ファッションブロガーのFukulow(ふくろう。本名、平岡雄太)さんは、大学時代からメンズファッションブログ「DRESS CODE.」を運営しています。
学生の頃からファッションに関心を持ち、今では月間30万PVを達成するようになったFukulowさんはファッションやブログに対してどんな考え方を持っているのでしょう。
筆者のくいしんが「DRESS CODE.」に興味を持ったのは、文章からにじみ出る独特の親近感。
ファッションブログって、「これを買っておけば間違いない!」みたいなテンションのものが多くないですか?
Fukulowさんの文章は、決して人に押し付けるような言い方ではなく、あくまで自分が好きなモノを共感してくれる人たちに提案するもの。
僕はそんな文章に共感し、今回の取材を申し込みました。
Fukulowさんはお金について、これまでどんな経験をして、どう関わっていこうと思うのか、聞いてみました。
Fukulowさんインタビュー
インタビュー日:2017年4月18日
そんなに裕福じゃなかった幼少期から大学までのお金の思い出
── まずは自己紹介をお願いします。
Fukulow:
1990年うまれ、大阪出身の26歳(2017年4月現在)です。大阪大学法学部を卒業し、現在は東京都内に住んでいます。
これまで会社員として働きながら、ファッションブログ「DRESS CODE.」を運営していて、最近独立しました。
── 僕はFukulowさんのブログを前々から知っていて、「DRESS CODE.」のファンなんです。この間ブログで紹介されていたUNIQLO Uのダスターコートも買ってしまったくらいです(笑)。
Fukulow:
おー! 嬉しいですね。
── ブログはどういう経緯で始めたのですか?
Fukulow:
「monograph」というブログを運営している堀口さんという方が、きっかけです。彼とは前職の同期で、僕がまだ大学生で内定者懇親会のときに知り合いました。
彼がブログをやっていると教えてくれたので、僕も始めたんです。もともと大学時代から独立志向というか、なにかひとりでやってみたいという気持ちは強かったので。
── ファッションをはじめ、Fukulowさんのお金に対する考え方を知りたいので、子どもの頃から順番に聞いてもよいですか。
Fukulow:
子どもの頃は、家が裕福じゃなかったんですよ。
小学校3年生くらいのときに両親が離婚して、母についていったんですけど、3人兄弟だったのを母が女手一つで育ててくれました。
ただ、ヘルパーだった母が働きながら勉強して看護師になって、大学まで行かせてくれたので、全然不自由とかはなかったですね。
── お母さんの家庭への責任感と愛情がすごいですね。お年玉とかもらったりしていましたか?
Fukulow:
お年玉は・・・あんまりもらっていた記憶がないんですけど、貯金して大きいものを買う、ということをしていましたね。
今でも覚えているのは、MDコンポですね。僕、MDコンポが大好きだったんですよ。MDって10色くらいのパックで売っているじゃないですか。
── そうでしたね。5色のものがふたつずつ入っているとか。
Fukulow:
そうですそうです。あれを「このアーティストにはこの色」といった具合で揃えたりするのがすごく楽しくて。
MDからMDに移せるちょっと高性能なMDコンポを買って整理するのがすごく好きでした。
そういう整理整頓みたいなことは昔から好きでしたね。部屋が散らかっているとイライラしちゃうんです(笑)。
── 中学校くらいのときですか?
Fukulow:
そうです、中学のとき。中学の頃は、大阪の西成区っていうあまり治安のよくないところに住んでいたんですけど、中学・高校時代はそこで過ごしていました。
── 高校時代はバイトとかしていましたか?
Fukulow:
バイトはしていなかったですね。高校は勉強と部活だけ。うちの高校は部活動がすごい活発で、僕はバレーボール部で主将をやっていたんです。
高校時代はずーっと部活。だから、部活を引退したらすぐ勉強しました。高校時代は遊んだ記憶がないですね。学校帰りにファミレスやゲーセンに寄るとか一切なかったです。
忙しい高校時代でした。
── 大学には、実家から通っていたんですか?
Fukulow:
そうです。その前に僕、一年浪人しているんで、アルバイトをしながら予備校に通っていたんですよ。
アルバイトをしながら勉強をして、一年後に自分で予備校のお金は返しました。
平和主義な性格もブログで垣間見える
── ここまでお話を聞いて・・・どうしてそんなに優秀なのかな、と(笑)。ご両親が離婚したり、治安のよくない地域に住んでいたり、環境によってドロップアウトしちゃう人ってたくさんいますよね。
Fukulow:
僕は昔からけっこう平和主義だったなと思います。兄弟の中でも一番平和主義で、「間を取り持つ」という役割を期待されていたのかなって。その役割をやりたかったんだと思います。
── 兄弟構成をお聞きしてもいいですか?
Fukulow:
3人兄弟の真ん中です。あとは兄と妹ですね。
お兄ちゃんが思春期の頃、反抗期があって。親に迷惑かけているなぁと思いながら中学時代を過ごしていました。
僕はそれを反面教師にして、人には迷惑かけたくないし、あんまり自分の悩みとか弱みを見せるのっていやだなって考えていましたね。
僕に時間を割いてもらわなくてもいいかなって。どんどん自分で自立していこうという考えになっていった気はします。
── 悩みを人に話さないタイプなんですね。
Fukulow:
親や兄弟を含め、本音をそんなに全部言える人っていないですね。
「この人にはこの話」というふうに、仕事の話ならこの人に言えるけど家のことは言えないな、とか。包み隠さず全部言いたいとは思わないですね。
── 言いたくないという気持ちですか?
Fukulow:
そうですね・・・なんか言ったところで良いことはあるかな?と思っちゃいますね。
たとえば僕がくいしんさんに相談をして、すごく親身になって相談を聞いてもらったとしても、たぶんやってくれるって限界があるじゃないですか。
だけど、本音を話すとそれ以上要求しちゃいそうなんですよ、僕は。
だから最初から期待しないほうがいいかなって。そういうところ、自分のことあんまりいい人間じゃないかもって思います。
── でもそれっていいことじゃないですか。自立しているってことだし、他人に迷惑をかけていないし。
Fukulow:
兄を見ていると、やんちゃをしているのにめちゃめちゃ可愛がられるんですよ。
僕は年上の男の人とかけっこう苦手で。
ちっちゃい時からお父さんがいないから年上の男の人と何を話したらいいのかわからなくて、こういう性格なので、とても気を使ってしまうんですよね。
── 気構えちゃうんですね。
Fukulow:
たしかに僕も、上になった時は、ちょっと迷惑かかる後輩のほうが可愛いなと思うんで。
僕みたいな後輩がいたらあんまり可愛くないな、と思いながらもこういう性格です(笑)。
── 僕はFukulowさんのブログの内容ももちろん好きですけど、文体がすごく好きで。それって次男っぽさというか、自分よりも目線が高い人にも低い人にもわかりやすい親近感があるからかなって今お話を聞いて思いました。
Fukulow:
なるほど、おもしろいですね。僕はあまり自分の考えを押し付けたくないっていうのはあります。
ファッションブロガーさんでも「これです、これが買いです!」みたいな人も多いじゃないですか。
それもカッコいいなぁと思ったりするんですけど、自分はそうじゃなくていいかなーとは思いますね。
いいモノって因数分解できるものじゃない
── ファッションに関して、流行を追うことはしないですか?
Fukulow:
服は好きなので、もちろんよく買うんですけど、流行だから買うことはないですね。むしろそういう買い物の仕方はちょっともったいないなって思っちゃいます。
自分の価値観に従って買うのが一番理想なので「流行だから買う」はお金の使い方としてあんまりよくないんじゃないかなって自分の中では思っています。
── では、Fukulowさんの服を選ぶポイントはなんなんでしょう?
Fukulow:
明確に「これ」というポイントではなくて、細かいところですね。
一見普通だけど、店員さんの話を聞いたり、商品自体を調べていくうちに「実はこの部分がこうだった」というちょっとしたポイントにグッとくることが多いですね。
── 衝動買いみたいなことはしないんですか?
Fukulow:
それはないですね。即決はしない。
ひとつのモノを買うのに、めちゃくちゃ調べます。調べて何回もお店に行って買うタイプ。
だから1着1着いつどの店で買ったのか全部覚えてます。ちゃんと調べて買いますね。
── そんなFukulowさんにとって、人生で一番高い買い物はなんでしたか?
Fukulow:
一番高いものは、去年30万ぐらいの鞄を買ったんですよ。多分ブログにも書いたと思うんですけど、MARNI(マルニ)っていうイタリアのブランドのレザーバッグです。
恰幅のいいサラリーマンが使ってそうな、ブリーフケースのちょっと幅があるような鞄です。それがいい皮を使っていて、ブランド自体もいいブランドだなって思って買いました。
あと、その鞄は全体が皮でところどころ金属のパーツがついているんです。そこが金色なんですけど、あんまり”キンキラキン”になっていなくて雰囲気に合うようにアンティークゴールドに燻しているんですよ。
そういうちょっとしたポイントにグッときました。
参考:物を選びきるということ。MARNIのメンズ トランクバッグを購入しました。
── 子供の頃から貯金しておっきいものを買うことが好きっておっしゃっていましたが、そういうお金を使うときのスタンスは今も変わらず、ですか?
Fukulow:
欲しいものがあったらバンバン買っちゃうタイプなんですけど。でも、一番いいものを欲しいなって思っちゃうんですよね。
欲しいと思ったら、そのものじゃなきゃダメなんですよ。これいいなと思ったら「これと同じものでもっと安いのがあるよ」とか言われても、まったく興味ないんですよね。
そうなると必然的にいいものになっちゃうというか。昔から安物買いはしないタイプでしたね。
── 安物買いはしない、という根幹はMDコンポを買っていた子供時代と同じなんですね。
Fukulow:
「いいモノ」って因数分解できないと思ってるんですよ。
色と、スペックと、どこかひとつとっていいモノじゃなくて、すべてが揃って完成されていいモノなわけで。
そこからなにかひとつだけ抜き出して価格だけ抑える、みたいなことはできないと思います。完成されたものとして、その能力を評価して好きになったものを買いたいです。
── なるほど。じゃああんまり無駄遣いした、という経験はないですか?
Fukulow:
今思えば大学時代に服をたくさん買っていて、そういえばあれ全然着なかったな、とかはありますね。でもあんまり後悔はないですね。
たぶんその時は嬉しくて買ったんだろうし、そのときはそのときで良かったんだからいいかなという気がします。
お金がもったいないなっていうよりも、それで何を経験して、どうやってお金をもっと稼ぐか、みたいな考えのほうがいいかなって思っています。
節約という考えも、あまりないタイプですね。
ファッションとインテリアの繋がり
── 服以外だと、現在はどんなことにお金を使っていますか?
Fukulow:
衣食住の中では、食にはけっこう無頓着で。インテリアもけっこう好きです。服とインテリアのふたつにお金をかけてますね。
── たとえばこれから今よりも何倍も稼いだとして、手を伸ばして買いたいモノとかありますか?
Fukulow:
家には興味ありますね。僕はすごいインドア派なんですよ。
家でやることはネットと読書とブログくらいですが、自分の家が一番落ち着きます。
だから、おしゃれな家が欲しいなって思うことはありますね。住環境は大切だと考えてます。
── 家やインテリアというのはどこから出てきた興味なんですか? または、ファッションと繋がる部分ってあったりするんですかね。
Fukulow:
あー、どうかな。繋がる部分があると思います。ファッションが好きなのは、着るのも好きですけど、何より気分が上がるから好きなんです。
── 家やインテリアも一緒ですか?
Fukulow:
うん、家もそうですね。整理整頓も同じなんですけど、綺麗でお気に入りのものがあればテンションが上がります。
服もインテリアもひとつの作品として好きなんです。逆に家でゆっくりする瞬間とか、経験にはあんまり興味ないかなっていう。
── なるほど。僕は逆ですね。「空気」が好きです(笑)。
Fukulow:
僕は全然そっちじゃない。だから食に興味ないのも、食べて一回入れちゃったらもう終わりじゃないですか。ずっと視覚的に残っていくもののほうがいいですね。ずっと一緒に居れるし。
── モノをつくる人も好きですか?
Fukulow:
いや・・・極論ですが、僕はあまり人好きじゃないかもしれないです(笑)。
人よりも、人がつくったモノのことを好きですね。
人って予測できないし、いろんな面があると思うんですけど、その人が作ったモノはもうそこから動かないし、だけどその人の心は伝わってくるじゃないですか。
── 僕は、何か製品をつくっている職人さんとかに話を聞くと、最終的にはモノよりその人がどういう気持ちかってところが気になっちゃったりします。
Fukulow:
なるほど。僕はもう「このモノ」が好きなので、たとえばその人が休日にゴルフをしていたとしてもそこには全然興味ないんですよ。
人なんでいろいろあると思うんですけど、この作品に向き合っているときのその人が好きなんです。
モノを買うとき、言いたいことはいっぱいあるはず
── Fukulowさんのブログは、一つひとつのモノのよさをFukulowさん自身の等身大の言葉で伝えていますよね。
Fukulow:
ありがとうございます。やっぱり自分でいいと思ったものを買うのがいいし、そもそもファッションに正解はないと思っているので、「僕はこれ買いました」でいいと思っているんですよね。
── あっ、僕はそこに共感しているのかもしれないです。ファッション好きなだけだったら他にも雑誌とかZOZOやWEARがあるわけじゃないですか。そんな中、自分がブログで見せていきたいなと思う部分ってありますか?
Fukulow:
これまでの話と重なる部分があると思うんですけど、まず服を買うときに絶対理由があると思うんですよ。金額とブランドだけで選ぶかというと、そうじゃないと思っていて。
── MARNIの鞄を買われたときも、グッときたポイントと下調べしたというお話でしたもんね。
Fukulow:
そうそう。やっぱり試着したときのフィット感とか、自分の中のこだわりポイントがあるはずで。
雑誌を含む多くの情報メディアって「価格とブランドと買った店」。この3つくらいの一面的な情報しか載ってないと思っていて。
── そこを自分が教えていきたいですか?
Fukulow:
うーん・・・人にファッションを教えるのも特に興味なくて。ファッションって、教えるものじゃないと思うんですよ。
なぜなら、正解はないと思っているから。
もっとみんな自由に服を着たらいいと思うし。僕のブログでは普通のメディアじゃ表に出ない情報を、僕の価値観で載せていきたいと思ってます。
服って、スペックで買うわけじゃないんです。その服の持つ魅力と自分の価値観の組み合わせで買うものだと思っていて。
僕自身、ファッションがすごく好きなので、僕がファッションを楽しんでいるのを見て、ブログを見にきた人が「ファッション楽しそうだな」って感じてくれたらいいなぁと思います。
インタビューした感想
「DRESS CODE.」が他のファッションメディアやブログと違うと感じられるのは、Fukulowさんの「人に押し付けたくない」「自分が一番いいと思ったものを買うべき」といったファッションに対する自由な考え方が反映されているからだと感じました。
モノに対する愛情を、お金を使うことによって洗練させてきたからこそ、一つひとつのモノについてこだわりを持って記事をつくれるのだと思います。
好きなことを伝えようとするとき、正解を提案するのではなくて、自分自身の楽しんでいる姿をたくさん見せていく。
この考え方は、誰の選択肢も狭めることなく、むしろ「好きなものを自由に楽しんでいい」という優しさが感じられます。
日々、メディアや記事をつくっていく上でも、見習いたいなと感じた姿勢でした。