高校には、一般的な全日制のほかに定時制・通信制の高校があります。
全日制高校に通っていた人にとって、定時制や通信制高校は「名前はなんとなく聞いたことがある」程度の認識ではないでしょうか。
わたしは16歳〜19歳までの4年間、秋田県の通信制高校に通っていました。
病気や経済的な理由で全日制高校に行けない人、高校を中退してしまったけど高卒資格をとりたい人、働きながら勉強したい人…
通信制高校は、さまざまな目的でいろんな地域・年代の人が集まってくる、ちょっと特殊な環境でした。
このページでは、4年間通信制高校に通って卒業したわたしの体験談や、わたしが考えるメリット・デメリット、通信制高校がおすすめな人について紹介します。
※ここで書くのは2001年〜2004年当時、秋田県の通信制高校の話です。
今は細かいところが変わっている可能性もありますが、考え方を参考にしていていただけたらと思います。
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何かしらヒントが得られるかと思いますよ。
通信制高校について
まずは、通信制高校の仕組みについて簡単に説明していきますね。
学年制と単位制の違い
全日制高校では学年制が主流ですが、通信制高校の多くは単位制です。
これはひとつの科目ごとにレポートの提出・テストなどで単位を習得するもので、もしその年にとれない単位があっても、進級して翌年に再び履修することができます。
つまり、単位制では学年にかかわらず、3年以上在籍して必要な単位を取得すれば卒業できるんですね。
逆に言うと「留年」という概念がないので、必要な単位がとれなければ何年もずるずると通い続ける、ということも。
勉強の流れ
通信制高校で勉強する流れは、大まかに分けて以下の3つです。
- スクーリング
- レポート
- テスト
スクーリング
スクーリングとは面接指導のことですが、一般的には登校日(授業を受けに行く日)と考えてOKです。
わたしが通っていた高校では月2回、隔週日曜日がスクーリングの日でした。
学校やコースによっては、5日間など継続した期間に授業を受ける集中スクーリングがあったり、年に数回だけというところもあったりしますよ。
また、直接学校へ行けない人のために、NHK高校講座を利用した放送視聴という方法をとっていることも。
レポート
スクーリングは月2回しかないため、勉強の中心はくは自宅学習になります。
教科ごとに決められた回数のレポートを郵送で提出し、先生に添削してもらう、という流れ。
わたしが通っていた高校では、1教科につき1年で約10通程度ありましたね。
ちなみに、レポートは「通信教育用郵便物」にあたるため料金が安く、15円切手を大量購入して使っていた思い出があります。
現在は郵送ではなく、インターネットを使ってレポートを提出できる学校も増えてきていますよ。
テスト
月2回しか授業がないといっても、テストもしっかりありますよ。
赤点をとったらもちろん追試です!
わたしの通っていた通信制高校の体験談
わたしが通っていたのは、秋田県で唯一の通信制高校・秋田東高校でした(現在は秋田明徳館高校になっています)。
家から電車で2時間弱と遠いのですが、とくに決められた学区はなく、秋田県内に住んでいれば誰でも入学できましたよ。
入学試験はなく、面接と作文の提出のみでした。
ちなみにわたしの場合、はじめは秋田東高校の定時制課程に入学し、2年次から同じ高校の通信制に編入学した、という形です。
中学校の半分を不登校で過ごしたわたしにとって、定時制とはいえ人が多いところで毎日授業を受けるのがつらかったんですよね…。
そういう意味で、授業が月2回で済む通信制高校は、わたしには合っていたと思います。
当時は卒業までに4年かかった
秋田東高校の通信制課程では卒業までに4年かかるので、19歳のときにはわたしは「高校4年生」でした。
そのときは何となく恥ずかしかったですね。
現在は3年で卒業するか、4年で卒業するかを選ぶことができ、3年で卒業を目指す場合はスクーリングが土・日曜に増える仕組みになっています。
アルバイトをしながら通っていた
わたしは普段はコンビニでアルバイトをし、スクーリングがある日にお休みをもらう、という生活をしていました。
わたしが住んでいる地域の全日制高校では、夏休み・冬休み以外はアルバイト禁止だったので、その点は自由にやれてよかったなと思いますね。
年代はさまざま
通信制高校への入学には、年齢制限がありません。
実際に、わたしが編入したときの同じ学年には、最高で60代の生徒がいましたよ。
ほとんどは10代ですが、20代・30代の生徒もちらほらいました。
ある程度年齢がいってから入学してくる人は、「結婚・出産してから学びなおしたい」「専門学校に入学するために高卒資格がほしい」など明確な目的があるため、卒業率も高かったように思います。
10代の生徒には、わたしのようにコミュニケーションが苦手で全日制の高校に馴染めなかった人や、いわゆるギャル・不良っぽい人が多かったですね。
授業はかなりざっくり
あくまでわたしが感じたことですが、授業の内容は比較的簡単だと思います。
スクーリングの回数が限られているため、教科書のすべてのページに時間を割けません。
レポートに関しても同様ですが、どうしても要点だけをざっくりと見ていく、という感じなんですよね。
自宅でしっかり教科書を読み、レポートを提出していれば、テストもそう難しいものではありませんでしたよ。
課外学習や部活動も存在します
通信制高校といえども、課外学習や部活動もきちんと存在します。
わたしは部活動はやっていませんでしたが、秋田東高校では陸上部が盛んだった記憶がありますね。
課外学習では、1度だけみんなでバスにのって大潟村に行きました。
そのときは普段話さない人とも喋れたりして、意外と楽しかったことを覚えています。
ちなみに修学旅行もあり、そのための積立制度もあったのですが、わたしは行きませんでした。
わたしの同級生で行ったのは十数人だったと思います。
卒業生の進路はさまざま
通信制高校から進学する人は、決して多くありません。
しかし、本人のやる気次第では大学を目指すことも可能ですし、進路相談にものってもらえます。
どちらかというと、大学よりは専門学校への進学を希望する人が多かったですね。
就職の場合、わたしの同級生では平日に働いている人が多かったため、そのまま働きつづけるというパターンがほとんどでした。
わたしが考える通信制高校に通うメリット
ここからは、わたしが考える通信制高校に通うメリットについて紹介しますね。
学費が安い
文部科学省の調査によると、全日制の公立高校で1年間にかかる費用は、学校教育費・学校外活動費合わせて1年間で40万円程度(平成24年度)。
一方、秋田東高校の場合は1年間で35,000円程度と、かなり安くなっています。
経済的な理由で全日制高校への進学を諦めた、もしくは迷っているという人にとっては、見のがせないポイントではないでしょうか。
学割が使える
何歳で入学しようと、何年生であろうと、通信制高校の生徒であれば学割が使えます。
JRの「学生割引乗車券」を使えば、利用する区間が片道101キロ以上ある場合、運賃が2割引になりますよ。
わたし自身、旅行のときにこの制度を利用しました。
このほか、携帯電話・美容院・脱毛サロン・飲食店など、学割がきく場面や施設はたくさんありますよね。
だれでも入学できる
通信制にかぎらず、全日制・定時制高校にも年齢制限はありませんが、通信制高校ほど幅広い年齢の人が在籍する学校はないのではないでしょうか。
ほとんどの場合、全日制・定時制高校を受験するときのような難しい試験がないため、書類の提出と作文程度で入学できるというのが大きな理由でしょう。
高校を中退してから通信制高校に入りなおした場合でも、これまでに習得した単位をそのまま引き継ぐことができます。
また、持病があって通学が難しい人も、インターネットを利用したレポート提出や放送視聴などを使えば、高校卒業を目指すことができますよ。
働きながら通える
すでに就職して働いている人が学びなおしたい、というときに、通信制高校はぴったり。
スクーリングは土・日が中心な上、決められた期限内にレポートを提出すればいいので、自分のペースで勉強できます。
もちろん、全日制高校と同じように15歳で入学した人でも、空いた時間にアルバイトが可能ですよ。
幅広い友達ができる
全日制高校では出会えないような、幅広い友達ができるのも通信制高校の大きな特徴でしょう。
10代のうちに、20代・30代のすでに働いている人たちと話をするのは、わたしにとっては新鮮で楽しいものでした。
生徒の年代がさまざまなせいか、先生たちともどこか友人同士のような感覚があり、学校の雰囲気は意外に和気あいあいとしていましたよ。
高校卒業資格がとれる
何らかの理由で高校を中退してしまった人が、通信制高校に入り直すというパターンはとても多いです。
とくに、大学や専門学校の入学資格を得たいのであれば、通信制高校を利用するのがおすすめ。
先生たちも、親身になって進路相談にのってくれますよ。
無理なく勉強できる
全日制高校と違い、通信制高校は土・日のスクーリングと、レポートの提出が中心。
レポートには1ヶ月程度の提出期限が決まっていますが、その期限内であればいつ勉強してもいいのです。
自分のペースで勉強を進められるというのは、通信制高校の大きなメリットではないでしょうか。
服装・髪型が自由
通信制高校には制服がありません。そのため、服装・髪型は個人の自由。
自分の好きな格好ができるのはもちろん、制服を用意するお金がかからないという意味でもメリットになりますね。
耳にピアスがいっぱいの生徒や、金髪・ピンクの髪の生徒など、個性豊かな面々がならぶ教室は、思い返すとなかなか貴重なものだったのかもしれません。
わたしが考える通信制高校に通うデメリット
通信制高校にはメリットだけでなく、デメリットもあります。
サボりやすい
自分のペースで勉強できるのがメリットである一方で、サボろうと思えばいくらでもサボれてしまうのが通信制高校の仕組み。
いくら仕事や家事で疲れていても、レポートやテストは待ってはくれません。さらに単位がとれなかったからといって、留年するというわけでもないですからね。
学びたい、卒業したいというしっかりとした意志がなければ、3〜4年間通い続けるのは至難の業です。
実際に、わたしの同級生で4年で卒業できた人は半分もいませんでした。
生徒同士の交流が少ない
通信制高校では幅広い年代の友達ができやすいとはいえ、実際に生徒同士が顔を合わせるのは月に1〜2回程度。
全日制・定時制高校ほど多くはないので、そこまで仲良くはなりにくいかもしれません。
課外学習や体育大会などのイベントに積極的に参加したり、部活動に入ったりすると、交流の機会は増えるでしょう。
制服が着られない
制服がなく自由な格好で登校できるのはメリットでもあるのですが、わたしの場合は制服に憧れがあったので、高校生のうちに制服が着られなかったことは今でも残念です。
ただ、10代の生徒の中には、自分で用意した制服風の格好で来ている人もいましたよ。
休日が拘束される
スクーリングは土・日や夏・冬のまとまった期間に行われるため、平日に働いている場合は休日が拘束されてしまいます。
3〜4年間、毎月数日間休日が拘束されるということを、あらかじめ念頭に置いておいたほうがいいかもしれません。
さいごに
通信制高校は、こんな人におすすめです。
- 高卒資格が欲しい
- 働きながら学びたい
- 学費を抑えたい
- 自分のペースで学びたい
- 自己管理ができる
自己管理が重要になってくるものの、高卒資格を得たい人や学費を抑えたい人、全日制高校になじめなかった人には、通信制高校がぴったり。
「中退してしまって学校生活で経験できなかったことがある」
「進学の夢を諦めきれない」
もしそんな思いがあるのなら、通信制高校への入学を検討してみてはいかがでしょうか。
以下のサイトで通信制高校の資料請求もできますよ。
少しでも通信制高校を検討しているのであれば、とりあえず取り寄せることが第一歩です。
おまけ:通信制の大学もあります
通信制で学べる学校には高校だけでなく、大学もあります。
大学も「働きながら学べる」という点では同じですし、通学制大学よりも学費が安いのが大きなメリットですよ。
高校は卒業したけれどもっと学んでみたい、という場合は参考にしてみてください。