「物を買うことは堅実に。エンターテイメントには惜しみなくお金を使いたい」近藤舞さん

人の持ち物には性格が出るといわれます。

「何を選ぶか」「買った物をどう扱うか」もそうですが、そもそも「何にお金を使うのか」に、人の考え方が出るのではないかと思います。

いきなりこんな話をしたのは、「私は物にはほとんどお金をかけません。お金をかけるなら体験にかけます」と言い切る人に出会ったから。

近藤舞(こんどう・まい)さん。

某テーマパークでステージマネージャーとして活躍したのち、家庭の都合でタイ・バンコクへと渡り、現地ではボランティアの歌のお姉さんとして在住日本人ファミリーを楽しませる活動をしていました。

旦那さんと4歳になる息子さんと3人暮らし。

7年にわたるタイ生活を終え、今は日本に帰国したばかりです。

学生時代は役者志望。昔からエンターテイメント一筋で生きてきた近藤さんのバックボーンはどうやら両親の教育にあったようです。

近藤舞(こんどう・まい)さんインタビュー

リアルな反応を得られるライブエンターテイメントが好き

── ずっとエンターテイメントに携わる仕事をしている仕事をされていますが、何かきっかけはあったんですか?

近藤さん:
エンターテイメントにもいろいろありますが、私は昔から舞台などのライブエンターテイメントが大好きで。学生時代は役者を志していました。

母が手話通訳士なので、昔からボランティアをすることが身近にあったんです。脳性マヒの子どものお手伝いをしたり、夏休みに老人ホームに行ったり。

(※脳性マヒとは=妊娠中または生後1ヶ月の間に赤ちゃんに起こった脳損傷によっておこる運動機能の障害のこと。症状にはいろいろあるが、手足の硬直が多い)

リアルな場所で人と向き合って反応が得られる喜びに触れたのも、ライブエンターテイメントに興味を持つきっかけになったのかもしれません。

── 役者を志していた学生時代から、裏方であるステージマネージャーの仕事に就くまでにどんな心境の変化があったんですか?

近藤さん:
学生時代は役者を志して舞台芸術の専門学校に通っていました。卒業制作で、一から舞台を制作した際にエンターテイメントを作る楽しさに気づきました。

そこで、お金を貯めてニューヨークやロサンゼルスに本場のエンターテイメントを見に行ったり、20歳のときには英語を習得するためにカリフォルニアに1年留学しました。

近藤さん:
留学から帰ってからは、テーマパークの舞台の運営やショーのクオリティ維持、演技指導などを行なっていました。

ショーは生モノなので日々緊張感があるんですが、毎日ライブに触れられた4年間は楽しかったですね。

働けないジレンマのタイ生活。しかしボランティアの歌のお姉さんとして開花!

── 楽しかった4年間、ということは退職されたんですか? すごく充実していそうだったのに・・・。

近藤さん:
そうなんです。結婚して、夫の仕事の都合でタイに行くことになったんです。実は最近帰国したばかりなんですけど、計7年間いました。最初の3年がとにかく辛かったですね。

── いきなりのタイ生活! どんなところが辛かったですか?

近藤さん:
まず、「働けない」ことですね。

タイは自国民の労働を守るために労働ビザの取得規制が厳しい国です。

加えて日本の会社は帯同家族の就労を禁止しているところも多いので、これまでの生活から一転、すごくヒマになっちゃったんです。

大好きなエンターテイメントも言語の壁があって選択肢が少ないので、すごく辛かったです。

── 自分ではどうにもできない生活の大きい変化はストレスが溜まりそうです・・・。

近藤さん:
でも3年ほど経って子どもが生まれてからタイ生活も一変しました。

現地の妊娠・出産サポートのコミュニティにボランティアとして参加したときに、そこでエレクトーン奏者のママと出会ったんです。

もう、お互いに話をした瞬間「見つけたーーーーー!」と(笑)。

── すごい。そんなところに運命の出会いが。

近藤さん:
すぐに意気投合して、私が歌で彼女がエレクトーンを演奏するエンターテイメントユニット「FUN FUN FACTORY(ファン ファン ファクトリー)」を結成しました。

その後はボランティアとしてバンコクの幼稚園をまわったり、色々なイベントに出演したり、充実していましたね〜。バンコク生活の集大成として自主コンサートも開催したんですよ。

近藤さん:
タイで開催されるイベントの多くはもちろんタイ語ですよね。だから、バンコクで暮らす子供や親はこういったライブエンターテイメントに触れられる機会が日本に比べてすごく少なくなってしまうんです。

その機会を自分が提供できたことはすごくうれしかったですね。

お金の使い方・考え方はすごく堅実だと思う

── ものすご〜く偏見かもしれないんですが、こういうエンタメ界の人って「宵越しの金は持たねえ!」みたいな人が多そうだなって思うんですけど、近藤さんはどうですか?

近藤さん:
私、お金に関してはものすごく堅実です。というか、お金を使うことに恐怖があるといっていいくらい。

── えっ! 意外です。

近藤さん:
どうしてそうなったのか思いつく理由はあるんですけど・・・。

一番は、留学で貯金を使い果たして帰国後に一文無しの2ヶ月間があったことです。

友達が「おごるから会おうよ!」と言ってくれても、そこに行くまでの交通費もない。断り続けるのも辛くて、どんどん心に余裕がなくなっていって、生活がうまくいかなくて。

もうその時期に戻りたくない!という思いがあるので、貯金はちゃんとしています。就職してからは「使う用」と「貯金用」、常に2つの口座を分けて管理していますね。

── すごく堅実ですね。

近藤さん:
最近は夫婦でお金会議もするようになりました。

ただ口座に入れておくよりも運用もしたほうがいいかなって思って、知り合いの保険屋さんにお話を伺ったんです。そこで言われた言葉がすごく腑に落ちて。

「お金の使い方って、知って考えるだけでも変わってくるよ」と言われて。あぁ、そうだなぁって。

近藤さん:
たまたま海外暮らしをしたことで、両替のレートに触れることになったり、お金って置き場所によって変わるんだなぁということを実感しています。

まだ特にどう運用するかは決めていないですが、意識が変わってきたかも。

── 夫婦でそういうお金の話ができるの、いいですね。

近藤さん:
夫もまったく同じ価値観なので、そこは本当によかったです。

ふたりとも日用品は本当にこだわりがなくて安いものを探すようにしています。

ただ、美味しいご飯を食べる、旅行に行く、芸術鑑賞する、など体験には惜しみなくお金を使いたいと思っていて、その考え方も全部一緒なんです。

近藤さん:
お互いが無駄使いしないだろうという信頼があるからこそ、お金に対して縛り合うことはないですね。お金にゆるい人とは付き合えないと思います(笑)。

捨て犬を拾ったら、別荘を買ってしまったお父さん

近藤さん:
むしろ「体験にお金を使う」ことにかけては、父がすごかったかも。

私が学生のころに捨て犬を拾って帰ったんですけど、そうしたら父が「犬と思い切り遊ぶぞ!」と那須に別荘を買ったことがあって。

── ええーーーー! 極端すぎやしませんか!?(笑)。

近藤さん:
普段の生活はすごく質素なんですよ。ただ「子どもとの体験のためにお金を使う」というところは徹底していたのかな。今、思えば。

私もそんな父の性格を引き継いでか、お年玉をほぼ使ったことがなくて。

貯めて貯めて、中学2年生のときに初めて自分でオーディオコンポを買ったんです。

その時に父がすごく喜んでくれて、なぜか普段はくれないお小遣いをくれたんです。

訳分からなくないですか? お金を使ってお小遣いをもらえるって。

── いいお金の使い方したな、って思ってくれたってことですかね?

近藤さん:
たぶんそうなんですよね。

当時すでにエンターテイメントが大好きだったので、「正しいお金の使い方をしたな」と思ってもらえたんだろうな、と。

── そのお父さんのお金の価値観が、今の近藤さんに引き継がれているってことですもんね。

近藤さん:
間違いなくそうですね。

子どもに「体験」をプレゼントしたいという気持ちは私の子育てにも引き継がれてますね。

息子が生まれてからいろんなところに連れて行ってますが、今4歳になって色々思い出してしゃべるんですよ。

「あそこ行ったね〜」「あれ楽しかったね〜」って。覚えてるんだなぁって思うと、なおさらいろんなところに一緒に行きたくなっちゃいますね。

もう少し大きくなったら、私も大好きな舞台を一緒に観に行きたいなと密かに楽しみにしています!

【編集後記】インタビューを終えて

近藤さんのお話を聞いて面白いなと思ったのが、「お金の価値観も親子代々引き継がれていく」こと。

小さい頃から様々な体験に触れて育った近藤さんは、人に楽しみと喜びを与えるエンターテイメントが仕事になっています。

そんな近藤さんの息子さんは何に興味を持つようになるんだろう。

将来がとても楽しみです。

自分が何にお金をかけたいか?」という問いは、そのまま自分の生き方に繋がってくる「ような気がしました。

何にお金を使うのか、私も近藤さんのような明確さを持ちたいなと思ったお話でした。

ノマド的節約術の裏話

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この記事を書いた人

編集者・ライター。雑誌出版社に勤務していましたが、取材で訪れたタイ・バンコクの街に一目ぼれをし、即移住。現地のフリーペーパー編集部で3年半働き、今は帰国してフリーランスに。人生において毎日の生活をおくる「場所」がとても大切だと考えていて、いつも最高の住みかを探しています。将来はバンコクにも自分の居場所(ゲストハウス)を作りたい!