鳥取県の大山町に行った時に、ワカメを採っている素潜り漁師の中村隆行さんとお話する機会がありました。
ちょうどその機会にワカメを食べさせてもらったのですが、すごく美味しかったですよ。
そのままでもすごく味わいがあるし、火を通して食べると、ワカメってこんなに美味しかったの?って思えるほど。
ワカメは5月に食べると新鮮で美味しい
普段、何気なくワカメを食べていますが、旬の時期を知っていますか?
私は今まで全然知りませんでした。
中村さんによると、5〜6月は注文が多くなるそうです。
特に5月が多くて、一気に注文があるので、人をいれないといけないぐらいだそう。
取材日:2016/2/17
中村隆行(以下:中村):
いい素材がやっぱり命なんですよ。何においても。
なので、早めに獲ったものを食べてもらえるっていうのはありがたくて。
獲れたてのもの、素材をそのまま届けたいという思いで、無添加でやってます。
お客さんも、わかってくれていて、5月に注文をいただいて、すぐ食べてもらっている感じですかね。
やっぱり、梅雨が明けるとね、獲れたての味よりは落ちてしまいます。
梅雨前だったら、確実に美味しいです。
── そうなんですね。5月が旬なのは初めて知りました。
中村:
それはもう多分、日本全国、どこで獲れた乾物系でも一緒です。
お客さんに最高のものを届けたいという思いがあるので、本当のことを伝えて、買ってくださる方には、「ワカメのいいものというのはこういうものなんだよ」っていうのを伝えたいですね。
伝えることも仕事の1つだと思っています。
── 新聞にも載っていましたよね!
中村:
まぁそういうこともあって。ありがとうございます。(笑)
── さすがです(笑)。
自分の顔が広がることによって、生産者という仕事から見た自然界を伝えられると思っていますね。
── このワカメ、欲しいです。
中村:
ホームページを4月から開設する予定ですので、その時にぜひ。
── ネットからも注文できますか?
中村:
はい。
新物が出たタイミングでご連絡させてもらって、そのあと購入していただけたら、言ってることが伝わると思います。
最初の獲れたてのエネルギーを食べることによっての感動、人間が動物として当たり前のいいものを食べている時の強さっていうのは、すごいことなんだな、っていうことを自分自身も感じたんです。
── 食べたいです。すごい食べたくなってきました。
その後、中村さんのワカメを食べさせてもらいました。
これ、ホントに美味しかったなぁ・・・。
空き家の活用事例を作ることで影響力を持つことができる
中村さんは、大山町でも中心的な存在として、多方面で活動されています。
自然と熱の入った話が出てきて、聞いている立場としてもワクワクすることがたくさんありました。
* * *
中村:
平成24年だったかな。
自分も含めて3人で「築き会」を立ち上げました。
地元の課題を解決していける取り組みをちゃんとしていこうというのがきっかけですね。
活動の中では「まぶや」を起こしたことが一番大きかったと思います。
── まぶや?
※ 「まぶや」は、古民家を改装したコミュニティースペース。
引用:まぶやホームページ
中村:
もともとは隣の米子市に住んでらっしゃる方が所有してるんですけど、有償譲渡だったら、町は引き取れないので、なんとか無償譲渡にしなくちゃいけないっていう私達のミッションがあったんですよ。
かなり難しいと思ったんですけど、最終的には無償譲渡にしてくださって。
金額に直すとかなりの価値がありますので、よくそこを…首を縦に振ってくれたなと思って感謝してますね。
そこから徐々に仲間が増えていきまして、みんなで地元の課題を解決できるような取り組みをしてますね。
空き家というのは地域の課題の一つで、自分たちが動くことによって、改善できるのではないかと思って動いています。
シェアハウスの「のまど間」もそうですよね。
大きく考えすぎると、漠然としすぎてしまうんですけど、1つずつ地道にやっていくのがいいのかなと思ってます。
空き家のリノベーションで、若い人たちに活用してもらう動きが全国でも
── 広がってますよね。
中村:
広がってますよね。
若い人たちのためでもあるんですけど、実際にやってみると、地元の人たちにもすごく影響力があるっていうのがわかってきて。
── あー。人が集まって来るんじゃないですか。
中村:
田舎の集落の真ん中周辺ぐらいに、空き家をリノベーションして活用すれば、その地区の方達にも影響力をもたらすのを実感してますね。
今も、空き家の事業を素潜りの漁師の仕事の後に、町から請け負ってやってます。
まぶやを作った地区の空き家の登録とか、移住者の受け入れが、他の所に比べて圧倒的に多くてですね。
── おー!
中村:
だから、いかに影響力っていうのが浸透してるかっていうことですよね。
1つやることによって、かなりの影響力を持たせられるのを実感しました。
今後他のメンバーがやってるところも、改良して1年2年ぐらい経ったあとにじわじわとその地区の方達に効果が出てくると思っています。
── そうですね。
中村:
で、効果が出てきたときに、自分たちも一回ちょっと楽になる。気持ちがゆるむんですよね。
それはいい意味で、ずーっとやってきたので、疲れが出るみたいな感じなんですけどね。
それは当然人間としていいことだと思うんですけど、そこで試されてるなと思えるか、もう一歩行こうという向上心になるか。
ここでこのままでいいわ、この状態でいいわとキープするか。
それとも達成感に満たされてゆるめてしまうかは、やっぱりその人たちの、やっぱり試されてる選択肢なんだろうなって思ってます。
でも、そこは自由でいいんだと思うんですよ。
── はい、そうですよね。
中村:
自分がどう選択して、どう展開していくのかっていうのは自由でいいんじゃないかと思う。
そういうみんなが挑戦できるような地域づくりっていうのをやりたいな。
── 可能性が広がりますね。
中村:
そうですね。
町長も言ってるんですけど、仕事を生業に変えないと、まちづくりができないと思ってます。
生業になる地域づくりみたいなところまで持っくのが、自分の役目なのかな。
15年前に大山町に来たんですけど、当初はまだ若い人たちたくさんいました。
でも、5年くらい経って本当に変わって来たなって思ったんですよ。
高齢化をまともに感じ始めまして。
一年に一度必ず会う人を見た時に「うわ、この人老けたなぁ……」って感じちゃうと、すごい年数を感じますね。それはちょっとまずいんじゃないかなーと思って。
それがきっかけで若い人たちを集めるような取り組みをしたいと思ったんですよね。
持ち家がきっかけで運気が上向き始めた
中村さんは、私がブロガーインレジデンスで滞在していた時に主催だったイベントにも参加してくださいました。
その時のノマド的節約塾イベントレポートはこちらです。
私は、自分の家ができたことで、いろいろなことがうまくいくようになったと感じていて、イベントでもたまたまその話をしたのですが、中村さんも同じような感覚があったそうです。
この感覚を共有できた方は初めてだったので、すごくうれしかったですね。
その話は続きをどうぞ。
* * *
中村:
先ほど案内した部屋に旗があったと思うんですけど。
── ありましたね。
中村:
以前は船も所有してて、その船も含めて2000万くらい借金しました。
町の補助、県の補助もいただいた同時期に家も買ったんですよ。
家も結局800万ぐらいしましたね。
ここの家が500万で、改修工事で屋根とか全部変えたりとかで300万くらい。
── あぁー。
中村:
船を持った時に、ローンのつらさを結構感じましたね。
こんなに取られるんだなぁと。
ローンはどうなのかなと疑問を持ち始めたので、家はなんとか500万円をかき集めて支払いましたね。お金がすっからかんになりましたけど。
── ああー、500は、大きいですもんね。
中村:
でも、松本さん昨日おっしゃってた、「家があると安心感がある」っていうのは、すごく共感できるんですよ。
※ ノマド的節約塾イベントの翌日に中村さんに話を伺いました。
── 安心感ありますね。
中村:
なんか不思議な、落ち着きがあるというか、充実感があるというか。
── そうですね。
中村:
なんとなく落ち着くんですよね。
── そうですね。僕も家ができて住み始めてから、いろいろうまく回り始めた感じがあります。
中村:
なんか、すごくそういうのあるなと思ってて、昨日話聞いてて、本当その通りだなーと思って。
そういうこともあって、私も家を持ち始めてから、少しずつ運が良くなったというか。
── ああー。そんな感じです。運が良くなったというか。
中村:
この家があって良かったなと思ってますね。
2000万借金あったのを、10年間で頑張って返しました。
妻の貯金も使わせてもらったんですけど、まぁそれもありつつ。
10年間はずっと仕事だけです。ずっと仕事をしてた感じですね。
だから、人ともあんまり会わなかったし、妻とたまにご飯に食べに行くくらいが楽しみなぐらい。
その代わり身体壊しちゃうと何にもならないから、睡眠だけはきちんと取ってました。
幼少期に自分の親が借金で苦しんでいるのが脳裏に焼き付いてて、それは嫌だなと思ってたんで、稼いで返したいなと思ってましたね。
運も良かったんですよね。
大山町は資源が豊富なので。
ワカメを獲らせてもらってる以上の、感謝の気持ちがある以上、感謝に対してなんかしなくちゃいけないって思っています。
感謝を行動に移すためにも、ちょっとお金貯めようかなって。
── そうですね。貯めてるだけでもしょうがないですからね。目的を持って貯めるようにしないと。
中村:
そうですね。
貯めている時に、多分みんなが起こり得る現象だと思うんですけど、他人よりも貯めたくなるという、変な目的が生まれるんですよね。
これは、例外なくみんなが、一回は駆られる、試されているという感覚かなあと。
そこで本当に自分のお金の亡者になってしまうのか、それとも、本来の目標を見失わずに、きちんとその目標を達成するためのお金を作れる人になるのか。
自分も含めて、すごい深いテーマだなぁと思いますね。
── そうですね。
中村:
今後は、教育につながるようなことにお金を使いたいと思っています。
── うんうん。
中村:
そこをしっかりと生かして、少しずつ自分がやりたいところに、共感者が生まれるような。
── そうですね。
中村:
いきなり莫大な土地を買って始めるやり方は、自分には合わないと思うので、まずは地域づくりを意識したテーマ型のコミュニティを作る。
テーマ型のコミュニティを作っておけば、必ずそこから自分のやってることを広めてくれる人が出てくると思っています。
── そうですね。仲間がいますし。
【編集後記】先を見据えて行動されている
中村さんの話を聞いて思ったのは、大山町が今よりもよくなるにはどうすればいいのか、どう動けばいいのかを考えて、実際に行動されているというところです。
私と中村さんは全く畑違いの仕事をしているのですが、それでも共感できる部分がとても多く、自分に足りない視点をたくさん持っている印象を持ちました。
お会いした時点で移住して15年。
15年住んでいるからこその視点と、外からの視点の両方があるように思いました。
まちづくりもそうですが、ワカメの美味しさには感激しましたよ。
販売を開始したタイミングで、またノマド的節約術でも紹介できればと思います!
一度、今までのワカメと食べ比べてみて欲しいです。