兵庫県西脇市でクリーニング事業を行っている東田ドライで、クリーニングの様子と担当者である東田さんにお話を伺ってきました。
東田ドライでは、宅配クリーニングの「リナビス」も提供しています。
どんな思いを持って、クリーニング事業を続けられているかを教えていただけましたので、宅配クリーニングの裏側はどんな思いがあるのかをこのページを通して知っていただければと思います。
取材は私(松本)と、カメラマンで守岡が同行しました。
クリーニングの様子と、リナビスの特徴である「おせっかい」が始まったきっかけは、以下のページで。
今回の取材の前編にあたります。
取材日:2015/8/4
東田さんのクリーニング・地元である西脇市への思い
東田伸哉(以下:東田):
ざっくりとは見えたと思いますが、クリーニングの様子はいかがでしたか?
── すごいですね。思ってた以上に、本当に手が込んでいるように感じました。
東田:
洗いも見ていただけたらよかったんですけどね。
うちが自然乾燥を選択してる理由っていうのが、もう一つあります。
シミといっても、いろんな要素のものがあるんですけど、熱が一回加わるとちょっと落ちにくくなってしまうんですよ。
洗濯機に入れ、乾燥機に入れたあとだと、もう熱が加わった後なんで、シミが取りにくくなります。
取れないこともないんですけど、すごく取りにくいんですよ。
そういった原因を少なくするために、まずは見て、しっかり洗っています。
それでも、見逃しが少なからず出てくるんですけど、自然乾燥することで熱が加わってないので、後でまた「あ、シミが残ってる」っていうのに気付いた時に、取る作業にまた戻れるという理由で自然乾燥しています。
手間がかかる作業で、ほとんどどこもやってないでしょうね。
普通だったら乾燥機に入れればいいのでしょうが…。
干す人もいるので、実際コストもかかります。
守岡裕志(以下:守岡):
そのやり方で、納期は何日ぐらいですか?
東田:
今は、出していただいた日を含めて5日です。
守岡:
本当に偶然なんですけど、ゴールデンウィーク頃に、楽天市場で総合ランキングに入っていた別の宅配クリーニングサービスを使って、その衣類がようやく一昨日(8/2)に届いたんですよ。
── えっ!?
守岡:
最初申し込んだ時は、「ちょっと混み合っているから、1ヶ月くらいかかります」って書いてたんですけど、ずーっと連絡がなくって。
こっちから2か月後くらいに連絡したら、「あと、1ヶ月かかる」という話でした。
東田:
最初のリナビスは、大手さんと同じサービスの形式で始めたんで、納期を完全に指定できる仕組みだったんです。
納期を管理する仕組みはもともとあって。
宅配サービスのクリーニングって、届けて欲しい日に来ないとそんなに便利じゃないなって、自分も思ってるので、管理する手間があったとしても、やっぱり指定した日付と時間に届けるご要望には応えたいと思っています。
守岡:
そこ重要ですね。
たまたま初めてだったんで、念のためにあんまり使わない服を入れて試したからよかったものの、これが頻繁に使う服だったら、相当ストレス溜まってたと思います。
会員数1万人にこだわる理由
東田:
そうですよね。
探して欲しいとなっても、取扱量が多いところは探せないでしょうね。
出てくるのは洗い上がるのを待つしかないってことになりますし…
僕は他社さんの状況は分からないですけどね。
うちは、僕が産まれた時からいるおばちゃんばっかりなので、僕のことも知ってるし、僕の父親が産まれた時からいる人もいるので、親密というか、田舎同士の付き合い、みたいな形はあるんですね。
リナビスを始める時に、安いサービスにはしたくないなって思っていました。
やはり自分がよく知ってる方達だし、仕事して欲しいと伝えたらしてくれますけど、どんな仕事をしていただくかは僕が作りだす仕事の質で変わってきてしまいます。
激安価格にして数多く集めて、過酷な労働を強いることもできると思うんですよ。
でも、それはしたくない。
会社としての収益も考えた上で数字を出すと、会員数が1万人前後と思っています。
それでも会社としては十分すぎるぐらいなので。
会員数が多くなったけど、その結果によって品質が下がってしまうのは避けたいですね。
「リナビスをずっと使ってたけど、最近仕上がり悪いなあ」みたいな感じにはしたくないので。
── それが、会員数1万人にこだわる、っていうところですよね。
東田:
そうですね。
何万人とか何十万人に向けたサービスとは一切思ってないです。
仕事が増えれば、工場の規模も広げていく選択肢もあります。
それよりも僕は、一緒に働いて来てくださる職人の方々や、今後新しく入ってこられる方といい関係を作って、お互いにとっていい職場環境を作れたら、と思ってるんですよね。
── 職人さんとっても、お客様にとっても、いい環境に、ということですよね。
東田:
安い宅配クリーニングって、今すごく増えてると思うんですよ。
楽天でもそうですし、結構現場はすごい大変だと思うんです。
僕自身はできないし、できないことを頼んでもしかたないですよね。
── そうなんですね。
守岡:
やっぱりユーザー目線でもそういうところって見え隠れするんですよね。
今回僕が頼んだところでも、やっぱりメール返信が遅かったりとか連絡が来ないと、相当過酷なんだろうなーっていうのが見え隠れして。
また次も頼もうみたいな感じになりにくいですよね、良心的にも。
そういう感情って少なからず発生するので、やっぱり従業員の方にとっていい環境であるのは、あまり前面に見せる必要はないと思うんですけど、ユーザーさんにとっても前向きな要素に映るんじゃないかと思います。
今日、拝見させていただいて、職人さんの集まりという印象がすごくあったので、この点はすごく前向きなポイントじゃないかな。
── 僕もそう思います。
東田:
40年以上は4人、20年以上だと半数以上。
僕が一番社内で若いです。
離職率が低いっていうのも自慢できるってとこかなとは思います。
そこは一番、長年やってきた結果だと思ってますね。
守岡:
昔は当たり前だったかもしれないですけど、今のこの時代に20年というと本当に特に僕らの業界(Web業界)からしたらものすごいことで、本当に1%いるかいないかくらいのレベルです。
東田:
これは僕が作り上げたのではなくて、父と母が作ってきたものなんですけどね。
僕が一番経営者気質かもしれない。
西脇市は人口が4万人前後
東田:
西脇市って見ての通り田舎ですし、4万人前後なんですよ。
── 4万人もいるんですね!
東田:
これからもっと減ります。
僕の同級生とかも、やっぱり大阪や東京で働いてますし。
── 僕も神戸市北区の田舎に住んでるから、親近感が湧きます。田舎で宅配クリーニングの事業がうまくいって欲しい気持ちがあって、それで取材できればと思っていました。
高級な衣類をクリーニングに出される方が多い
東田:
うちで申込される方は、圧倒的に女性が多いし、サービスのコンセプトもサイトに反映されているので、高級衣類を送って下さる方が多いですね。
── 見学させていただいた時にもよく見かけました。
東田:
毎週頼んでくださるお客さんがいて、10〜20万円のワンピースばかりが並んでいるのを見ると、信用はいただいてるのかなって思えます。
高級な衣類ですので、気が引き締まりますね。
── 毎週ってすごいですよね。
東田:
その週に着た衣類を、出してくださってますね。
こだわりがあるので、ずっと同じブランド。高級な衣類ばっかりです。
── 毎週出してくれると、うれしいですよね。
東田:
他のお客様も、一番のお気に入り服を厳選してる印象があります。
── あー、うちがリナビスさんに出した時も厳選しました!
東田:
確かに、カーキのコートとスカートですね。
── すごい、よく覚えてますね(笑)
1万人の会員登録数を超えた場合の考えについて
── もし、1万人の登録数を超えてしまった場合って、どのようにお考えですか?
東田:
そこは、現在話し合い中ですね。
1万人の会員だとしても、1回の利用だけで会員登録というお客様も多いですし、そこの基準をもう一度決め直すことも考えています。
僕の目標としては、1万人の利用者ではなくて、顧客を抱えたい夢がありますね。
もし超えてしまった場合は、対応できるかどうかは未知数で、2万人できるかとなると、さらに設備投資が必要になってきます。
かなり先の話だとは思いますが。
例えば、今以上の人数の依頼に応えたいとなるのであれば、機械と土地はありますので、経営判断になると思います。
── 働く人が増えるかもしれないのでしょうか?
東田:
そうですね。
今、雇用は増やしていってますし、僕は受注担当をやってるんですけど、それも後々は任せたいので、求人を出そうと検討しています。
── 西脇の方、ですよね。
東田:
はい。
── いいですね。地元の雇用を生んでるのが尊敬です。
東田:
お二人が来られた時も、お店まで歩いて来られた方がいたと思うんですけど、ちょっとすれ違いませんでしたか?
町内の方が3人ぐらいいて。
── 宅配クリーニングだけではなくて、店舗サービスも何店舗かされてるのでしょうか?
東田:
今9店舗あります。地域では1番ですね。
市内でも6割以上のシェアがあります。
── それはすごいですね!
宅配クリーニングのトラブルに対する考え方と防止策
── 宅配クリーニングって、トラブルを気にされる方もいて、それに対する防止策はございますか?
東田:
トラブルのほとんどは、数量が少なければ起きにくいことだと思っています。
紛失が一番ひどいトラブルだと思うのですが、紛失が多いのは、取扱量が多いのとほぼイコールになってくると思うんですよ。
クリーニングの事故も、機械作業であったり、シミのチェックができてなくて化学反応を起こして何かが起きるとか、機械に挟まって裂けるとかがあると思うんですけど、やはり人で防いでいくしかないと思っています。
自分達が今まで55年やってきた作業方法をきっちりお約束してクリーニングしていくことで、最小限に抑えていく、というところでしか言えないです。
仕組み上で減らしていくとか、新しい仕組みを取り入れたからトラブルがなくなるのはないと思います。
やっぱり、服があって、人が作業して、というのはどこでも一緒なので。
そのやり方をどう捉えていくかですね。
宅配クリーニングでのトラブルがニュースになりますけど、ネットだからたくさん起きることはありません。
店舗で受け付けたのと宅配クリーニングでのトラブルの率は同じだと思います。
── リナビスで今までトラブルが起こったことはありますか?
東田:
今の所はないですね。
仕上がりが少し思ったのと違うことで、再仕上げにはお応えしてるってことは、ごくたまにはありますけど。
そこはしっかりとお応えしないといけないですし。
リピーターさんとして、使っていただいてる部分もありますので。
── あぁ。それは嬉しいですね。
東田:
再仕上の依頼は、服へのすごくこだわりがある方、男性に多いですね。
── 意外な感じがします。
東田:
リナビスのサービスを始める前に考えたんですけど、リナビスを使うと、申込書って入ってるじゃないですか。
申込書の希望欄に細かく書かれる方もいて、その要望は工場に伝えて、できるだけその通りに仕上げるようにしています。
紙を見ながら書くと、かなり細かく書かれる方もいるので、かゆいところに手が届く感じにできているかと思いますね。
── そういう事情で欄がすごく大きかったんですね。
東田:
びっしり書かれる方もいます。
5点あったら5点それぞれについて、こんな時にシミがついて、ここについてるんです、と細かく書かれてますね。
── なるほど、僕が利用した時は何も書きませんでした。
東田:
ああ、書かない方のほうが多いです。
書かれる方には必要かな、と思って。
── そうですね。ありがたいと思います!
取り扱いのジャンルを増やすことを検討されているとのこと
東田:
最近、お問い合わせや電話もいただくようになって、今は宅配クリーニングで対応していない衣類の種類のことを聞かれるようになりました。
せっかく興味を持って電話いただいたのに、その商品については取り扱いがないという回答をしないといけないことがたまにあるので。
そこを解消するために、商品の取り扱いの数は増やしていこうかな、と思っています。
── 楽しみですね。最近は布団クリーニングもありますが…検討していただけるとうれしいです。
東田:
やりたいですね。
── ありがとうございます!布団クリーニング、今は店舗のみでしょうか?
東田:
今はそうですね。
ただ、年間の処理数でいったら、まだ半分以上余裕があります。
取り扱いたいジャンルではあるし、宅配と布団ってすごく組み合わせがいいかなって思ってますね。
── そうですね。
東田:
例えば、マンションとかに住まわれてて、3枚4枚を車の所に降ろすだけでいいって、すごく楽ですよね?
── うんうん。わかる。
守岡:
僕がそう。出したいんですよね。
やっぱりカビとかね、ダニとかが気になるので。
出したいんですけど、どこに出していいかわからないし、自分で出すのも、ねぇ、気が引けちゃうし。
あと、PM2.5とか、花粉とかで、外に出せない分、需要が増えてるっていう話が出てるので、布団クリーニングもやっていただければ、いいんじゃないかなって思います。
東田:
ダニも実は60度以上にならないと死なないそうですよ。
守岡:
なんか、テレビでやってましたよね。
60度で何分かやって、まぁ1時間は必ずやらないと。
── そうなんですね、知らなかった。
東田:
お布団は、6月が一番集中します。
── 梅雨の時期ですね。
東田:
3月くらいまでは羽毛布団使ってる方が多いと思うんですけど、その後、布団を使わなりますよね。
しばらく寝室の端に置いてあって、そろそろ出すかなっていう感じで。
毎年、5月下旬から6月に集中しています。
── そうなんですね。
さいごに:兵庫県の利用者が多い
東田:
たくさんお話できましたし、僕ばっかりしゃべってしまって…。
── いえいえ。熱量のあるお話を聞けたので、すごくうれしかったです。
東田:
メディアさんに来ていただくのは初めてだったんで。単純に興味持っていただいて、うれしかったです。
── こちらこそ、ありがとうございます。
東田:
僕も、リナビスのページをどんどん良くしていきたいと思います。
── うちでもできる限り、ご協力できればと思います。同じ兵庫県ですし。
東田:
実は、兵庫県の方がよく使ってくださってるんですよ。
── あっ、そうなんですね!
東田:
やっぱり東京、神奈川が一番多くて、次に大阪、その次に兵庫なんですよ。
── おぉー!
東田:
やっぱり、兵庫県の方がページを見られて、西脇かぁ、と思って、申し込んでくださるのかな、とは思いますね。
西脇って言ってるところが、少しは効いてるのかなって思います。
── うんうん。僕自身がそう思って申し込んだのもあるので。
東田:
お互い、いいやりとりになったらなって。
── そうですね。はい。
東田:
よろしくお願いします。
── ありがとうございました!
取材を終えての感想
人生で初めてのクリーニング工場見学、そして一番若い東田さんのクリーニングに対する熱い思い。
これほどまでに、職人さんたちや、1人1人のお客様と向き合っている話が聞けたことで、私自身がファンになってしまいそうです。このページの文章になっていないこと以外でもワクワクする話がたくさんありました。
東田さんは、クリーニング事業だけではなく、西脇市の未来も考えた上で行動されています。
私よりも年下にも関わらず、私以上にしっかり未来を見据えているし、何より行動に移していました。
兵庫県って、神戸市のイメージがほとんどだと思いますが、その他の地域ってほとんどが田舎なんですよね。
私自身が住んでいるところもそうです。
その点でも、リナビスが今以上に軌道に乗って、西脇市が活性化するお手伝いが少しでもできればと思いました。
私自身もリナビスの会員登録をしていて、1度クリーニングを利用しています。
お話を伺った通りで、品質はとても良かったです!
クリーニング工場の様子と、取材の前編は以下のページで。
私自身がリナビスを利用した時の感想もあります。