学生時代にパチスロで稼いだ200万円。その使い道は「オタクに会いに世界を回る旅」でした

学生時代に、世界一周やバックパッカーに憧れ、世界へ飛び出して行く学生たちを私は何人も知っています。

ただ行きたい国へ自由に巡って回る旅もとても楽しいものですが、旅にテーマを持たせて、その切り口で各国を回るのも、また違った視点のおもしろさがあるように感じます。

今回取材を行ったAさんは、後者の旅をした学生さんの一人。海外×アニメの切り口で各国のオタクたちと交流し、サブカルチャーの現場を探りながら25カ国を周遊した経験があるという猛者です。

そんなAさんも、4月から社会人。好きを仕事にする方法と、学生なのに思い切って旅立った2015年の旅のこと、そしてちょっと変わった(?)お金の稼ぎ方を、教えていただきました。

大学生のAさんインタビュー

インタビュー日:2017年1月18日(水)

ノマド的節約術インタビュー

── お久しぶりです!

Aさん:
お久しぶりです。

── 今は大学・・・何年生でしたっけ。

Aさん:
4年生ですね。4月からは社会人です。

── そうか、4年生か。2014年ごろに別の媒体で一緒にお仕事をしていたことがあるけど、その頃のことがつい最近のようです。Aさんがライターで、私が編集者の一人でした。

Aさん:
そうですね。あの媒体をきっかけに、他のサイトでサブカル系の記事を書く仕事をもらうこともありました。

── 改めて、今日はAさんの生い立ちからお金に対する価値観まで伺いたいと思っているのですが、最初に簡単に自己紹介をお願いできますか?

Aさん:
はい。今は大学4年生なんですが、学校では「日本文化を知って、世界へ発信しよう」という趣旨の勉強をずっとしていました。

1、2年生の頃は英語をしっかりやって、そのあとは日本の企業のことやインバウンド観光のことについて勉強していたんですけど。

で、2015年の4月から12月までの8ヶ月間、大学を休学して世界各地を旅していました。

── 旅に出ようと思ったのは、どうしてだったんでしょうか。

Aさん:
当時、僕は大学3年生だったので、順当にいくと就活をしていたんだろうと思うんです。

でも僕が大学2、3年生で大学の外でライターとして記事を書いたり取材をしたりしようと思えるようになったのは、ある程度お金に困っていなかったからだなって思っていて。

── ふむふむ。

Aさん:
お金に余裕があったからこそ、ライターとしての稼ぎはそんなに多くなくても、投資しよう、チャレンジしようと思えたというか。

同じように、就活を目前にした頃、当時持っていた貯金をずっと使わず貯めておくよりも、何かに投資しようと思うようになったんです。

── お金があったからこそ、視野を広げて旅にチャレンジしようと思えたと。ちなみに、旅にかかった資金はどれくらいだったんですか?

Aさん:
200万円くらいの貯金があって、それを旅の資金にあてましたね。

── 旅に出ようと決めたのは・・・?

Aさん:
2015年になってすぐだったので、旅に出る2、3ヶ月前に「行こう」って決めました。

── すごいですね。確かにお金があれば、「いいな」「やりたいな」と思った時の行動の選択肢の幅が広がるなと私も思います。

大学1年生以降、アルバイトはしていません

── ズバリ気になるので聞いちゃいますが、その旅資金はどうやって貯めたんですか?

Aさん:
パチスロで稼ぎました。

── そんなにサクッと貯まるものなのですか? 私パチスロやったことがないから感覚が全然わからなくて・・・。

Aさん:
そうですよね(笑)。

細かいことを話し出すと本当に長くなってしまうんですけれど、コツのようなものがあってそれさえ分かれば、当てて稼ぐことはできますね。

── へぇー! ちなみに現在はアルバイトはしていないんですか?

Aさん:
していないですね。

── 今までは?

Aさん:
大学1年生の頃はバイトばっかりやっていて3つ掛け持ちしていたんです。

学生だから103万円以上稼ぐと扶養から外れてしまうのに、稼ぎすぎてしまって103万円ギリギリまでいきました。

だから、お金がないのにバイトができないという状況になってしまって。

なんとかしてお金を稼ごうか考えたんです。

その結果パチスロに行き着いて、やってみたら稼げることに気づいて、今まで続けているという感じです。

── なるほど。お小遣いはもらっていなかったんですか?

Aさん:
もらっていたかな・・・。

祖母の家が実家から車で1時間くらいのところだったんですが、小学生の頃は毎週末行っていて。

欲しいものがあった時は、おばあちゃんが買ってくれていた気がしますね。

中学以降は、ヤフオクでものを売って稼いだり、レアカードをサーチして引き当てて、売りさばいたりしていましたね。

── サーチ?

Aさん:
袋にレアカードが入ってるのが分かるんです、指先の滑りで。

── おお!?

Aさん:
例えば「新しいカードが発売されます」という告知が出たら、深夜の3時とか4時くらいに自転車で近所のコンビニに行きまくるんです。

少し前は、お客さんが棚からカードを選べるように売られていたから、レアカードを買いまくって売りさばいていました。

ほんと、我ながらダメなやつだと思うので良い子はマネしないで欲しいですね・・・。

日本のカードゲームは世界の人が遊ぶ最強のアナログツール

── そこで得たお金っていうのは、何に使っていたんですか?

Aさん:
アニメや漫画関連のものですね。

映像作品ならブルーレイディスクを買ったり、ライブがあったらチケットを取って行ったりとかしていました。

ただ、ストラップとかキャラクターグッズといったような物は、大学2年生くらいからあんまり買わなくなっていきましたね。

── どうしてですか?

Aさん:
まったく買わないわけではないんですけどね、数はすごく減りました。

アニメって基本的に3ヶ月ワンクールで、毎クールで60本とか70本くらい新作が出るんです。

もちろん良い作品もあるんですが、それだけ数が多いと次から次へと新作アニメのグッズを買わなくちゃという気持ちになってきて、刹那的な消費が増えてしまうような気になりました。

「2、3年先も同じ作品を好きだと言えるかな」って疑問に思うようになってきて、だんだん買わなくなってきたって言うのはありますね。

ただ、昔からカードゲームが好きだったんですけど、去年(2016年)の頭くらいからカードゲーム熱が再燃しまして。去年はほぼそこにお金を使っていました。

── カードゲームというと、わたしは弟に付き合わされて遊んだ遊戯王くらいしか思い浮かびませんが、ああいう感じのゲームですか?

Aさん:
そうですそうです。僕も、遊戯王には中学生の頃にめっちゃハマっていました。

── カードゲーム熱が再燃したのはどうしてですか?

Aさん:
2015年に海外を回っている中で、再燃したんですよね。

いろいろな国を回る中で、海外での日本のサブカルチャーを見て回ろうと決めて旅をしていたんです。

── 旅のテーマを設定したと。

Aさん:
はい。

インバウンドの事業やメディアの勉強をしていたら、アニメ業界で働いている人たちと関わる機会が増えていきました。

そのうち「海外×アニメの切り口って意外と需要があるんだな、あんまり知られていないのかもな」って気がついて。

そのコンセプトで海外回ったらおもしろそうだと思って、海外のアニメイベントや漫画が好きな人たちが集まるオフ会に行くことに決めました。

── 全部で何カ国くらい回ったんですか?

Aさん:
全部で25カ国くらいです。

各国で開催されているアニメのイベントとかに参加したり、現地のゲーセンとかカードショップも行ったりしましたね。

その中で、日本のカードゲームで遊んでいる人たちがたくさんいることに気づいたんです。

英語とか韓国語、イタリア語とかに翻訳されているカードとか、現地にローカライズされているカードとかもあったんですけど、日本語のカードでも気にせず遊んでいる人たちがいて。

その光景を見たときに、「何だこのアナログツールは!」ってびっくりして、僕自身もまた遊び始めたという経緯があります。

カードゲーム
↑ カードゲームをしている様子(撮影:Aさん) ↑

── バトルしたんですか?

Aさん:
いや、その時は持っていなかったんですよ。だからカードを持って回っていたら、もっとおもしろかっただろうなって思います。

── 海外で、日本のカードゲームが言語を超えて遊ばれている様子を見て、また自分もやってみようと思うようになったということですね。

Aさん:
はい。

で、帰国後すぐに、ある大手の会社が新規のカードゲームをリリースするという情報を聞きつけました。

僕自身、遊戯王とかデュエルマスターズとか、昔からあるカードゲームはやっていたんですけど、ゼロから立ち上がったカードゲームはやったことがないなって思って、新しいゲームも遊び始めたら大会とかにも出てみようと思うようになって、ハマっていきましたね。

── カードゲームのプレイヤーとしてのおもしろさって、どんなところにあるんですか?

Aさん:
カードゲームのタイプって大別すると、自分のターンで完結するゲームと、相手のターンに割り込めるゲームがあるんですよ。

僕は相手のターンに割り込めるゲームが好きで。

自分のターンで終わるゲームって、あんまりコミュニケーションが生まれないんですけど、相手のターンに割り込めるゲームだと、あるゲームの効果の発動に対して「これ良いですか?」って相手に確認するコミュニケーションが生まれるんです。

中には相手のターンの動きを封じることができるカードデッキがあったり、自分が考えたことが相手とのキャッチボールで拓けていくような感覚があって、それが楽しいなって思います。

── 本当に世界のどこへ行っても、日本のサブカルチャーとかアニメ・漫画が好きな人たちっていますよね。現地の人はどういう年齢層の人たちが遊んでいたんですか?

Aさん:
現地で遊んでいるのは小学生くらいの子から、僕より年上の30代、40代くらいの人までいましたね。

ちょうど先週、あるカードゲームの世界大会の決勝戦があったんですけど、そこでは中国、マレーシア、アメリカ、イギリス、シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピンとかいろんな国の人たちが集まっていて、みんなだいたい僕の同世代くらいでした。

── 旅先で印象に残っている“世界のオタク”っていますか?

Aさん:
そうですねぇ。アニメのイベントにはちょくちょく足を運んではいたんですけど、イベント自体は国が違っても、お店が出てゲストが来てトークしたりして日本のイベントとあんまり変わらない気がします。

コミケの様子

イベントの様子

↑ 参加したイベントの様子(撮影:Aさん) ↑

Aさん:
印象に残っていることでいうと、インドネシアのバイクの所有率が世界的に見てもすごく高いんですが、そこへ行った時にびっくりしたのは、『ラブライブ!』って作品が好きな人たちの集会に行った時ですね。

現地へ行ってみたら、自分のバイクをアニメのキャラクターのステッカーとかでデコってる人たちの、いわゆる痛バイクと呼ばれるバイクが、ズラーっと並んでいて。

「これはすごいな」って思いました。

── それは全部自分のオリジナルというか自前で作ったステッカーなんですか?

Aさん:
自作している人がほとんどだと思いますね。

あ、あとフィギアを取り付けている人もいました。

── そういうグッズってやっぱり日本で買うより高いんですか?

Aさん:
正規で輸入されたものを買うと、カードゲームも日本で買うより1.5倍くらいの値段はしますね。

日本だとだいたい5枚入りで150円とかのものが多いんですけど、強いカードになるとシングルカードといって、1枚単位で買えるんですが、シングルカードは日本で買うと1枚2,000円とか3,000円とかするものもあるんですよ。

── 高っ。それは輸出すると倍額くらいしそうですね・・・。

Aさん:
(オタクの)ライトな層って、オンライン上でアニメを見るだけで完結してしまう部分も少なからずあって。アニメだけ見て、グッズとかは特に買わないような。

そういう環境の中で、アナログなカードゲームを買って遊んでる姿を見ると、カードゲームの可能性を感じましたね。

お金で買えないものはない

── 大学で日本文化を発信する勉強をしていて、Aさん自身もサブカルチャーが好きで、今後もやっぱりそういうアニメ×海外で仕事をしていきたいという気持ちはあるんですか?

Aさん:
そうですね。就職先もそういうことができる場所を選んで内定をいただいたので。

── 月給をもらう生活っていうものが、4月から初めてということなんですね。

Aさん:
はい、まずは社会のシステムを知ってみよう、という。

── 社会人になったら欲しいものとか、ありますか?

Aさん:
うーん・・・。

昔からなんとかしてお金を稼ぐ方法を自分で見つけていたから、なんとなく自分はお金で困ることはないだろうなっていう根拠のない自信があるんですよね。

だから、何かを欲しくなったら、今すぐは買えなくてもお金を稼げば買えるから買えないものはないって思っているんです。

── なるほど。

Aさん:
あ、強いていうならPSVRが欲しいです。市場に出ていないから買えないけれど。

── 欲しいものが特にないとしたら、こんな生活がしたい、という希望はありますか?

Aさん:
少し近い未来の、1〜2年後の話でいうと、海外のどこかで暮らしてみたいですね。

僕、高校時代は3年間オーストラリアに留学していたんですけど、当時は僕が暮らしていた街にアニメのファンとか趣味の話をできる友達がいなくて。

留学中もずっと一人で部屋にこもってアニメを見ているような生活で、本当にいつも日本に帰りたいと思っている毎日でした。

でも今なら、海外にもアニメ好きな人とかカードゲームで遊んでいる人がいるだろうし、海外にいるアニメファンと楽しく遊べるんじゃないかって思っています。

── 海外に行くのは、そう遠くない未来でできそうですね。4月から新社会人、応援しています。ありがとうございました!

【編集後記】インタビューした感想

取材中、パチスロで勝てるコツを教えていただいたのですが、確率を緻密に計算すれば勝機をグンとあげられるのだということを初めて知りました。

ですが、わたしはその計算に頭が全然追いつかないので、パチプロは向いていなさそうだなとも感じました。

わたし自身は、お金を理由にやりたいことを諦めるというのはとても不本意で、やりたくないと決めていることなので、Aさんの「お金で買えないものはない」という意見に、少し同意する部分があります。

日常生活において、今の自分が置かれている状況から、できることを見つけて実行に移す力というのはどんなシーンでも必要な気がします。制度やルールに文句を言ってばかりでも、やりたいことや欲しいものは近づいてきてくれません。

お金がないなら、稼げる方法を考える。思い切って環境を変える。そんな風にしてチャンスを自分に引き寄せることが、幸せへの第一歩のように思います。

ノマド的節約術の裏話

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この記事を書いた人

1991年生まれ、静岡県出身の編集者。これからの暮らしを考えるメディア「灯台もと暮らし」の執筆、編集を担当。いつか書道教室をひらくのが夢。