「インド人は家族のためにお金を使う」マノジ・クマールさん

日本と、インドの、お金の価値観の違い。

考えたことありますか?

今回お届けするのは、インド・ケララ州出身のマノジ・クマールさんのお話。

クマールさんは、西日暮里駅からほど近い場所にあるカレー屋さん「シルクロード」の店主をしています。

「日本はとてもセキュリティがよくてフリーダムな国」
「日本が大好きです」

店内1

家族と離れ、ひとり日本で暮らすクマールさんは、なんのために稼ぐのか。どうしてお金が必要なのか。

シンプルな問いに向き合うインタビューをお届けします。

マノジ・クマールさんインタビュー

クマールさんアイキャッチ

来日10年目。カレー好きな中国人オーナーに誘われて

── クマールさんは、こちらのお店のオーナーさんなんですか?

クマールさん:
オーナーではないです。オーナーさんは中国人。

── そうなんですね。いつから店長をやってるんですか?

クマールさん:
この店は4年。前は北浦和のシルクロードで働いてて、そこが3年。

今のオーナーは、わたしが昔働いていた別のカレー屋さんのお客さんだったの。

わたしはその後、また別のインド料理屋で1年くらい働いてたんだけど。

「またカレーのお店をやりたい」って言ったら「ここに来てくれたらいいよ」って呼んでくれました。

店内2

── インドでもシェフとして働いていたんですか?

クマールさん:
インドでもやってました。日本に来て、初めて働いたのは神戸の三宮。

── いろんなお店で働いたんですね。日本に来るきっかけは、なんだったんですか?

クマールさん:
三宮のお店で働いてたインド人の友達が誘ってくれたの。わたし、子どものときから日本好きだったからね。日本のものは、すごい有名だったから。

── へえ! たとえばなんですか? ゲームとか?

クマールさん:
たとえば、秋葉原とか。DVDとか。・・・あと、ライト。

── ライト? 懐中電灯?

クマールさん:
そうそう。これは、すごい有名なことだから。「どこで作ったやつだろう?」って見て、「Made in japan」って書いてあったら、すごくうれしいの。

── 日本の印象がよかったんですね。

クマールさん:
日本っていう国がすごい好き。

日本はフリーダムがある国

── そう言ってもらえてうれしいです。

クマールさん:
日本は特にいい国だからね。今、外国に住んでるインド人はいっぱいいるけど。でも、あれダメこれダメってルールがあるから。

日本はそういうのがなくてフリーダムがある。水道もある。セキュリティもある。でも、日本に来るのは難しい。ビザがね・・・。

── 日本とインドの違いってどんなものがありますか?

クマールさん:
女の子とか、日本はすごいフリーダムあるなと思うけどね。お酒を飲んだり、夜に出かけたり。インドはあまりないね。

── なるほどー。お金の使い方の違いってありますか?

クマールさん:
日本はすごい高いからね(笑)。すーごい高い。でも、どこでもすごいキレイに、よくしてあるから。インドはキレイじゃないからね、安いけど。

── でも、日本に来て、お給料も増えたんじゃないですか?

クマールさん:
増えた増えた。日本の給料はすごくいいから。

── おお、いいですね。ご家族はインドにいるんですか?

クマールさん:
家族はインドにいる。そう、ここは難しい! 私は奥さんと、子ども2人と、お父さんとお母さんがいるから。

もし家族みんなが日本に来たら、暮らせないですよ。わたしひとりで住んでお金をインドに送る、だったらすごくいい。

いい会社に勤めてる人ならいいですけど、私たちコックさんは難しい。

インドにいる子どもには学費をかける

── 今、クマールさんのお子さんにはどのくらいお金がかかるんですか?

クマールさん:
わたしは無料で入れる学校に行ったから、英語とかできないけど。わたしの子どもは、英語の勉強ができる学校に行っている。だから学費がすごい高い。

学費だけで1万円近くかかるね。あと、バスで学校に行くからそれにもお金がかかる。でも、子どもにはいい学校で勉強してもらいたいと思ってる。

── それは大変だ。じゃあ、今、クマールさんは、自分で自由に使えるお金はあまりない?

クマールさん:
日本で使うお金? 1ヶ月1万円くらい。あまり使えないね。お給料のほとんどはインドに送るから。

── 1万円っていうのは家賃とか別で。

クマールさん:
家賃は別。家賃はわたし払ってない。あと、ご飯もここで食べるから。

クマールさん2

── 何に使うんですか? お酒を飲むとか?

クマールさん:
そう、飲み屋とか行って(笑)。お店の休みは、火曜日だけだからね。

あと、ここの常連さんとたまに映画を一緒に観に行ったり。

── ああ、いいですね!

将来は家族を日本に呼びたい

── これからの目標ってありますか?

クマールさん:
私のファミリーも日本へ呼びたいと思っていて、家族ビザを申請したところなんだけど、まだできてない。

いつか私の子どもも日本へ来て、ここで勉強できたらいいなと考えてるけど。

── それはビザが取れるかどうか次第?

クマールさん:
はい。ビザが取れなければ来れないから。

奥さんも日本で別の仕事をしたら大丈夫みたいね。あと子どもが2人とも女の子だから日本に呼びたい。

── あと、価値観の違いを聞きたいんです。

クマールさん:
価値観?

── そうそう、日本人がお金を使うところと、インド人がお金を使うところって違うのかなって。

クマールさん:
違いはあるね。日本人は外食するけど、インド人はだいたい家で食べる。奥さんは仕事をしてないから。あと、お金もあんまり使わないから。

インドはお祭りのときお金を使う

── 無駄使いすることはないんですか? 高い服を買っちゃったりとか。

クマールさん:
それはある。あと、インドは結婚式とか、フェスティバルがいっぱいあるから。それですごいお金使うよ。

── そういうところに使うんですね!

クマールさん:
それですごい使う。子どもが産まれたらお金をもらったりとか。誕生日とか、結婚式とか。

── たとえば、結婚パーティはどんなふうにやるんですか?

クマールさん:
あんまりお金ない人でも、3日間くらいやる。すごいお金持ちの人だったら1週間くらいやる。

── ええーっ。周りに住んでいる人も呼んだり?

クマールさん:
結婚式のときは、遠い遠い友だちもみんな来る。私の結婚も、300人来た。それでも全然少ないからね。私はあんまりお金ないから。

すごいお金持ちで有名人とかだったら、何千人も来る。

── 食べものも豪華なんですか?

クマールさん:
私の結婚のときは、ビリヤニだけ(笑)。

── そうなんですね。ビリヤニおいしいですよね。

クマールさんのビリヤニ

クマールさん:
お金持ちのところだったら、ブッフェスタイルだからなんでも食べれる。アイスクリームとかパスタとかカレーとか、全部。

── 結婚式以外のお祭りって何かあるんですか?

クマールさん:
神様のとか、いっぱいあるから。

店内3

家族のために働くインド人

── 日本にいるときに、パーッとお金を使ったりすることはないんですか?

クマールさん:
いっぱい使うことはないね。インドに帰るときには、お土産を買っていくから使うけど。いっぱい使ったら意味がないから。私の給料でいっぱい使ったら、子どもたちが、何にもできないからね。

── インドでご家族の6人を養うには、月にどれくらいかかるんですか?

クマールさん:
円でいうと1ヶ月3万~5万円くらい。学費とか全部入れて。

── クマールさんが送ったお金は全部使う? それとも貯金?

クマールさん:
全部使う。日本に来る前は家もなかったから、インドで土地を買って、3年前に家をつくった。

あとは、車も買った。

だから今、私はセーブマネー(貯金)ないです。

── インドで家を買うときって、ローンなんですか?

クマールさん:
ローンもできるけど、私は使ってない。貯めて貯めて、それでつくった。

── すごいですね。家族のためにお金を使う。

クマールさん:
そうそう。それはインド人、全員そうですよ。自分のためには全然使ったりしない。家族のために仕事してる。

── 日本人とは全然違うなと思いますか?

クマールさん:
全然違う。日本人は、自分のために使うときもあるよね(笑)。

クマールさん4

── ははは、たしかにそうですよね。

クマールさん:
日本人とインド人のこれ(そういったお金に対する価値観)、すごいディファレンス(違い)あるからね。

日本人は、旦那さんも奥さんも仕事して、自分で使うから。

インドはできないです。奥さん働いてないことが多いから。

だから、ファミリーのためにがんばる。

私のお給料で、日本でいいライフもできるけど、私が使ったらだめだから。

今の仕事がハッピーだから、自分のお金は必要ない

── そういえば、お給料制なんですね。お店をやっているから全部自分の利益にしているのかと思ってました。

クマールさん:
全部社長にあげるから。わたしの給料は●●万(日本の大卒初任給より安い!)だから。

── ●●万!

クマールさん:
でも、ご飯もここで食べれるし、家もあるし。

マインドハッピーで仕事してるから。

前は、大きいところで仕事していたけど、そのときはホントにストレスだった。仕事だけだったから。

このお店なら、友だちができるけど、大きい店ではできないですよ。

だから、マインドがすごいハッピーなの。

ひとりで疲れるし、大変だけど、いいこともある。だから、このお給料でいいです。

【編集後記】インタビューを終えて

クマールさんさいごに

お金を稼ぐことは、時にそれ自体が目的のように語られることもあります。

「なんのために働くのか?」

そうやって考えたときに、「家族のために働く」と言い切るクマールさんを見ていると、すごくシンプルな答えに立ち返れました。

お金は、「自分」と「自分の大切な人」を幸せにするために必要なもの。

「なんのためにお金が必要なのか?」という問いに向き合うことは、「自分にとっての幸せとは何か」を考えることと同じなんだと思います。

「早くクマールさんの家族が日本に来られるといいなあ」

そんなふうに感じた取材でした。

また、おいしいカレーを食べに行こうと思います。

クマールさん6

構成:宮島麻衣(@miyajimai517
撮影:まえかわゆうか(@ppyuukaqq

ノマド的節約術の裏話

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この記事を書いた人

フリーの編集・ライター・PR。「灯台もと暮らし」編集部。1985年、神奈川県小田原市生まれ。高校卒業後、レコード店員、音楽雑誌編集者、webディレクター、web編集者を経て、個人事業主に。お金の価値観は「使って回そう」。ノマド的節約術では主にインタビュー記事をつくっています。