クリエイター兼ファイナンシャルプランナーの視点から見る「お金の課題」とは?

ファイナンシャルプランナーさんにお金の相談をしたことがありますか?

私は無いです。
なぜなら、自分のお金を見つめることが怖いから。

今までの自分の消費と浪費を可視化されたり、回収できていない投資が明確になるのが怖いって思っちゃいます。

でも、自分の生きたい方向に進むためには「お金を見つめる勇気をもつことが必要」と育美さんは言います。

彼女はアクセサリーデザイナーとしての顔と、ファイナンシャルプランナーとしての顔をもっています。

ふたつの職を本業として生きている“ダブルキャリア”を実践している彼女に、ふたつの視点からキャリアとお金についての考え方を聞いてきました。

育美さんインタビュー

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ダブルキャリアになった理由

── 素敵なピアスですね! こちらはご自身の作品ですか?

育美さん:
はい。私のブランドRW∞Y(リューイ)のアメリカのヴィンテージパーツを使った1点ものです。

── 育美さんの実践されているダブルキャリアという生き方は、まだまだ珍しいと思うのですが、なぜ今のようなキャリアになったんですか。

育美さん:
自分のライフワークはどんどんアクセサリーをつくって、たくさんの人を喜ばせることだと思っています。

ただ当初、アクセサリーデザイナーのみで独立するには、お金の面での不安がありました。

そこにファイナンシャルという選択肢を得たのがダブルキャリアになるきっかけです。

・・・私、これからの時代、ひとつのキャリアで生きていくことは難しくなってくると思うんです。

── どうしてそう思われるんでしょう。

育美さん:
今、ファーストフード店やコンビニに行くと、日本語が話せて自国の言葉も話せる海外の方が多いですよね。

きれいな発音で母国語以外で会話できる。それって日本人がコンビニの仕事をするより、スキルが1個多いんですよね。

そういうスキルが多い人たちがどんどん海外から来て、もっと日本語に慣れてきたら、たぶん日本人の仕事はシェアをますます取られて行くでしょうね。

そのときにひとつのキャリアでやっていけたらいいけど、それだけだと間に合わない方がいそうだなって。

私自身、その危機感は、ずっと抱えていました

── その考えを持たれたのはファイナンシャルプランナーの仕事を始めてからなのですか?

育美さん:
そうです。

ダブルキャリアを始めたきっかけは、自分が前に務めていた企業で、同僚の家族に訃報があったときです。

同僚は営業職だったんですけど、社内中に休暇をもらうための謝罪や調整をしていたんです。ご自身の家族のためなのに。

会社が不幸があった度に社員に寄り添うって現実的に難しいと思うのですが、それを見て悲しいなって思いました。

自分が会社員以外の仕事を持って収入源が複数あれば、自分の大切な人たちのために時間を使えるのでは、と考えたんです。

── キャリアチェンジのきっかけが「大切な人との時間」。利他的な視点だなと感じました。

育美さん:
利他という言葉のルーツは仏教用語で「自利利他」なんです。

自分がいいと思って人にしたことは、結局、自分に返ってくるという意味の言葉です。

自分があとで後悔するのはイヤだから、出来ることを出来る限り家族のためにしておきたい。私自身、祖父を亡くしたときにそう思ったんです。

── 後悔したくない、ですか。

育美さん:
親が転勤族で日本各地を転々としていました。

自分だけ離れて祖父母と暮らしたり、高校3年間アメリカに留学したりと、親と離れた期間が多かったんです。

なので、今後家族に会える時間をつくれるなら、しっかりとつくっていきたいんです。

── ダブルキャリアは順調に進んでいますか?

育美さん:
最初は、悩んだ時もありました。

アクセサリーでお金を取るということは、売れるものをつくらなきゃいけない。

ただ『作りたいもの』と『売れるもの』は必ずしもイコールにはならないので、その間でうまく自分の気持ちのバランスが保てなくなってしまったんです。

そんなときに、台東区にあるデザイナーズビレッジという学校の「クリエイター起業塾」という講座でいろいろ学びました。

本当に自分がクリエイターとしてやっていきたいのか、それとも、ものづくりに関わる別の部分をやりたいのか。

そうやって自分の気持ちを見つめ直していたときのことです。

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育美さん:
デザイナーズビレッジの村長に「あなたは、ものづくりをする人々に関わることが向いているんじゃない」と、アドバイスをもらいました。

じゃあ「関わる」部分で自分はいったい何ができるだろうと考えました。

その結果、ファイナンシャルの概念をものづくりをしている人に落とし込めたら、クリエイターさんたちに、経済的な基盤のつくり方を提供できるんじゃないかと気づいたんです。

そこから確信を持って、ふたつのキャリアを絡めた働き方を進めています。

お金の話への苦手意識

── クリエイターの一番のお金の課題ってどういうものでしょう。

育美さん:
それは、お金に対する苦手意識かな。

たとえばひとりでやっているクリエイターさんは、倒れたら収入がなくなりますよね。売り上げは誰も確保してくれない。

そういうときのリスクヘッジを考えると、資産運用で経済的なベースがあるだけでもかなり違ってきます。

でも苦手意識が強いから、そういう手段があることを知らない人が多いんです。

── なるほど。

育美さん:
自分が赤字を出している部分って、薄々わかるじゃないですか。

会社員で毎月のお給料があって、副業レベルのお仕事なら、数万円程度は赤字になってもなんとかなるかもしれません。

しかし、クリエイターとしてそれ一本で食べている場合、その赤字がどんどん加算されて大問題になってしまいます。

それは困ります。だから、勇気を持ってお金を見てほしいんです。

「未来に必要なお金を考えてみてください」って言うと、みんなやりたいことが次々に出てくるんです。

「旅行に行きたい!」「スノーボード買いたい!」とか「美味しいものを食べたい」とか。

実際は、それと別にライフイベントの費用がありますよね。

結婚や出産といった冠婚葬祭に、介護や老後の生活費等です。

その費用プラスアルファ自分がしたいことの総額を出すと、ふつうの人でも◯億円になってくる。

それをみんな、実感していないんですね。

── 億とは実感してませんでしたね・・・。可視化って大事ですね。

育美さん:
可視化して、自分のお金をみるというスタートラインに立ってもらうために、いろいろ活動しています。

お金のことを考えるハードルを下げるために、カフェで気軽に話せるイベントを企画したり。

── スタートラインというと、どういうレベルですか。

育美さん:
一万円の原価、知っていますか?

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── 知らないです・・・。

育美さん:
この紙切れって、22円です。

なぜこれが一万円の価値を持ってるかというと「みんながこれは一万円の価値がある」と信じ込んでいるからです。

イベントは、そんなお話から始まります。

現金だけではなくて、証券や投資信託を織り交ぜて資産形成を行うと、自分のお金を増やすことができるんですよ、というお話とか。

基礎的なお金に関する情報を把握することで、自分のお金をどうするか自分で判断できるようになるんです。

── それって学校では教わらないですもんね。

育美さん:
私は、お金について自分で考えられる人を増やしたいんです。

関連して、ニューヨークに行った人からおもしろい話を聞きました。

その方の友だちでウエイトレスのカップルがいるんですけど、そのふたりの年収が5000万円を超えているそうなんです。

── えっ? 5000万?

育美さん:
そうなんです。ふつう、ウエイトレスってそんなに稼げないですよね。何をしているのって聞いたら、資産運用しているって。

アメリカは運用に関しては、先進国なんですね。だからウエイトレスも運用してる。

運用で生計を立てて、あとは自分がやりたいウエイトレスの仕事をして、生きているんです。

FPのIさん・アイキャッチ

お金は人

── ファイナンシャルプランナーをしていて、おもしろいことってどんなことでしょう。

育美さん:
お金の話をすると、その人のお金に対しての考え方以上に生き方まで見えるところでしょうか。

普段強そうに見えるのに、自分がいいと思った提案をパートナーに相談したら全く取り合ってもらえず。そこで初めて相手のお金に関しての考えや、2人の力関係がわかったりとか。

反対に、すごく繊細そうに見える方なのに、お金に対して決断力や行動力があったりとか。

羽振りが良いと見えた人が、実は小心者だったとか。実に様々です。

── お金って人なんですね。

育美さん:
そうなんですよね。

だから私の上司は「ファイナンシャルプランナーの先は、マネードクターになりたい」って言っていました。

お金のお医者さんです。

将来はまたアメリカに住みたい

── 今後、お金を使おうと思っていることはありますか。

育美さん:
さっき、「利他的」と言ってくれましたけど、自身のことを振り返ると利己的にお金を使っていることが少ないと思ったんです。

だから、自分のために職場の環境を整えたいと思っています。

プライベートと仕事の場を分けて、より仕事がしやすくなる場をつくりたいんです。

人と対話をする仕事なので、お客さんにもカジュアルにお金のことを考えてもらえる場にしたいですね。

あとはまだ先の話にはなりますが、アメリカにまた住みたいなと考えています。

すごく、のびのび暮らせる国で、好きなんです。

自分が留学させてもらったので、従姉妹の子供とか呼んであげられたら、家族にお返しできるかなあと考えたりしています。

── そこも利他ですね・・・。

育美さん:
そうですね(笑)。

残念になるお金の使い方はしないようにしています。

どんなことにしても、期待したのに期待以下って残念じゃないですか。

お店の接客とか。

気持ちよくお金が使えるように、というのは常に考えていますね。

── 気持ちのよいお金の使い方ってどんなものですか。

育美さん:
それはやっぱり、利他的に、人のためにお金を使うことかなあ。

人にプレゼントするとか。

偶然出会った日本旅行中の外国人と仲良くなったら、ぜんぶおごっちゃうとか(笑)。

コスパがいいか悪いかじゃなくて、合理性もないんだけど、自分が「よかったな」って思えるお金の使い方をできるように考えています。

【編集後記】インタビューを終えて

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ライフワークと家族へ対する思いを両立させるために、今の職業を選んだ育美さんの視点は「利他」にあふれていました。

お金について考えることは「利己的」という考えが一般的かもしれません。

だからこそ「お金は人」という言葉が、すごく心に響きました。

自分のお金は、自分が納得できるものなのか、ゆっくり考える時間をつくらなきゃなと思いました。

ノマド的節約術の裏話

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この記事を書いた人

コミュニケーションプランナー、ライター。次の70年に何をのこす?がコンセプトの「70seeds」編集部。1985年茨城県生まれ。昭和女子大卒業後、ダイヤモンド卸、Webクリエイティブ企業の管理部門を経て、PRプランナーを志す。主に、ローカル、ソーシャル、ものづくり、アート、VR等について執筆中。