内省、してますか?『みんなの空想地図』の著者・今和泉隆行さんに聞いたお金や仕事との向き合い方

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幼少期、バスの路線図を眺めながら、まだ見ぬ街や、味わったことのない日常を想像して楽しんでいたという今和泉隆行(いまいずみ たかゆき)さん。

やがて自らバスの路線図を書き始め、7歳に差し掛かった頃、今和泉少年は新たな日常を求めて架空の地図を書き始めます。

その地図は本物の地図と寸分違わないクオリティの「空想地図」へと成長を遂げました。

そして、2013年には『みんなの空想地図』として書籍を出版。

現在も更新され続けている「空想地図」の作り手、今和泉隆行さんに仕事やお金と向き合い方、「空想地図」の未来について聞いてきました。

『みんなの空想地図』著者、今和泉隆行さんインタビュー

今和泉さんアイキャッチ

サラリーマンを辞めて始めた「無収入トレーニング」

── 書籍『みんなの空想地図』読ませていただきました。これだけ自らの頭の中を具体的に描ける方というのは、相当な内省をしているんじゃないかなって思ったのですがいかがでしょうか。

今和泉:
あっ、そうそう。めちゃくちゃ内省していますね。超絶内省野郎です。

── 今日は地図を描くまでに、今和泉さんがどんなことを考えているのか聞いてみたいと思って来ました。

今和泉:
ヒマだったんでしょうね(笑)。よろしくお願いします。

── 今和泉さんは現在、具体的にどんなお仕事をしているのでしょう?

今和泉:
7年前からの累計で、デザイン全般が13%、ライティング仕事が7%、地図デザインが6%、空想地図の制作依頼、ワークショップ、講義がそれぞれ5%ほどです。

他の仕事もたいてい5%以下。つまり、本当にいろいろなことをしています。

『みんなの空想地図』の1ページ
『みんなの空想地図』の1ページ

── ご自身の仕事をパーセンテージで分解しているんですね。

今和泉:
どの仕事がどのくらい増えているのかがわかると「この分野はこの先も可能性が見込めるな」と実感できる材料になったりするんです。

── 今和泉さんは自営業として働く以前、サラリーマンとしてもお勤めを?

今和泉:
2009年から2011年の2年間、サラリーマン生活をしていました。

会社を辞めた最初の1年は、知人の手伝いのバイトを8割、残りの2割は自営業で名刺やチラシなどの製作をしていました。

その後はバイトを意図的に辞めて「無収入トレーニング」をしていましたね。

── 無収入トレーニングとは?

今和泉:
3ヶ月間バイトをせずにお金が減ることに慣れる、ということをしていたんです。

というのも、収入が必ず得られるバイトに安易に流れていく未来の自分の姿が見えたんですよ。

サラリーマンの家庭で過ごした私からすると、その月に収支が成り立つかどうかが大事で。

その一方で、資金がまったくない起業家が出資を取り付けていたりする。

投資する企業は、長期的にペイできる仕組みをつくっていこうと考えているんですよね。

実はそういう発想のほうが健全なんじゃないかなと思って、マインドを変えていったんです。

── サラリーマン家庭で育ったのか、自営業の家庭で育ったのかでお金に対する考え方が変わるという印象は持っています。

今和泉:
あるとき、サラリーマンの呪縛に囚われていると気付いたんです。

サラリーマンって「雇用」だけが守られている状態で、仕事内容や、勤務地、職場の人間関係が約束されているわけではないんですよね。

会社そのものは安定していても、会社と自分の関係が安定することは確実ではない。

どこかに無理が生じて辞めると、収入はゼロになるのでバクチです。

今は何かの仕事を辞めたとしてもゼロにはなりません。

そう考えると、不確実なのに安定を期待し、安定と思い込むよりは、自力で安定する仕組みを整えたほうが安定につながると思ったんです。

今和泉さん2

中学生で、周囲の環境に疑問を抱き人間観察を始める

── お仕事はどんなふうに選んでいるんですか?

今和泉:
基本依頼された仕事は受けてはいるものの、受ける仕事の風向きがよくなるように調整はしています。

自営って進行方向を自分で決めて漕ぐタイプもいれば、「こういう仕事に行きつきたい」という願望はあるけど、自分で動力を使わないタイプもいるんですよね。

後者をヨット型って呼んでいるのですが、私はこのヨット型で。

ヨットって動力は持っていないんですが、帆の向きを変えれば行きたい方向へいけるんです。

つまり、自分からはアピールはしないものの、得たい仕事が得られそうなイベントや飲み会には顔を出して、そうじゃない方向では露出を下げる。

出会うコミュニティのバランスを変えて行くことで、風向きを変えるんです。

開拓したコミュニティで新しく出会った知り合いのほうが、現状の自分を見てくれる、というメリットもあります。

── めちゃくちゃ頭の中が整理されていますよね。

今和泉:
内省しまくっていますので(笑)。

今和泉さん3

── ははは(笑)。都度、内省と人間観察をしながらお仕事を進めているんですね。人間観察はいつからするようになったんですか?

今和泉:
中学生のとき、大人になっていく段階で「なんじゃこりゃ?」と思った衝撃が発端ですね。

たとえば、生徒会の選挙。

みんな選挙の立候補者の公約を見て決めるなんてことはなくて、「力がありそうかどうか」の雰囲気で見ている。

群れの中のボスを決めるのと同じ、極めて動物的な選び方をしていると気付いたんです。

── 人間の内面の部分ではなく雰囲気で?

今和泉:
民主主義はそうだと習っていたけど、どうもそうじゃないということがわかると日本の選挙結果もわかってくるんですよね。

前回掲げていた政策と真逆のことを言っている人でも通ったりするんです。

そんなモヤモヤを解消したいという気持ちで「理解できない人たちに成り切って考えたらどうか」と、謎を解こうとしたのが人間観察をし始めた発端です。

今和泉さん4

一度根付いた金銭感覚を上書きするのは難しい

── 金銭的価値観が変わった出来事はありますか?

今和泉:
高校生のときに見た冊子の地図『シティマップル』がすごくよくて。

ですが当時、地図のデザインが変わってしまうタイミングだったんです。

「前のシリーズが絶版になったら手に入らなくなる!」と思って一冊3,000円以上する本をまとめて3冊買いました。

「ひえー」っておののきながら1万円出して買ったことを覚えています。

── 今まででした一番高い買い物はなんでしょう?

今和泉:
パソコンじゃないかな。

年間の合計でいうと旅費のほうが高いかもしれませんが、普通の人が思っているよりはかかっていないですね。

この前、近隣交通費と遠方交通費を分けて計算してみたんです。

首都圏の中で日帰りできる距離の近隣交通費はだいたい年間10万円でした。

遠方交通費が宿泊費込みで40万円です。

平均すると月に1回遠出をしているので、そう換算すると意外と1回あたりの旅費は安くて。

この前も中国の3都市を回ってきましたが、航空券は往復1万5,000円、宿は一泊5,000円くらいだったので合計すると3万円ほどでした。

平日動けるため運賃が安い時期を選べるのと、極度に新幹線を使わないことが安く旅費を抑えられている要因ですね。

── 鈍行列車を使ったり?

今和泉:
そうですね。あとは、高速バスやLCCが多いです。

関西に行くときも夜行高速バスをよく利用していますが、バスの中でも熟睡できるので全然問題なくて。

なので私の中で「関西に行くお値段は4,000円」と標準価格ができあがっているんです。

それより安ければ安いし、それより高ければ高いという金銭感覚になっているので、とてもじゃないけど1万円以上払えない。

あとは、どうしてもその日の日中に到着しなくちゃいけないという場合は6,000円くらいの航空券を予約してLCCで向かいます。

交通費の節約に関しては結構うるさいほうだと思います。

── もともと交通費にお金をかけないのが好きなんですか?

今和泉:
大学生の頃、47都道府県を「青春18きっぷ」で回っていたんです。

きっとそのときに身につけた金銭感覚を上書きすることが難しいんでしょうね。

今和泉さん5

作品発表やマーケティング活用の場へと発展していく空想地図

── 空想地図について、今後の展望はありますか?

今和泉:
あらゆる表現手段を持つ人のプラットフォームとして空想地図を活用して欲しいと思ってるんです。

たとえば、小説や漫画、イラストを描いてもらったり、空想地図上の風景の写真で発表するとか。

── 空想地図は作品を発表するプラットフォームへと成長していくんですね。

今和泉:
そうなればいいな、くらいですが。あとは、街づくりの失敗事例を蓄積できたり、マーケティング的な役割が担える場所になれば、とも思っています。

「こういう都市でこういう問題が起こったら・・・」とか、「この辺りにはこういう人がいて、こういう生活をしてるだろうからこんな商品が売れるだろう・・・」とか。

そんな想定シーンを描けるプラットフォームになればな、と。

── 空想地図を軸にしてお金を生み出していく考えはないんでしょうか。

今和泉:
クリエイターのプラットフォームや、街づくりのマーケティング活用は、将来的にきっといいものに仕上がると思っています。

長期的な価値のために今はお金をもらうつもりはありません。

今は空想地図そのものは直接お金にせず、関連する仕事や培ったものを展開する仕事でお金を得て、自分自身が空想地図のパトロンとなり、好きなときに空想地図を書こうと思っています。

今和泉さん6

── 今は小学校の同級生、中村くんと書き始めた「中村市(なごむるし)」を改訂されているんですよね。現在、空想地図にはどれくらいの時間を投資しているんですか?

今和泉:
そんなに使ってないですよ、年に2、3週間かな。

この前も半年ぶりくらいに地図のファイルを開きました。

ちなみに、これも人間観察や内省をしていて気付いたことがあって。

ブログやメルマガを書いて生計を立てられている人って極度に自己管理ができる人たちなんですよね。

全然閲覧されていなくても書き続けられたりとか、毎日決まった時間に記事をあげられたりとか。私にはできない。

会社員よりよっぽど自分を律している。

私の場合は、最初は毎日書いていても「今日はやらなくていいかな」となって、1日空き、やがて1週間空き、1ヶ月空いて、1年空いていくと思います。

── 空想地図を再度書き始めようと思うきっかけはありますか?

今和泉:
新しい都市をそろそろ書いたほうがいいだろうと思って、空想地図の北にある西京市っていうのを今書き始めています。

実は今、その西京市を舞台にした音声作品を「居間 theater」というパフォーマンス集団につくってもらっていて。

空想地図上で行われる架空の芸術祭を少しずつ、つくり始めているんです。

── 徐々に進化していく空想地図の未来が楽しみです。

今和泉:
ある程度の形になるまで誰からの期待も出資も受けないフリーダムな状態で作り続けることで、オンリーワンとなり、価値のあるものになる気がしているんです。

【編集後記】インタビューを終えて

今和泉さん7

緻密な設定を重ね、架空の都市を作り上げた『みんなの空想地図』の著者、今和泉隆行さん。

今和泉さんは、日常の節々で内省を繰り返し、冷静な目線で人間観察を続けていました。

心の声に耳を傾けながら、自身の在り方や未来の行き先を選択してきた今和泉さんは、自らの人生に真摯に向き合っているように感じます。

自分にとって何が幸福をもたらすのか、どんな状態でいることがもっとも心地いいと思えるのか。

先入観に振り回されず、本質を見抜く力は、情報過多な現代を生きる上で必要不可欠なスキルなのかもしれません。

「空想地図」はこの先、新しい形のプラットフォームへと進化していきます。

今後、空想上の地図は私たちのリアルにどのように反映されていくのでしょうか。

そして、架空の街は私たちの目にどのような未来を見せてくれるのでしょうか。

期待を込めて、今和泉さんが描く「空想地図」を見守り続けたいと思います。

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この記事を書いた人

くいしん

フリーの編集・ライター・PR。「灯台もと暮らし」編集部。1985年、神奈川県小田原市生まれ。高校卒業後、レコード店員、音楽雑誌編集者、webディレクター、web編集者を経て、個人事業主に。主にカルチャー、音楽、生き方、働き方、ローカル、暮らし、メディアについて執筆。

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