共同生活の心地よさは『借りをつくらない』ことから始まる。渋谷のワンルームに男3人でルームシェアする森園凌成さん

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家族でない他人との共同生活。

最近は、「1ヶ月お試し入居できる」シェアハウスが増えたり、そもそもシェアハウスやソーシャルアパートメントなどの情報に、昔よりも簡単にアクセスできるようになりました。

それによって、他人と暮らすことのハードルが、少し前の時代よりグンと下がったんじゃないかと思います。

共同生活、私は学生時代の「部活の合宿」程度でしか経験したことがないのですが、「一度はやってみたいなぁ」と憧れます。

共同生活を経験した友人から聞く声は、「孤独を感じなくなった」「気を使いすぎて疲れた」など、良くも悪くも様々です。

けれど一つわかったのは、共同生活を続けるのも離れるのも、「一緒に暮らす他人」による部分が大きいんだなぁということ。

とは言っても、自分の心地よさのために、他人をコントロールすることはできません。

だからこそ考えたいのは、「他人と心地よく共同生活するために、自分ができることはなんだろう?」ということ。

こんな疑問をたずさえ、今回、東京・渋谷で男3人でルームシェアをする森園凌成さんにお話を伺いました。

森園凌成さんインタビュー

インタビューした日:2019年6月19日(水)

緊急事態もルームシェアなら怖くない

── 今の住環境を教えてください。

森園:
ワンルーム22畳を3人でルームシェアしています。家賃は16万円なので、ひとりあたり5万3千円くらいに、光熱費がひとり3分の1上乗せされている感じです。

── それぞれのプライベート空間はありますか?

森園:
ワンルームを布カーテンで3つに仕切っているので、一応個人のスペースはあります。

壁じゃないんで、音とか丸漏れですけど(笑)。

区切った空間にABCと名前をつけると、僕がA、一番狭い空間に布団とか置いてる。Bがダイニングで、キッチンと4人がけのテーブル、テレビと、ソファを置いています。Cが一番広くて、ここを後のふたりが使っている感じです。

── 3人のもともとの関係は?

森園:
会社の同期です。

僕たちみんな渋谷の会社で働いていて、1年半くらい前に僕が住人のひとりに声をかけました。その半年後に、もうひとり会社の同期が増えて、今は3人になったという感じ。

会社が渋谷にあるので、徒歩3分で行けてとてもありがたいです。

── そもそも、どういう経緯でルームシェアをすることになったのでしょう。

森園:
まずこの物件自体は、僕が見つけました。

大学4年生の頃、インターン先で知り合った人がこの物件を借りていました。その人が、「自分の会社のオフィスをそろそろ移転するんだけど、良かったら住まないか」と言ってくれて。僕にこの場所を紹介してくれたんです。

── じゃあここは、もともとオフィスなんですね。

森園:
そうです。

僕自身もちょうど、「会社に近いところで家を借りたいな、でも池尻大橋とかに住むと家賃が高いな」「でも電車通勤は嫌だから、徒歩で通えるところで、いい物件ないかな」と住む場所で悩んでいた時期でした。

そういう時期にちょうどここが空いてる話をもらって、一度内見に来たんです。今はこんなに生活感で溢れちゃっているけど、はじめて何もないこの部屋をみたとき、「広いし、綺麗だな。ルームシェアとかだったら家賃も出せそう!」と思いました。

それで、じゃあ誰とルームシェアするかってなったときに、やっぱり会社の同期が生活リズムも合うしいいな、と思って声をかけました。

── 住んで1年以上になりますが、住環境に対しての満足度はどうですか?

森園:
僕も他のふたりもこの共同生活以前にも、誰かと共同生活した経験があったのも大きいと思うのですけど、特に不満なく過ごせています。

ありがたいなって思うことの方が大きいかな。

僕、去年入院しているんですよ。喉痛めて、声が出なくなっちゃって。

ネットで症状を検索したら「命に関わるかもしれない」ことが分かって、慌てて病院に行こうと電話しようとしたんです。でも声が出ないし、息も苦しい。

そのタイミングでたまたま住人が家に帰ってきて、僕はスマホを使ってテキストで「病院に連れて行って」と伝えました。彼がタクシーで病院に連れて行ってくれて、先生ともやりとりしてくれたおかげで、大事に至らずにすみました。

── ひとり暮らしだったら危ない状況になっていたかもしれませんね。

森園:
すぐに相手の状況に対応できるのは、ルームシェアならではだと思います。

僕のような緊急事態じゃなくても、風邪ひいて何か買ってきてほしいとか、宅配の受け取りをしてほしいとか。地味だけど、すごく助かっています。

「家賃って、誰に払うものなんだろう?」

── 森園さんは、ここでルームシェアをされる前も共同生活をしていたというお話しでしたが、それは誰とどういう形で?

森園:
どっちも変わった形での共同生活で、一つ目は海外にホームステイとゲストハウスのような宿での共同生活。海外から帰ってきたあとは、日本に留学に来ている東南アジアの学生寮で寮長をしながら、シェアハウスのような感覚で暮らしていました。

まず、大学2年生の頃、大学を休学して東南アジアにボランティアに行っていたんです。

東南アジアを回りながら、現地の学生に英語とか日本語を教えて回る感じで。そこで2ヶ月ほど、自分以外の海外から来たボランティアスタッフと一緒に一つの宿で共同生活を経験しました。

喧嘩とかももちろんあったんだけど、そのワイワイ感がけっこう楽しく感じたりもして。「自分は意外と、他人と暮らすの大丈夫なタイプかも」と思うこととなった経験でした。

あとは、国をまたぐときに旅行感覚で、ちょっと一人旅をしてみたりもしたんですけど。アゴダっていうアプリで、現地の最安値の宿を検索してそこに泊まるってことをやっていたんです。

── 一番安くて、いくらの宿に泊まりました?

森園:
300円のところに泊まりました。

怪しい空気の漂う路地裏にある宿だったんですけど、電気がついていない大きな部屋に2段ベットが6つもあって、そこに扇風機が一台「ボー」って音を出して回ってるんです。

汚いし、布団も臭うし、怖かったなぁ。そういうのも経験しているからか、ちょっと汚かったり綻んでいても、割とオッケーなスタンスになりました。(笑)

── 帰国してからは、東南アジアの寮で寮長をしていたということですが。それはどういう経緯で?

森園:
帰国したときは大学3年生で、実家を出たいなぁと思っていました。

でも親は、「住む場所の手配も、お金も、自分でなんとかしてね」というスタンスだったので、物件を探すところからスタートしました。僕は大学が四ツ谷にあったので、「新宿近郊で安くていいところないかなぁ」と探していたんです。

できれば1万5千円くらいの住める場所を。

── 1万5千円!?

森園:
僕自身お金がなかったというのもあるんですけど、そもそも自分が住む場所に対して思っていた価値が、1万5千円程度だったので。

それでFacebookで「新宿近郊に月1万5千円以下で住めるところないですか?」て呼びかけたんです。3万円や4万円代のお得なシェアハウスの呼びかけは全て断り、待ち続けました。

そうしたら、僕が住むことになる東南アジア人の寮の寮長をすでにやっていた友人が「うち安いよ。1万4千円だけど、どう?」と声をかけてくれて。

いやぁ、言っていたら来るもんだな、と(笑)。

僕自身、東南アジアから帰ってきて、そのまま東南アジアの人たちと関わる機会がなくなるのは寂しいなと思っていたので、「ぜひ!」とお返事しましました。

── 森園さんの、どうしても家賃にお金をかけたくない理由が気になります。

森園:
僕は結構、「家賃」というものに常日頃から疑問を持っていて。

それは、建築家であり、作家である坂口恭平さんの影響を受けている部分が大きいのですけど。

坂口さんの『独立国家のつくりかた』という本があるんです。それを大学生の頃に読んでいて、特に印象的だったのは、「子どもの頃からの質問」という内容で紹介されていた問いについて。

たとえば、「毎月家賃を払っているが、なぜ大地にではなく大家さんに払うんだろう?」とか、「土地基本法には投機目的で土地を取引するなと書いてあるのに、なぜ不動産屋は摘発されないのか?」なんていう問い。

その本を読んでから、高い家賃を支払うことに対して「払って当たり前」という感覚じゃなくなりました。

あとは、坂口さんがモバイルハウス(移動できる家)を数万円でつくっているのにも影響を受けていて。

住まいそのものに対しても、「今の生活の中で、もっとDIYしたり工夫することで抑えられる費用があるのでは?」と思うようになったんです。

必要に迫られていないものに、お金はかけない

── 今のルームシェア生活で、DIYなどで抑えた費用はありますか?

森園:
たくさんあります。

たとえば、さっき話した、部屋を3エリアに分けるための仕切り。あれは東急ハンズで布と紐、棒、フックを買って、自分たちでつくりました。

最初は、カーテンとか一般的に思い浮かぶものでパーテンションしようと思っていたけど、「やっぱり高いよね」となって。悩んでいたときに住人がこの案を思いついたんです。

家具も、うちは冷蔵庫や洗濯機やテレビなどひととおり揃っているんですけど、全然お金をかけていない。洗濯機は300円で買いました。

── どうやって購入したんですか?

森園:
最初、この家にやって来たときは、住人も僕も、洗濯は銭湯の近くのコインランドリーで済まそうと思っていたんです。

だけどやっぱり、「仕事で疲れて帰って来たあとに洗濯物を運ぶのも、大変だよね」ということになって。どうにか安く購入できる方法を考えたんです。

それで、メルカリで洗濯機探し始めて。そうしたら300円で売られている洗濯機を発見したんです。だけど持ち主が、千葉県の我孫子にいて、郵送費が7000円かかることがわかって。

せっかく300円のものを見つけたのに、郵送費で7000円もかかっちゃうのはもったいない!ということで、住人と僕のふたりで我孫子まで電車で取りに行きました。

── 電車で!?

森園:
素手で男ふたりで運んだんです。取りに行った持ち主も、「車じゃないの!?」ってすごく驚かれていて(笑)。レンタカー借りちゃうと、やっぱり郵送費と同じくらいかかっちゃうから。

運んでいる最中、知らない人から「頑張ってください!」とか声かけられちゃったりしました。

── 青春を感じますね。

森園:
リビングにあるソファも、ジモティーで4,000円で購入しました。

この家の家具・家電を揃えるのに、ひとりあたりトータル2万円もかかってないんじゃないかと思います。

── 「家を借りて生活するモノを揃えると、このくらいかかる」という固定観念を壊されます。

森園:
自分が必要だな、意味があるなと思うものにお金をかけているだけなんです。逆に言うと、意味があまり感じられないものにお金をかけないようにしている。

この家にやってきたとき、本当に何もない、ガランとしただだっ広い空間があっただけなんです。それを目の当たりにすることで、0から必要なモノを考えることができたのかもしれません。

── 今って、家具・家電付きを売りにしている物件も多いじゃないですか。それが節約になる面もあると思うけれど、あえて何もなにもないことから節約を考えられることもあるんだな、と思いました。

共同生活の心地よさは「借りをつくらない」ことから始まる

── ルームシェアをはじめて約1年半になる森園さんですが、同居するおふたりとの関係に変化などは感じますか?

森園:
会社の同期なので、関わり方に大きな変化はないですね。でも、住み始めた頃よりも、一緒にいて心地よく感じるようになりました。

それは僕らお互いが「借りをつくらない関係だから」だと思うんです。

── 借りをつくらない関係?

森園:
これは、この家で共同生活をはじめてから気づいたことなんですけど。

借りをつくらないっていうのは、人の生活の分までやってあげないこと。自分以外の人のご飯をつくってあげるとか、皿を洗ってあげるとか、洗濯を干してあげるとか。

一見冷たく感じるかもしれないけど、これが結構だいじ。

── それぞれが、自分の生活に必要なことをやって、それ以上のことはやらないというスタンス。

森園:
そうです。だからうちには、洗濯当番とか、掃除当番はないんです。

なぜかというと、たとえば誰かが「今日は私がみんなのご飯をつくるね」と言って一緒に住んでいる人の分のご飯をつくるとする。もちろんその人は、良心でそれをやっていて、お返しをしてほしいなんて思っていないとします。

それでも、つくってもらった側が義理堅い人であればあるほど、「じゃあ次は自分が」と思うことになる。とは言っても、みんな仕事もあるし、プライベートの予定を入れたいし、結構忙しかったりする。

そんな中で抱く「次は自分が」って、最初は張り切ってやるかもしれないけど、どんどん義務感になっていっちゃうと思うんです。それってきっと、心地よさが長続きしない理由にもなりうる。

だから基本は、「Do it yourself」がいいんじゃないかと。

── 森園さんが、借りをつくらないことが大切だと気づいたのはどうして?

森園:
僕自身が結構、「ふる舞いたがり」な面があるんです。

料理が好きで、普段からよくキッチンに立って、カレーとか作るんですけど。

ある日、そうめんを茹でていたとき、「ひとり分だけ茹でるのもな・・・」と思って、住人の分も茹でようとしたら、「いいよいいよ、こっちはパスタ茹でるから」と言われたことがあって。

そのときに、「あ、このくらい気を使わなくていいんだ」って思えたんですよね。

森園:
うちは、特別なルールはないんです。

みんな自由にギターを弾くし、友だちを呼ぶし。共同生活の前に、それぞれの生活があることをお互いに尊重するようにしている。

家の中でもプライベートが担保されていて、でもルームシェアという環境のおかげで、困ったときはお互いに助け合うことができる。

そんな環境を今、とてもありがたく感じながら暮らしています。

インタビューした感想

基本は「Do it yourself」なスタンスの、彼らのルームシェア生活。

けれども、誰かが落ち込んでいるとき、体調を壊したときは、自然に気をかけて、ご飯に誘ったり、銭湯に誘ったりもするそうです。

そんな3人のつかずはなれずの距離感は、「自立した生活」と「義務感なく過ごせる心の余裕」の上で成り立っているのだと、今回の取材を通してわかりました。

「借りをつくらない関係から、心地よさが生まれる」。

より良い関係を築く上で、「ギブアンドテイク」が大切とよく言われてますが、必ずしもそうではないかもしれない。森園さんにお話を伺った今、こんなことを思います。

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この記事を書いた人

小山内 彩希

編集者・ライター。1995年生まれ、秋田県能代市出身。株式会社Wasei「灯台もと暮らし」編集部。野球しながら植物を育てています。

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