かれるんですけど、まったくないんですよ。作家になりたいわけでもないし、有名になりたいわけでもない。本を出したいわけでもないんですよ。一本一本の記事を作ってるのが楽しいんです。
あとは「どういう言葉を使ったら、どうやって情報が伝わるのか」ということに興味がありますね。いろんな媒体で書かせてもらって、実はちょっとずつ、自分の中でどう響くか実験してるんですよ。
── ツイッターもそんな感じですか?
参考:小林さんのTwitterはこちら(@enrique5581)
小林:
どういう言葉の配列で、どういうことを、どういうタイミングで伝えたら、どういう反応になるかっていうのは文章を書くときに、常に意識していますね。ツイッターもそう。
言葉の意味って、ひとつのように思われがちなんですけど、本当は空間とか、言葉が発せられた環境によって、変わるじゃないですか。
たとえば、すごい悲観的な状況の中で「お前クビだ!」ってなったら、「え、マジっすか」ってなるけど。
でも、明るい状況で「お前クビや」って言われたら、「もー、部長!」ってなる。言葉って結局、空気とか環境によって、意味合いが決定されますよね。
ネットは、反応の潮目が変わるところがあるじゃないですか? ブログがバズったときのはてブのコメントが一番わかりやすいと思うんですけど。
最初の10個のコメントは、賞賛が多いんですよ。「さすが松本さん」「松本さんのこういう考え方好きです」とか。
コメントが増えるとだんだん「こいつ何言ってんの」みたいなコメントが増えてくるじゃないですか。
── なるほど。その過程や違いを観察するのが好きなんですね。
小林:
うん。結局、その人を知ってるかどうかで、言葉の意味合いとか重みって変わるじゃないですか。そういうのにすごい興味があるんです。
だから、「このタイミングでこのメディアでこの情報を伝えるには、何が一番最適か」っていうのを追求するのが、僕は好きなんですよ。
ほんまのこと言うと、伝えらえる最適な方法があれば、文章じゃなくてもいいんですよ。たとえばですけど、もしかしたらこの先、映像をやるかもわかんないし。
今はすごい書くのが好きだし、いっぱいお仕事もいただけているので、それを一生懸命やっています。
特にノマド的節約術はSNSでのシェア数がすごい多いわけではないけど、見えない読者がいっぱいいるから、実験のしがいがあるんですよ。
僕、スーパーに行くとか、現場にいる人たちの様子を見ているんですよ。
SNSだけ見て「こういう節約ネタいいんちゃう」という気持ちでは、記事を作り続けることはできないから。だから、週末になったらいろんなところに行って、主婦の人を観察してますね。
松本:
それ、めっちゃ大事。
小林:
団地の主婦とめっちゃ話し込んだりとか。
松本:
素晴らしいですよ。ライター業してる人と、読者になる方は全然考え方が違いますから。
ノマド的節約術が難しい文章を避ける理由
── ノマド的節約術の文章は、難しい書き方とか、それこそ業界的なカタカナ言葉って一切排除されるじゃないですか。松本さんはどういうことを思って、そこにたどり着いたんですか?
松本:
難しい言葉で書いてあると、わからない人がいるから。その時点で読む気なくすじゃないですか。
もともとは、僕自身がプログラマーだったんですね。
プログラミングを勉強していたときに、わかんないことは調べるんですけど。調べても、ある程度の基本的な設定は、わかってる前提で記事書かれてるんですよ。
── 僕もプログラミングを勉強したことがあるので、すごくよくわかります。
松本:
なかなか答えにたどり着けないんですよ。だから、自分が書くときは、すごいわかりやすく書く。全然わからないど素人でもわかるように書くんです。そこが原点ですね。
── 「まずはこのサーバー環境を用意して、最初に一行書いてみましょう」みたいなことが書いてあるんですけど、まず、その「サーバー環境の用意」が難しいんですよね。
松本:
そうそう。前提知識をまずはきちんと共有しないとダメで。高校にパートに行ってたことがあって。
── 高校に?
松本:
情報処理の授業のサポートしてたんですけど。わかる子わからない子まで本当にピンキリなんですよ。「マウスの右クリック」と言っても、わからない子はわからないから。
小林:
へえー。
松本:
だから「右押して」って言う。右クリックって言っても「あれ?」みたいな顔してるから。こんな説明じゃあかんなと思った。
ダブルクリック言っても伝わらないから、「トントンってして」って言う。それは、ブログを始めた頃なので、そういうのも影響しているかも。
── 小林さんは、書き物でずっと食べていきたいというスタンスですか?
小林:
書くのは好きだから。ずっと書き物でやれていけたら、すごい幸せだなって思います。結局、人と関わらないと仕事って楽しくないんですよ。
だから、ひとりでブログを作っていくのは限界があるんだと思う。
松本:
人と会いたくないのに、ひとりでやるのはイヤなんや。不思議ですね。
小林:
人と会うのは好きなんですよ。好きだけど、すごいエネルギーがいる。
松本:
でもね、小林さんは、仕事量半端ないですよ。
小林:
仕事量はね、最近おかげさまで仕事があるからやっているんですけど。
松本:
うちだけやっててもおかしくないぐらい、仕事してますよ(笑)。
小林:
朝5時から夜9時ぐらいまで、ずっと書いてるんですよ。その間は、ジムに2時間行くくらいで。
「自分のブログで食べていく」をしない理由
── それこそ、それだけたくさん書けるなら、自分の運営するブログやメディアだけで食べられるようになろう、という方向では考えないんですか?
小林:
なんかね、僕は結局、器がちっちゃいんですよ。
── はい、とは言いづらいんですけど(笑)。
小林:
あはは(笑)。人と関わって、人に広げてもらったほうがいいなって、今は思ってます。ブログもたくさん書いてきたけど、僕の場合は、あんまり可能性が広がらへんなと思ったんです。
松本:
そんなことはないと思うけどなあ。
小林:
ちょっと知られてるとか、フォロワーが多いとか、そんなん別にどうでもよくって、自分の中で「これ以上、もうないなあ」と思いましたね。
人との関わりがあれば、自分のスキルや知識が広げられるじゃないですか。だから、食べていくための手段としてブログを選ぶっていうのはなかったですね。
たしかによく「自分のメディアやったらいいのに」って言われるんですよ。それにはあんまり興味がない。
松本:
ノマド的節約術にたくさん書いていただくのはありがたいけど、逆にそんだけできるんだったら自分でやったら?って思っちゃうところもあります。
小林:
でも、自分でサイトやるんだったら「節約ネタを取り扱おう」って思わないじゃないですか。
僕は出不精だから、あんまり外にも出ないんですけど「ネタになるなー」って考えられるから外に出る機会もできるんです。
だから、仕事を請けてるほうがいいんですよ。僕の場合、本当にね、働かなくなってしまうと思う。
松本:
自分でやるのは、自分を律しないとできないですもんね。
── 松本さんは何か自分を律するコツってありますか?
松本:
「危機感」しかないですよ。
── 危機感ですか。今もですか?
松本:
今もありますよ。なくなることはたぶんないですね。
小林:
そういえば、ふたりでしゃべってると「何をそんなに不安に感じてるんですか」って言いたくなることが結構ある。それくらい数字にこだわってるから。
松本:
目先は大丈夫かもしれないけど、長い目で見て大丈夫かって言われると、まだまだ疑問符が取れないから。危機感はなくならないです。
小林:
うん。
松本:
今の仕事ができなくなるのはイヤだから続けていきたいんです。追われてる感はあるけど、でもやりたい。
小林:
そもそもね、めちゃくちゃ好きじゃないとこうやってできないですよ。前に聞いたことあるんですよ。
「何億でサイト売ってくれって言われたらどうします?」って。そしたら「売らへん、楽しみがなくなるから」って(笑)。
松本:
10億、20億でも売らないですね。絶対に売らない。お金をたくさんもらうのが目的ではないですから。
スマホやめます
小林:
自分を律するに近い話で言うと、僕は弱いから、誘惑を遠ざけないといけないなとは思っていて。今度ね、スマホやめるんですよ。
── へえー!
松本:
やめるんですか。
小林:
なんかね、もうスマホいいかなと思って(笑)。
松本:
それ、記事書いてくださいよ(笑)。
小林:
解約とか、新規入会とか、ちょっとネタを考えてるんですよ。
松本:
それはめっちゃいいネタです。書ける人が少ないと思う。
小林:
節約の一環という意味もあるんですけど、自分の中で、スマホって「消費の装置」やなと思ってしまって。
松本:
はいはい。
小林:
たとえばiPhoneでAmazonずっと見てたら、欲しいもんがなくても注文しちゃったりするじゃないですか。結局、情報って最終的には換金に繋がるから。
スマホを持っている以上は、本質的な節約ができないような気がしまったんですね。それは、自分は弱くて、律することができないからなんですよ。
松本:
なるほど。
小林:
だから、一回情報と距離を置かないとと思ってやめることにしました。
松本:
その考え方も記事にできますね。
小林:
そんで基本的には、iPadとかWi-Fiでしか使えないものを持って生活する予定ですね。初代からiPhoneを使い続けてきたんですけどね。やめます。
松本:
うん、おもしろい。斬新。今日は初めて聞けた話もたくさんあって楽しかったです。ありがとうございました。
小林:
ありがとうございました!
続編の単独インタビュー記事もあります。
続きは以下の記事で!