この記事は、知人に寄稿していただきました。
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お金のやりくりや将来について悩んでいるとき、「もっと収入がほしい」「副業した方がいいのかな」と検討することもあるかもしれません。
そんなことを考えているときに、ネットワークビジネスの誘いが来ることもあるでしょう。
わたしは、もっと収入が欲しいという思いから副業でネットワークビジネスを始め、結果的に自己破産しました。
一言で伝えるとあっさりしてしまいますが、この期間は7年間です。
- なぜネットワークビジネスに取り組んだのか?
- なぜ自己破産を選んだのか?
- その後の生活への影響は?
このページでは、この7年間ネットワークビジネスをやっていく中で起こった出来事を包み隠さず紹介していきますね。
もし、今ネットワークビジネスに誘われて成功できるのかなと思っているのであれば、1つの体験談として参考にしていただければと思います。
ネットワークビジネス(マルチ商法)とは?
ネットワークビジネスとは、口コミによって商品を販売していくビジネスのことで、マルチ商法・連鎖販売取引・MLM(マルチレベルマーケティング)ともいいます。
ネットワークビジネスやマルチ商法は、合法なビジネス手法のひとつです。
しかし、違法である「ねずみ講」としくみが似ていることや、ムリやり勧誘された経験のある人が一定数いることから、あまりイメージが良くないのも事実。
わたしも最初は「ネットワークだけはやりたくない!」と思いました。
ネットワークビジネスに取り組んだきっかけ
ネットワークビジネスに取り組んだきっかけは、会社の同僚から誘われたことです。
当時は大手企業で営業職をしており、収入や仕事内容には満足していました。
しかし仕事は多忙でサービス残業と休日出勤は当たり前、人間関係は社内だけと狭く、あっという間に1年が過ぎていく日々。
「本当にここで働き続けてよいのだろうか?」と漫然とした不安を感じていたので、転職や副業を検討していました。
また、当時の年齢は25歳。
結婚したい気持ちでいっぱいなのに、彼氏と別れたばかり。
「30歳までに結婚できなかったらどうしよう?」と、恋愛にも希望を持てない状況でした。
そんなとき、会社の同僚から「理想の生活を送っている人がいるよ」と年上の夫婦を紹介されたのです。
その夫婦は、自営業で自由なライフスタイルを実現しながら、理想のパートナーと結婚して、「年を重ねるのが楽しみ」と話していました。
「仕事も結婚生活も充実していて、まさにわたしの理想を生きている!」
「わたしも会社にとらわれないライフスタイルにしたい!」
そう、直感的に思いました。
だから同僚に「その夫婦のようになる方法を教えてほしい」と言ったのです。
「だったら一緒にやろうよ」と言われたのが、ネットワークビジネスでした。
最初はそのビジネスの悪評にネガティブになりましたが、取り組んでいる人々は素敵な人たちばかりでした。
そして、その理想の夫婦に直接教えてもらえることに魅力を感じて、ビジネスをはじめることにしたのです。
ネットワークビジネスの結果1:人脈が増える
ネットワークビジネスは、商品の販路を自分で開拓していきます。
自分ひとりで販売できる範囲には限界があるので、ともに仕事するパートナーを探すのが当面の仕事でした。
そのため、人脈の拡大は必要不可欠です。
人付き合いが少なかったわたしは、飲み会や街コン、交流会などさまざまな場を活用して、人脈を増やしていきました。
たしかに勧誘目的ではあったのですが、本当に一緒にビジネスをやりたい人だけを誘うように教えられていたので、誘ったときのクレームは少なかったです。
さらに、さまざまな出会いを通してコミュニケーション力を磨けたことで、会社での営業成績が上がるという思わぬ収穫もありましたね。
ネットワークビジネスの結果2:月収20万円獲得
ビジネスに数年取り組んだ結果、一時的に月収約20万円を稼ぐことができました。
真剣な取り組みが報われた気がして、とてもうれしかったですね。
そして、自分の口座にお金が入ってきたときに感じたのが、「いけるかもしれない」という予感です。
わたしは思いきって会社員の仕事をやめ、元々やりたかったサービス業の仕事に切り替えました。
収入は半減しましたが、その分ビジネスで稼ごうと思っていたのです。
ネットワークビジネスで破産した理由
順調だったはずなのに、なぜ破産する結果になったのでしょうか。
それは知らぬ間に増えていた負債が原因です。
ネットワークビジネスは商売なので、毎月売上目標を立てます。
たとえば「毎月売上10万円を達成する」と決めていて、もし販売活動で達成できなかった場合に、2つの選択肢が出現します。
- 売上を達成せずに終わるか
- 自分のお金で購入して達成するか
自費での商品購入は「自分で使い切れる範囲内に」とメーカー側から決められていますが、要はそれだけ商品を使えばいいのです。
冷静に考えるとおかしな理論ですよね。
しかし、「成績の悪い人=自費購入」が当たり前の雰囲気だったこともあり、わたしも目標未達の月は10〜15万円ほど自費購入していました。
当然経済面は悪化しますが、そのプレッシャーによって自分が本気になると思いこんでいましたね。
会社員で月30万円ほど収入のあった時期は問題なかったのですが、派遣社員やサービス業に転職してからは、収入よりも負債が上回るような状態が続きます。
当然貯金は底をつき、5枚以上あったクレジットカードの支払いも困難になっていきます。
そこで、カードのリボ払いを限度額ギリギリまで使用したり、キャッシングを利用したりと、あらゆるカードを使い倒してしのいでいました。
破産の決定打は高額の自費購入
ビジネスをはじめて5年経ったとき、当時達成する人の少なかった「月商100万円」を目標にしました。
わかりやすい成果を早く出したかったのです。
しかし全額分販売することはできず、大半を自費購入することで達成しました。
ビジネス仲間からはたくさん祝福してもらったのですが、心の中は苦しかったです。
このときの出費が原因で、ギリギリできていたカードの返済も滞りはじめました。
夜のバイトを入れてほぼ寝ずに働いても収入が負債に追いつかず、心身ともに限界に達したわたしはやっと理解しました。
もう取り返しのつかないところまで来ていることに。
負債額はすでに、約550万円まで膨らんでいたのです。
債務整理の種類は4つ:任意整理、自己破産、個人再生、過払い金請求
冷静に考えて、約550万円の負債は自力で返せるものではありません。
そこで、法的に債務整理することを考えました。
債務整理とは、司法書士や弁護士に依頼して、借金をした債権者と交渉してもらい、将来利息のカットや借金減額などを行なう手段のことです。
その種類は、任意整理・自己破産・個人再生・過払い金請求の4つ。
わたしが利用できるものは、任意整理と自己破産の2つでした。
任意整理は、借金をした債権者と交渉して利息部分をカットしてもらい、返済期間を延長して借金を完済する方法です。
利息部分の返済だけ免除してもらいますが、元本部分はすべて自力で返済します。
自己破産は、支払いが不可能であることを裁判所に認めてもらうことで、すべての借金を帳消しにする方法です。
家や車などの資産は没収され、預貯金は20万円以下しか残せません。
弁護士に相談した結果、わたしは収入と比較して負債が多すぎたので、自己破産手続きを取ることにしました。
自己破産手続きには、裁判所に提出する書類の準備と、弁護士費用の支払いが必要です。
その書類とお金の準備で約1年ほどかかり、最近やっと破産することができました。
自分が自己破産するなんてまったく考えてもいなかったので、しばらくは落ち込む日々でしたね。
いったいどこで間違ってしまったんだろうと。
今でも自己破産のことは本当に信頼できる人にしか話していません。
両親には絶対に話せないです。
それだけ、深いキズになってしまったことはたしかですね。
ネットワークビジネスをやめた3つのきっかけ
わたしがネットワークビジネスをやめたきっかけは、3つあります。
多額の負債
売上を上げよう・成功しようという思いが先行して、経済面が悪化していることに目を伏せ続けた結果、返済できないほどの借金をつくってしまったことです。
また、自己破産をする際には、ビジネスをやめた状況にしないと裁判所の許可を得にくい、ということを弁護士からも言われました。
体調を崩して冷静になった
借金を返すために、サービス業・ビジネス活動・夜のバイトと寝ずに活動した結果、体調を崩しました。
家で寝ているときにふと、「もうこれ以上はがんばれない」と思ったのです。
すでに体は限界だったので、精神的にも折れたところで、もうビジネスを続けることは難しいなと感じました。
彼氏との出会い
彼はビジネスとは関係のない職場で出会い、付き合っていました。
すでに破産することは決めていたのですが、ビジネスを続けることは迷っていたんですね。
それを正直に話したときに、「好きにしたらいい。どちらにしろ自分は一緒にいる」と言われました。
同時期にビジネス関係者にも同じことを相談していたのですが、「ビジネスをやめたら仲間ではない」ということをやんわりと伝えられていました。
彼とビジネス関係者の言葉を比較した結果、わたしは彼と一緒にいようと思い、ビジネスをやめることにしたのです。
ネットワークビジネスをやめたあとの生活は?
ネットワークビジネスをやめてから会社員として就職したのですが、本来の希望だった「会社にとらわれないライフスタイルを送りたい」という思いが捨てられず、自営業に転換することにしました。
未経験からライターをはじめ、現在は会社員時代と同程度の収入を得られています。
パートナーとも仲良く暮らし、近々入籍する予定です。
自己破産をしているため、約7年間はクレジットカードやカードローンなどを作成することや、金融機関から融資を受けることはできません。
スマートフォンの分割払いも利用できないので、購入する際は一括払いです。
少し不便に感じることもありますが、お金の管理はしやすくなりました。
ビジネスをやめて自己破産をしたことで、よりシンプルな暮らしに変化したと感じます。
ムリなく取り組める仕事とライフスタイル、好きな人との生活を手に入れられたので、決断してよかったですね。
副業する上で気をつけた方がよい2つのこと
これまでの経験をふまえ、副業する際に気をつけた方がよいことを2つ紹介しますね。
コストの少ない副業・余裕資金でできる副業を選ぶ
副業をはじめる際には、初期費用や継続費用などのコストが少ないものを選ぶとよいでしょう。
商品の仕入れが必要な小売業・販売業や、高額な家賃を支払う飲食業、高額なセミナー代を支払う事業などはおすすめしません。
また、株式投資や不動産投資などの資産運用を行なう際は、生活に必要な資金を確保しておき、それ以外の余裕資金で取り組みましょう。
副業に取り組むことで日常生活に悪影響がおよぶことは、本末転倒ですね。
退路を残しておく
副業がうまくいったとしても、本業をすぐにやめてしまうのは避けましょう。
本業の収入があるからこそ、資金的・精神的に余裕のある生活ができるからです。
どうしても本業をやめたい場合には、その副業が長期的にうまくいくのか、十分に検証してから決断するのがおすすめですよ。
ネットワークビジネスをはじめよう・やめようとしている人へ
もしネットワークビジネスをやろうとしているなら、一度冷静に検討したほうがいいですよ。
ネットワークビジネスの勧誘は、活動している人や教えてくれる人の魅力で行なうことが多いからです。
人の魅力はたしかに大切ですし、「こういう人になりたい」という思いは大きな力になります。
しかし、ネットワークビジネスは仕入れを伴う小売業であり、その経済的負担は決して小さなものではありません。
自分の経済状況や、会社との両立が可能なのか、冷静な目で検討してからスタートするとよいでしょう。
また、あなたがネットワークビジネスを続けようか迷っているなら、なぜそう思うのかについて考えたほうがいいですよ。
ネットワークビジネスをしている人が悩むありがちなことは「望んでいた成果が出ない」ということですが、その原因はどこにあるのでしょうか?
たとえば、「コミュニケーション上手になりたい」と思ってスタートしたのに、「人とうまく話せなくて成果が出ない」と悩んでいたとしましょう。
この場合、うまくいかない原因は自分自身にあると考えたほうがいいかもしれませんね。
一方、「販売するノルマがきつい」のがうまくいかない原因だとしたら、それはチームの方針や組織運営と合わないということです。
この場合は、脱退したほうがいいかもしれません。
どこでつまづいているのか自分で見極めてみましょう。
もし組織的な問題や経済的な問題がネックとなっていたら、一度活動を停止することをおすすめします。
さいごに
わたしはネットワークビジネスにのめり込んだ結果、自己破産することになりました。
その要因は、悪化する経済面から目をそらし、多額の負債をつくる行動に走ってしまったからです。
一度立ち止まっておけばよかった、冷静な誰かに助けを求めていたらよかったと、今でも後悔します。
しかし、自己破産しても人生が終わるわけではありません。
痛い思いをしたからこそ、今の自分に合った生活ができていますよ。
この経験が反面教師になればうれしく思います。