突き詰めたいものだからケチらない。好きな文房具で自分と誰かを幸せにしたい|文具プランナー・福島槙子さん

文具プランナーの福島 槙子(ふくしま まきこ)さんは、ウェブ・雑誌問わずさまざまなメディアや自身のTwitter、ブログにて、大好きな文房具のことを発信しています。

福島さんが届ける文房具のお話は、もの自体のよさだけでなく「どんな人に使って欲しいか」「どんな楽しみ方があるのか」を提案しているところがとってもおもしろいんです。

福島さん自身は、子どもの頃からの文房具好き。

今回はそんな文具プランナーの彼女に「好きなことでどうやって仕事を作っていったのか」「お金の価値観はどう変化していったのか」についてお聞きしました。

福島さんインタビュー

インタビュー日:2017年8月10日
文具プランナー福島槙子さん

文具プランナーとしてやっていること

── ヨミウリオンラインや多くのウェブ媒体に寄稿するだけでなく、ご自身も取材を受けたりとお忙しい中、今日はお時間作ってくださりありがとうございます。まずはじめに、福島さんの自己紹介を簡単にお願いします。

福島槙子(以下、福島):
1986年生まれ、埼玉県本庄市出身です。

毎日、文房具。」というウェブメディアの副編集長を務めており、文具プランナーという肩書きで、ひとりひとりの暮らしやニーズに合った文具の選び方・楽しみ方を提案しています。

今はテレビや雑誌に出演したり、文房具の売り場を作ったりするようなお仕事もいただいていて、文房具周りのお仕事を幅広くやっています。

── この間、リトルプレスも出版されましたよね。

福島:
そうなんです。リトルプレスはずっと出したいなと思っていたのですけど、毎日の仕事で忙殺されていて手つかずだったんです。

それで、「このままじゃダメだ、ちょっと自分を見つめ直したい」と思って着手したのが今年の6月。

子どもの頃から文房具が好きで、今は文房具周りのことに広く携わっているわたしだけど、「そもそもどうして自分はこんなにも文房具が好きなんだろう?」という疑問に立ち返ってみたくなりました。

だからタイトルが『どうしてこんなに文房具が好きなんだろう』なんです。

どうしてこんなに文房具が好きなんだろう

どうしてこんなに文房具が好きなんだろう

── このリトルプレス、デザインはどうされたのですか?

福島:
わたしは大学は美大で、もともと独学でPhotoshopを触っていたりしたので、写真もデザインも全部ひとりでやりました。趣味レベルですけれど。

── 多才なんですね・・・!

文具プランナー福島槙子さん

どうやって文房具を仕事にしたのか

── 子どもの頃から好きだったものを、趣味を超えて仕事にするっていうのはすごいことだと思うんです。だから、福島さんが「どうやって文房具を仕事に繋げていったのか」という過程に興味があって。

福島:
文房具の専門家としてメディアに露出したりしているせいか、もうずっと5年くらい文具プランナーをやっているように思われがちなのですけど、文房具がちゃんと仕事に繋がったのはここ2、3年なんです。

それまでは趣味の範囲で文房具を使っていたし、ずっとフリーランスのライター・編集者をやっていたので。

── それは、文房具を発信したいからライターをやっていたということですか?

福島:
いえ、全然関係ないんです(笑)。

文字を書くお仕事をするようになったのは、学生時代に体調を崩して自宅療養をしていたときに「何かを生み出したい気持ち」があったから。

それは趣味じゃなくて誰かのためになることをやりたかった。だからお金が発生する生産活動としてインターネットを使ってライティングを始めたんです。

子どもの頃から文章を書くことは苦手ではなかったので、はじめはランサーズなんかを使って、自分ができることでお金を稼いでいました。

最初は1記事300円とかで仕事を受けて、だんだん単価の高い仕事にも応募するようになっていき、1,000円、5,000円の記事を受けていけるようになりました。

仕事も増え、24歳の頃には実家の本庄から東京にひとり暮らしをするくらいには稼げるようになりました。

やっぱり300円でもやっていたという実績があったのが大きかったと思います。

文具プランナー福島槙子さん

── では福島さんは、社会人の最初からフリーランスのライターだったんですね。

福島:
そうです。でも一度だけ、1年間編集プロダクションで会社員をしていた時期があります。

── へぇ、フリーランスから会社員になられたのはどういう心境の変化だったのでしょう?

福島:
それまでアルバイトしかしたことがなかったから、やっぱり社会人経験というか一回は会社員をやってみたかったんです。

── やってみて、どうでしたか?

福島:
頑張ってもぼーっとしていても、もらえるお金って一緒なんだなとわかりました。

フリーランスはいくら時間をかけても成果物でしか評価されない。

わたしが1時間かかるところを別の人が30分で書いたらその人はわたしと同じ金額をもらえるし、いいものを作れないとお金は発生しない。逆をいえば、フリーランスは頑張った分だけ相応の収入に繋がる。

だから会社員をやって思ったのは、「こんなに働いてこれしかもらえないんだ」ってことでしたね。

それでもお金とか時間的制約以外の「気持ち」で繋がって、チームを組むことは好きだったんです。だから、会社員はやめても業務委託として編集のお仕事をやっていました。

── そこからどのように「毎日、文房具。」の副編集長や文具プランナーに繋がっていったのですか?

福島:
今の「毎日、文房具。」の編集長と出会って、「一緒に文房具メディアやろうよ」と誘われたのがきっかけです。お金儲けとかではなく、なにか自己発信できる場を持ちたかったんです。

それがわりとすぐにお金が発生するお仕事になっていったんですよ。雑誌の取材とか、文具レディというユニットを組んで活動したりとか。そこで「あっ! 文房具が仕事になる! 求められているんだな」と自覚できて。

好きなことだったから調べることも、そこに時間も費やすこともまったく苦がなく、楽しくやっていたら仕事になっていった感覚です。

── 特定のジャンルで発信するとき、「子どもの頃から好きで」という、知識と経験の貯金があるのは大きいですよね。

福島:
それはやっぱり、うん。そうだと思います。

文具プランナー福島槙子さん

文具プランナーの一品

── 今までで一番高い文房具のお買い物はなんですか?

福島:
たいして高くはないですけれど、ペリカンという会社が作っている「スーベレーン」というモデルの「スーベレーンM400」。これは37,800円。

スーベレーンM400

万年筆は上を見ると何十万とかの世界だからこれは万年筆の中ではそこまで高くないです。

── 今は、文房具に月どのくらいお金をかけているのですか?

福島:
毎月一緒の金額ではないのですけど、ならせば月3万円程度かと思います。

── 3万円!? すごく多いなと感じました。

福島:
ほぼ毎日買っているので(笑)。

日々の生活にそんなに贅沢は必要ないのですけど、文房具とか、自分が突き詰めたいものに関してはケチらないようにしています。

やっぱり全部を使って、その中の一番いいものや、その人のニーズに合ったものを紹介しないと伝わらないと思っているので。

それにわたし自身、大きいお買い物をするより、毎日少しずつ小さな幸せを積み重ねることを大切にしたい派なんです。

── これまでたくさんお文房具を購入してきたと思うのですけど、個人的にお気に入りの一品ってあったりしますか?

福島:
難しいですね・・・。

大切にしているものはけっこうあるんですけど、モンブランというブランドのビンテージの万年筆ですかね。これ現行品じゃなくて、キングダムノートというカメラや万年筆の中古品を扱うお店で買ったんです。

モンブランの万年筆

古くて誰が使っていたのかもわからないけれど、ものに年月が積み重なっている感じが好きなんです。

だから大学も、美術品や文化財の保存・修復の仕方について学ぶことができる美大に進みました。自分自身は作ることはできないけど、あり続けて欲しいという想いがあるので。

だからわたし自身も、文房具にまつわる歴史や人の想いを伝えていきたいなという気持ちです。

お金は自分を元気にするために使うもの

── 福島さん自身は今後、なにか挑戦してみたいことはありますか?

福島:
リトルプレスとはまた別に、そう遠くない未来に本を出せたらいいなと思っています。

── それは文房具についての?

福島:
そうですね、猫文具についての本を作りたいです。猫が好きなんです。猫の本はたくさんあるけど、猫と文房具の本はないから、作れたらいいなって。

それから、すぐにではないのですけど、小さな文房具店をひとつ持ってみたい気持ちもあります。

── 文具プランナーさんが営む文房具店ですか、素敵ですね。

福島:
ありがとうございます。

東京だけどちょっとあったかみのある下町みたいなところでやってみたいですね。生活圏だけどいい文房具屋さんがないところにあえて店を構えてみたい。

今は、売り場のプロデュースなんかもしていたりもするのですけど、「そもそもどんな文房具があるのか」「自分には何があっているのか」がわからない人ってたくさんいるということがわかったんです。

そういう人の相談にも乗ってあげたいし、できることがあれば少しでも文房具で幸せになってほしい。

── その場があったらたしかにいいですよね。もしもお店ができるとしたらセレクトショップのような?

福島:
たぶんそうなると思うのですけど、でも自分で文房具を作りたいという思いもあって。実はいまちょうどオリジナル文房具を製作中なんです。

文具プランナーの福島槙子さん

── いまお話ししてくださったような未来の構想がある中で、お金の使い方で心がけたいことはありますか?

福島:
わたし、お金に関してはけっこう刹那的なんです。

というのも、わたし自身が気持ちに波があるタイプで、毎日ずっとは元気でいられない人だというのが前提にあるのですけど。

そんな自分自身を励ますため、毎日を幸せに生きるために、使う場面ではちゃんとお金を使いたいと思っています。

たしかに貯金は大事だし、1ヵ月後に生きていくお金もないような状態はよくないと思います。だけど、今の幸せを潰してしまうこともいけないだろうなと思うんです。今が幸せじゃないと未来に繋がっていかないと思うから。

今の時代は、クラウドファンディングなどもあってお金を集める手段というのはいくらでもあります。

大人になっていくにつれてわかってきたんですけど、お金は頑張れば稼げるけれど、幸せは自分で作っていかないといけない。幸せだけは、お金では買えない。

だからお金にならなくても自分がやりたいと思った仕事、信頼関係を信じて受ける仕事というものを選ぶときがあります。

今後も、未来のためにお金を貯めたり運用方法を考えていったりするというよりは、未来に向かっていく今の自分を元気にするために、お金を使って行きたいという気持ちです。

ノマド的節約術の裏話

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この記事を書いた人

編集者・ライター。1995年生まれ、秋田県能代市出身。株式会社Wasei「灯台もと暮らし」編集部。野球しながら植物を育てています。