インターンや留学や休学、なにを選ぶかよりも「意思ある選択」かどうかが大切。|編集者・ライター、オバラミツフミが振り返る休学生活

小山内 彩希の画像

長期インターンや海外留学をしながら大学に通うこともできる時代に、「休学」を選ぶひとが増えてきているように思います。

休学は今でこそメジャーな選択ではないけれども、もしかしたらこの先、進路決定や就職活動の選択肢として増えていく可能性があるのかもしれません。

しかし、休学がただ最高な面ばかりだったら世間ではとっくにその流れが浸透しているはず。やっぱり、金銭面の問題とか、周りの大学生に遅れをとることへの不安が、休学に今一歩踏み出せない人たちの心の中にはあるのではないかと考えます。

今回のインタビューでは、休学をしながら、現在は編集・ライティング業を仕事にする小原光史(@ObaraMitsufumi)さんに取材しました。

小原さんに、「休学を決めた理由」や「休学をしてよかったこと」を聞いていくと、休学したからこそできたことがたくさん見えてきたように思います。

けれどもそれ以上に、休学や留学、インターンが道をつくっていく上での最高の選択なのではなく、意思ある選択とその選んだ道でどう頑張るかが大切なのだというお話に胸を打たれました。

小原光史さんインタビュー

オバラミツフミ

インタビュー日:3月16日(金)

編集・ライティングの実力をつけるための最善策が休学だった

── 自己紹介をお願いします。

小原光史(以下、小原):
94年生まれ、秋田県湯沢市出身です。現在は都内の大学4年生で、休学中です。1年前から、編集者・長谷川リョーのもとでアシスタントとして編集・ライティング業をやっています。

そのほかにも、個人で編集・ライティングを受けたり、ウェブメディアの編集部に所属して記事をつくったりしています。

── そもそも小原さんが休学をしようと思った理由はなんだったのでしょう?

小原:
僕、明治学院大学を1年で辞めて、産能能率大学に通い直しているんですけど。産能能率大学の1年生の頃からずっと、キュレーションメディアで記事を書いたりしていたんですよ。

けれども、独学で編集・ライティングをやっていくことに限界を感じていたのと、もっとかける場所を増やしたいという思いがあったんです。

そのためには、誰かに教えてもらいながら自分の実力を上げないといけないと思って、休学を決めました。

── では、小原さんにとっての休学は、文筆業を仕事にしていきたいという想いがある中での決断だったわけですね。

小原:
決断ってほどでもないですよ。僕自身は、大学を辞めたのも、休学したのもそんなに踏み切ったという気持ちはなくて。

ただ、「社会に出る前に編集者・ライターとして実力をつけるにはどうしたらいいんだろう?」と将来について冷静に考えた結果の最善策が、自分にとっては休学だったというだけです。

オバラミツフミ

書きたい、よりも、なにかに心を動かされ続けたい

── 小原さんが、文筆業を仕事にしようと思ったのはいつからでしょう?

小原:
物心ついたときから書くことは好きで、そういえば小学生の頃から「作詞家になりたい」と言っていました。

小さい頃から実家のパソコンでWordを立ち上げて詩を書いていた、と親は言ってました。だから書くことへの感度は、幼い頃から高かったんじゃないかと思います。

── どんなことを書いていたのか、覚えていますか?

小原:
現実にあった、とても身近なことですかね。

小学校のとき、住んでた地域が発行している文集に詩を書いて入選したんですよ。そのときも、祖父が亡くなったことを事実ベースで書きました。それから高校のときは、甲子園新聞を勝手につくっていましたね。

地元の高校が甲子園に出場したときには、応援メッセージが読み上げられることもあったんですよ。

オバラミツフミ

高校生の頃はとくにももクロにハマっていて、ずっと歌詞提供をしたいと思っていました。今思えばちょっと気持ち悪いんですけど、iPhoneに歌詞のメモを溜めていたり(笑)。

── へぇ! それはすごいももクロ愛ですね!

小原:
このひとだったら、こういう言葉を歌ってほしいなって気持ちで考えて書いていました。あんまり、知らないひとのことは書けないんです。

── 自分が心を動かされたものを書きたいという欲求があったのですね。

小原:
今の仕事をやっていて、インタビューがいちばん好きなんです。インタビューもその場で感情移入できるから好きなのかなって思います。

たぶん僕にとって書くことは、感情が乗ったことを残しておくための手段で。いちばんの欲求は、「なにかに心を動かされ続けたい」なんじゃないかと、休学してから気づきました。

アシスタント生活を通してお金の使い方が変わった

── 子どもの頃から、たくさん文章を書いていたというお話をしていただいたのですけど、読むことはどうでしたか?

小原:
本や新聞は、多くの文筆業を志すひとに比べたら、全然読んでこなかったと思いますよ。

実家が旅館なのですけど、家に文化的資本もなく、毎日外でひとと会うことの方に楽しみを見出していました。

── では、お金の使い方で言ったら、友だちと遊んだりとかの出費が多かったですか?

小原:
そうですね、小学校のときはカードゲームに、中学のときはネットショッピングに、高校のときは友だちとのご飯代やファッションにお金を使っていた気がします。

今も昔も貯金ができなんですよ。けど今の方が、有意義なお金の使い方をしている気がしますね。

── 今と過去ではどういうふうにお金の使い方が変わったのでしょう?

小原:
大学1年生の頃はひたすら競馬にハマっていたんです。それと、数百円の移動代金をケチっていました。

でも、休学して長谷川のアシスタントになってからお金の使い方は変わりましたね。お金は、「他人のために」そして「仕事の効率をあげるために」使おうと心がけるようになりました。

オバラミツフミ

まず、他人のためにお金を使うと、そこに人間関係ができるんです。些細な優しさって意外とちゃんと循環して戻ってくるものだと学びました。

それから、仕事の効率をあげるためには無駄なストレスをできるだけ解消していくことが大切なんだと気づいたのも大きいです。移動手段や、仕事環境をできるだけ最高のものにするために数百円を惜しまなくなりました。

── 小原さんはアシスタントを通して、師匠からスキル面だけではなくお金の使い方まで影響を受けたのですね。

休学が正解ではなく、大切なのは意思ある選択をすること

── 小原さんは休学しながら、編集・ライティングの仕事をされていますが、私は通学しながら編集・ライティングのお仕事をインターンとしてやってきました。

小原:
今は長期インターンも、珍しくないと思います。でも学校生活との兼ね合い、大変じゃなかったですか?

── 忙しく感じた時期もあったけど、でも「できちゃうんだな」っていう気持ちもあって。だからこそ、休学したからこそできたことの話を小原さんに聞いてみたいです。

小原:
休学したからこそできたことは、やっぱり自分の時間をなにかひとつのことだけに注げたことですかね。

学校に通いながらだと、「学校があるから」「学生だから」を言い訳にしてしまうんじゃないかという気持ちもありました。

学校という退路を断つことが、学生と並行するのではなく休学を選んだいちばんの理由です。

── ひとつのことに時間を注ぐと、それだけ階段を駆け上がっていくスピードが速いのかなって、現在小原さんがいろんな媒体でご活躍されているのを見て思います。

小原:
もちろん、師匠がやる気に対してステージをたくさん用意してくれるというのはありますけど。

自分が休学してよかったと思うことは、師弟関係を結ぶ師匠のスキルだけじゃなくマインドセットまで学べたことだと思います。

どういう人となりで、どういう私生活を送っていれば、いい仕事ができるのかを身近で学ぶためには、自分の時間もそこにつぎ込む必要がありますよね。

── そうですね。週に数回、数時間会うだけではわからないことはあると思います。

小原:
僕は、編集・ライティングのスキル以上に、社会人・仕事とはなんたるかを自分の肌で感じながら学ばせてもらったことが、休学して、アシスタントの道を選んでいちばんよかったことだと思っています。

── 休学をすることに、ネガティヴな印象を持って踏み込めないひともいると思うんです。周りと社会人になるのが1年遅れてしまうとか。

小原:
その気持ちがわからないわけではないですけど。

とくに考えないまま、周りがインターンしているからインターンする、就活しているから就活するというスタンスで進路を決めていくほうが、圧倒的に不幸なんじゃないかなぁと。

オバラミツフミ

なにも休学することが多くの大学生にとって最善だとは思っているわけではないんです。ただ、自分の人生を社会のレールから一度切り離して考える期間があってもいいんじゃないかとは思っていて。

僕は、アシスタントっていうだけで取材に同行できて、普通に生活していたら会えないような人たちにたくさん会えて、世界がグッと広くなりました。そのおかげで、大学卒業が人よりちょっと遅れることは、取るに足らないことだったなって思えましたから。

── 小原さん自身が自分の編集・ライティングの能力をあげるために選んだのが休学、アシスタントという道なだけで。休学することが多くの大学生に必要というお考えではないんですね。

小原:
大切なのは、意思ある選択をしているかどうかだと思っているんです。世の中が、とかではなく、ただ自分がどうしたいか。

自分がしたいことのために休学が必要ならすればいいと思うし、そうじゃないならしなくてもいいと思っています。

お金を理由にやりたいことを諦めるのではなく、お金に苦労してでもやりたいことができた方がいい

── 休学という選択を取ろうとするとき、どうしても「休学期間のお金はどうするのか」という問題が出てくると思うのですが・・・。

小原:
僕も休学中は仕送りを完全に切られていたので、金銭面には苦労した期間もありました。

今でこそ、大学生が生活するには困らない程度には稼げていますけど、最初は生活費くらいしか稼げなかったので。

── 小原さんは、自由が丘にキャンパスのある産能能率大学に通っていますが、お住まいは都内ですか?

小原:
はい、今は本郷三丁目に弟と住んでいます。

なので、家賃は両親が出してくれているんです。休学した頃から弟と一緒に住んでいるので、休学したての頃は家賃を出さなくていい環境が本当にありがたかったです。

東京は家賃が異常に高いので。

── 都内一人暮らしで休学を検討する大学生は、郊外か、他の関東圏に住むことを考えると生活水準がいくらかよくなりそうですね。

小原:
そういうふうに工夫をする姿勢はだいじだと思います。

休学をしたいとか、休学してなにかやりたいことがあるときに「お金」を理由にやめちゃうってもったいないと思いませんか?

── そうですね、いきなり諦めちゃうのはもったいないかも。

小原:
いろんな事情のひとがいると思うので、一概には言えないですけど。でも、やっぱりなにを大切にしたいか自分に問いかけることがだいじだと思います。

僕は、ライティングスクールに通っていた時期もあったんですけど、そのときはお金が足りなくて母親に「6万貸してくれ」って電話しました。次の月に、働いたお金で返済したんですけど。

── たしかに、やりたいことがあって、でも困難もついてくるって珍しいことじゃないんですよね。

小原:
そうそう、いちばん残念なのはあとから「あのときもっと、ああしておけば」って後悔すること。

休学やその先にやりたいことがあるのなら、まずは周りのひとに頼ったり、お金を借りてでも、ちゃんと大切にしたいことを叶えた方がいいと思います。

オバラミツフミ

クレイジージャーニーになるためにエグゼクティブ就活をしていきたい

── 小原さんは、大学復学をいつ頃からお考えですか?

小原:
この春から復学の予定です。

── この春から! 

小原:
編集者・ライターに軸足を置くことには変わりないですけどね。

── たとえば、卒業後はどこかの会社に就職する、なんてことも考えていたりするのでしょうか?

小原:
就職は今のところ考えてないです。

この編集者・ライターを1年間やってみて気づいたのは、僕にはまだ追いかけたいことがないんだなってこと。

── ということは、小原さんはなにかを追いかけたい欲求がある?

小原:
『クレイジージャーニー』に出ているようなひとにすごく憧れるんですよ。

あの番組に出る人たちって、ひとから頼まれたわけではないし、需要があるのかわからないものを心を燃やして追いかけているじゃないですか。

僕もそんなものが見つければいいなって。

── それが、編集者やライターの活動を続けていくことと関係していますか?

小原:
この編集・ライティングの仕事を、僕は勝手に「エグゼクティブ就活」って呼んでるんです。

── エグゼクティブは「ぜいたくな」という意味ですよね。

小原:
やりたいことがまだ明確ではない僕にとって、編集・ライティングはすごくぜいたくな仕事だと思います。

不惑(ふわく)って中国のことわざがあるじゃないですか。

── 「四十にして惑わず」、孔子の『論語』だった気がします。

小原:
国語の授業とかでも取り上げられているんですけど。

40歳のときに孔子がやっと自分の進む道に対して迷わなくなったということから、不惑は、40歳の頃に道が見えるという意味を持つ言葉になったらしいです。

オバラミツフミ

僕も40とは言わなくても、もう10年くらいはやりたいことを見つけるために、いろんなひとに会ったり話を聞きたいなって思っています。

編集・ライティングの仕事は、普段生活している中では関われないような、おもしろいひとと出会えるとてもぜいたくな仕事。そんなエグゼクティブ就活を今後もやっていきながら、自分の道を拓いていけたら、というのが今の気持ちですね。

インタビューした感想

「編集・ライティングの仕事はエグゼクティブ就活」という答えが小原さんの中に生まれたのは、休学をしてすべてをそこに注いだからからこそ見つかったものだと思います。

今回の取材で印象的だったのは、「この1年間は”なぜやっているのか”という理由すら求めず、ただ編集・ライティングをやった」という言葉でした。

立ち止まって考えたり、自分にじっくり向き合う時間をつくることはとても大切なことだと思います。けれども、考えすぎてなにもできないというジレンマに陥ってしまうことも。

小原さんのお話を聞いて、やりたいことややるべきことというのは、いつもなにかをやった先に見えてくるものなのかもしれない、と改めて思いました。