信用取引をしていると、売買できる銘柄に「信用銘柄」と「貸借銘柄」という2種類の名前が付いていると思います。
しかし、それぞれにどんな特徴や制限があるのかは初めてだとイメージしにくいのではないでしょうか。
信用銘柄と貸借銘柄のことは、これから信用取引をしていくなら、知っておいたほうがいいことになります。
そこでこのページでは、信用銘柄と貸借銘柄の違いや、それぞれどんな特徴があるのかについて紹介していきますね。
そもそも信用取引とは?
まずは、信用銘柄と貸借銘柄について詳しく説明する前に、ざっくりと信用取引についておさらいしましょう。
信用取引とは、自分のお金や株式を担保にして証券会社から借金をしながら行う株取引です。
最大約3倍もの資金を借りることができるので、元手が少なくても高額な株の売買ができます。
ただし、信用取引はハイリスク・ハイリターンで、メリットとデメリットをしっかり理解してから手を出さないと大きな損失になる恐れがあるので慎重に行いましょう。
信用取引についてもっと詳しく知りたいなら、下の記事にまとめているので始める前に読んでみてくださいね!
また、信用取引には制度信用取引と一般信用取引のという2種類の方法があって、信用銘柄と貸借銘柄が使われるのは制度信用取引です。
制度信用取引では、証券取引所が決めた基準をクリアした銘柄だけ取引できます。
しかし、一般信用取引では上場されている銘柄ほぼ全てが取引対象です。
一見、一般信用取引のほうが良さそうに感じますよね。
しかし、厳しい審査をクリアした銘柄ばかりが集まる制度信用取引ならより安定した取引ができるという強みがあるんですよ。
信用銘柄とは?
信用銘柄とは、制度信用取引で買建はできるけど売建はできない銘柄のことです。
ちなみに、買建とは「信用買い」とも呼ばれていて、証券会社からお金を借りて買った株を売買する取引方法のことです。
また、売建は「信用売り」とも呼ばていていて、証券会社から株を借りて売買して差益を狙う取引方法をいいます。
信用銘柄に選ばれるためには、下の項目をクリアしなければいけません。
- 上場後、最初の約定値段が決定していること
- 直前事業年度で、債務超過でないこと
他にも、当然ですが上場廃止見込みの銘柄や猶予期間になっている銘柄は外されてしまいます。
また、監理銘柄・整理銘柄・特設注意市場銘柄・規制銘柄になってしまった場合も、信用銘柄にはなれません。
信用銘柄になるには、企業の業績がよほど安定していないといけないんですよね。
ちなみに、信用銘柄は別名、「非貸借銘柄」や「貸借融資銘柄」、さらには「制度信用銘柄」とも呼ばれています。
紛らわしいですが、どれも同じ意味なので気をつけてくださいね。
貸借銘柄とは?
貸借銘柄とは、制度信用取引で買建も売建も両方できる銘柄のことで、信用銘柄の中からさらに厳しい基準で選ばれます。
貸借銘柄に選ばれるためには、下のような基準をクリアしなければいけません。
銘柄 | 信用銘柄 | 貸借銘柄 |
---|---|---|
流通株式の数 | 基準なし | 2万単位以上 |
株主数 | 基準なし | 1,700人以上 |
信用銘柄になるだけでも大変なのに、貸借銘柄に選ばれるのはさらに狭き門だということが分かりますよね。
実は、審査項目はもっとたくさんあるんですが、専門用語が多すぎて難しくなり過ぎてしまうので、ここでは割愛させてください。
他には、企業業績や売買高・値付率などに厳しい基準が設けられています。
選定基準が厳しい分、貸借銘柄の数は他の取引に比べて少ないです。
しかし、銘柄の信頼性は証券取引所のお墨付きなので、信用取引をするなら貸借銘柄にすれば長く安定した運用が期待できますよ!
信用銘柄と貸借銘柄の数はどれくらい?
制度信用取引で売買できる銘柄の数は、上場しているほぼ全てが対象な一般信用取引よりもかなり限られてしまいます。
具体的には、2018年末の時点で以下のような数です。
市場第1部 | |
---|---|
信用銘柄 | 貸借銘柄 |
2,128(99.9%) | 1,824(85.6%) |
市場第2部 | |
---|---|
信用銘柄 | 貸借銘柄 |
493(99.8%) | 142(28.7%) |
マザーズ | |
---|---|
信用銘柄 | 貸借銘柄 |
276(100%) | 48(17.4%) |
JASDAQ | |
---|---|
信用銘柄 | 貸借銘柄 |
724(99.7%) | 131(18.0%) |
%で表しているのは、その市場で上場されている全銘柄の数と比べたときの割合です。
さすがに1部は貸借銘柄が8割以上ありますが、他では3割以下という少なさなのが分かりますよね。
ちなみに、このデータは日本取引所グループのページで見ることができます。
最新の選定・取消の情報も確認できるので、制度信用取引をするなら都度チェックしてくださいね!
取消の基準は?
制度信用取引をしている途中に、持っていた銘柄が対象から外れてしまったら困りますよね。
そうならないために、あらかじめ取消基準を知っておけば不安も少ないですよ。
具体的な基準は、下のようになっています。
銘柄 | 信用銘柄 | 貸借銘柄 |
---|---|---|
流通株式の数 | 基準なし | 1万単位未満(猶予期間1年) |
株主数 | 基準なし | 1,200人未満(猶予期間1年) |
その他 | 株券上場廃止が決定した銘柄、債務超過となった銘柄 |
さらに、日本取引所グループのページでは、最新の取消された銘柄名やこれから取消される可能性が高い「貸借選定取消猶予期間入り銘柄」も見ることができるので、まめに覗いてくださいね!
選定も取消も、新規上場する時と決算期に合わせて決まります。
持っている銘柄の決算期が近づいてきたら、制度信用銘柄基準や貸借銘柄基準から外れていないかを都度チェックしましょう。
さいごに
制度信用取引をする前には、必ず欲しい銘柄が貸借銘柄になっているかを確認したほうがいいですよ!
信用銘柄に入っていればどれでも買建はできますが、貸借銘柄になっていないと売建ができないので困ることがあるからです。
残念ながら、信用取引のすべてで売建だけができる取引はありません。
特に株主優待を狙って空売りをする時には、気をつけてくださいね。
もしも、欲しい銘柄が信用銘柄でも貸借銘柄でもなかったら、一般信用取引で対象になっていないかチェックしてみてください!