会社に縛られない、自由な働き方って本当にあるんでしょうか。
企業の副業解禁がニュースになる中、フリーランスの働き方にも注目が集まっています。
前回、私はフリーランスで働くママたちにインタビューし、在宅ワークを始めたきっかけや、夫婦の家事分担の話などを聞きました。
その中で、「フリーランスのパパは、どんな生活をしているのだろう?」という疑問がわいてきました。
家で仕事をするパパたちは、家事・育児をどのぐらいしているのだろうか。
そもそも、生活していけるのだろうか。
そこで今回は、フリーランスパパ4人にインタビュー。
匿名座談会だからこそ聞けた話を、たっぷりお届けします!
大企業の「社内政治」を抜け出しフリーランスに
インタビュー日:2017年12月4日
── 今回は、在宅でWeb運営をされているフリーランスのパパ4人に、集まっていただきました。
みなさんのフリーランス歴と、簡単な自己紹介をお願いします。
Aさん(40代):
フリーランス歴は約5年、幼稚園児の子どもがいます。
フリーランスになる前は、コンピュータ関係の仕事をしていました。
Bさん(30代):
フリーランス歴は5年以上、2歳の子どもがいます。
会社員をしたあと、退職して海外で数年生活しました。
帰国後、しばらく貯金を切り崩す無職状態が続き、フリーランスで働きはじめました。
Cさん(30代):
フリーランス歴は5年以上、3歳と2歳の子どもがいます。
前は、東証一部上場の企業で働いていました。
Dさん(40代):
フリーランス歴10年以上、小学生~高校生まで、3人の子どもがいます。
昔は自分で会社を作るなど、色々な仕事をしてきましたが、今はフリーランスと会社員を兼業しています。
── みなさんが、フリーランスになったきっかけを教えてください。
Aさん(元コンピュータ関係):
もともと、おこづかい稼ぎの副業としてWeb運営をしていました。
でもあるとき、僕がいた組織の雇用形態が、正規から非正規雇用に変わってしまったんです。
給料も下がるし、辞めざるをえない状況になったので、じゃあWeb運営に本腰を入れようと、フリーランスになりました。
Bさん(元無職):
僕は、帰国したときから、会社員に戻る気はゼロでした。
理由は、会社の人間関係が嫌だったからです。
また同じ業界で働いたら、どこに行ってもムカつくタイプはいると思いました。
だから、フリーランスを選びました。
今は人間関係のストレスがなくて、前より幸せです。
Cさん(元上場企業):
僕のいた会社は大企業で、いわゆる「社内政治」というものがありました。
仕事をがんばったり、ほかの人の仕事を手伝うと「余計なことをするな」と言われる。
まあ、大企業ってそういうものだとは思うんですが、業績が下を向いていることもあって、会社に未来を感じませんでした。
もともと、入社したときから、独立志向だったんです。
みんなと同じことはしたくない、自分がやりたい仕事だけしたい。
私もAさんのように、副業で少し収入があったので、早期退職して、そっちに本腰を入れることにしました。
Dさん(会社員と兼業中):
僕も独立志向だったんですが、一番初めに働いたところでは、40代・50代の人がずっと同じ仕事をしていて「ヤバイ」と思いました。
なので若いうちに、自分で会社を作りました。
儲かったんですけど、大きいお金を自転車操業のように回すのがしんどくなってきて、数年で会社をたたみました。
そこからまた、就職した会社が倒産したりと、色々あって、今に至ります。
妻と一緒に会社を辞めたら、家庭が安定した
── フリーランスになったとき、家族の反対はありましたか?
また、どのぐらいの期間で、生活できるようになりましたか?
Aさん(元コンピュータ関係):
フリーランスになった当時、もう子供がいました。
でも、妻が病気がちだったので、僕が家で働くことには賛成でした。
妻以外には、フリーランスになることは言わなかったですね。
最初は貯金を切り崩した生活をしていて、ストレスで体を壊したこともありました。
Web運営は、がんばってもすぐ結果が出る仕事ではないので、生活できるようになるまでに2年かかりました。
Bさん(元無職):
僕は当時独身でしたし、周りからは何も言われませんでした。
生活は、1年ぐらいでできるようになりました。
Cさん(元上場企業):
僕は、すでに結婚していましたが、何も言われなかったです。
妻も働いていて、金銭的に自立していたので。
自分で生活費が稼げるようになるまで、9か月ぐらいかかりましたね。
Dさん(会社員と兼業中):
僕は、フリーランスになることは、妻に反対されてました。
でも昔、仕事が忙しすぎて、まったく家族と関わらない生活をしていたんですよ。
妻は正社員で働きながら、家事も育児もやっていた。
ある日、そんな生活に限界が来て、妻に「田舎に帰る!」と言われまして。
一緒に会社を辞めて、田舎に引っ越したんです。
前から、副業で会社員以上の収入はありましたし。
そしたら、家庭が安定しましたね。
成功しても失敗しても自己責任だから、納得できる
── フリーランスでよかったと思うことは何ですか?
Aさん(元コンピュータ関係):
家で仕事をしているので、時間の融通がきくことです。
幼稚園に入ったばかりの頃、子どもが病気ばかりしていたんですよ。
そんなときも、交代で送り迎えができるし、病院にも連れて行けるし。
あと、収入がフリーランスになる前より多いので、妻が安心してますね。
Bさん(元無職):
僕は、さっきも言いましたけど、ムカつくタイプとは関わらなくてすむことですね。
あと、人にも時間にも束縛されず、自由に仕事や育児ができること。
フリーランスの仕事は、成功しても失敗しても自己責任だから、納得できます。
Cさん(元上場企業):
自分がやりたい仕事ができることです。
企業にいたときは、会社のためにやったことでも、勝手なことをするなと怒られましたから。
Dさん(会社員と兼業中):
子どもとの時間が増えたことですね。
以前はまったく育児に関わっていなかったので。
僕は今も会社で働いたり、仕事で色んな人に会ったりしますけど、人間関係はつかず離れずでやってますよ。
そうやって、ストレスを溜めないようにしてます。
家族がいるから、収入に対しての責任がある
── 次に、フリーランスで困ったことを教えてください。
Aさん(元コンピュータ関係):
オンとオフの切り替えができないことです。
子育ての合間の、時間が空いたときに仕事をしています。
お金の面では、自分の仕事部屋がいるので、家賃が高くなりますね。
税金も国民健康保険も高くて、大変です。
Bさん(元無職):
やっぱり家族がいると、収入に対しての責任があるので、お金の心配は大きいですね。
僕ひとりだったら、そこまで気にしないんですけど。
月収が、生活に必要な金額を下回ると、焦ります。
でも、必要以上に悩んだりはしません。
いざとなったら、他の仕事をすればいいし、なんとかなると思っています。
Cさん(元上場企業):
フリーランスで困ったことは、とくにないですね。
問題があっても、「困る」というふうには、考えないです。
あ、平日の昼に子どもを公園に連れて行くと、まわりが若い奥さんばかりで、おばあちゃんに「いい身分やね」と言われたりはしますけど(笑)。
あと、夜はほとんど出かけないので、平日の昼に遊ぶ相手がいないことぐらいですね。
Dさん(会社員と兼業中):
家族からの拘束時間が増えたことです。
前は会社に拘束されてたのが、今は家族の割合が多くなった。
会社に拘束されてるほうが、責任があるようで実はあまりないから、ラクでした。
子育てには、仕事以上のプレッシャーがありますね。
自分の行動が、すべて子どもに影響を与えてしまいますから。
取引先と違って、自分に合わせてくれない家族は、なかなか思い通りになりません(笑)。
フリーランスになって夫婦の時間が増えた
── 前回のフリーランスママ座談会では、夫婦ともに在宅フリーランスなのに、家事をしない旦那さんの話が出ました。
みなさんの家庭では、家事・育児の分担はどうしていますか。
Aさん(元コンピュータ関係):
うちは、役割を決めて分担しています。
家事と育児の間に細切れに仕事して、夜に1時間ほど、妻とテレビを見るのが自分の時間です。
夜に出かけるのは月に1度ぐらいですが、育児が大事なので、そんなものかなと思います。
ただ、お互いの子育てのやり方が目に見えるので、価値観の違いによるケンカが増えましたね……。
夫婦で、常に話し合ってはいるんですけど。
Bさん(元無職):
子どもが卒乳してから、妻の調子が悪いこともあり、育児は全部自分がやっています。
家事は2割ぐらいやりますね。
子どもが保育園に行っている間に、仕事しています。
子どもが寝たあとにお酒を飲むのが、1人の時間です。
Cさん(元上場企業):
うちは、とくに分担していません。
お互いに、そのときできる方がやります。
育児もふたりでやりますけど、子どもの服のチョイスだけは、妻がやってます。
僕がやると気に入らないみたいで、そういう「相手に任せたほうがいいな」ってことだけは、妻にお願いしてます。
Dさん(会社員と兼業中):
妻は、外で働くのが好きで、フルタイムで仕事してるんですよ。
だから、平日は僕が家事と育児をやって、土日は妻がやる、という分担を考えてたんですけど……僕がほぼ全部やってますね(笑)。
子育てに関しては、子どもには母親との時間も必要だから、やってほしいと思います。
でも、妻は仕事で疲れちゃってる。
昔は僕が忙しくて、子育てにまったく関知しなかったのが、今は逆転してます。
でも、自分がそうだったから、妻の気持ちもわかるんですよ。
僕が働き方を変えてから、夫婦の時間は増えましたね。
前より、ふたりで出かけるようになりました。
フリーランスは、好きなことが選びやすい
── フリーランスの仕事は、収入に保証があるわけではないですが、今後も続けたいと思いますか?
Aさん(元コンピュータ関係):
ずっとやりたいです。
年齢的にも、40代なので、もう戻れないと思ってます。
経済的に本当に大変になったら、ほかの仕事を考えますが。
今の仕事が好きだから、続けるために頑張っています。
Bさん(元無職):
一生、やっていきたいですね。
家族に対する責任があるから、一時的にほかの仕事をすることはあるかもしれません。
でも、生活できる収入がある限りは、フリーランスでいたいです。
Cさん(元上場企業):
僕も続けたいです。
会社員になっても、収入が増えるわけではないので。
もし本当に生活できなくなったら、なんでもしますけど。
僕は、仕事が遊びみたいなものなので、ずっと続けたいです。
仕事も育児も、自分がやりたいことにしてしまえば、切り分けて考える必要はないと思ってます。
もちろん、会社の中で自分がやりたいことを、見つけることもできます。
でも、フリーランスはとくに、自分が好きなこと、やりたいことが選びやすいですね。
Dさん(会社員と兼業中):
僕は、いずれ会社員かフリーランスのどちらかに絞りたいですね。
ずっと二足のわらじはしんどいです(笑)。
会社員は、固定収入や社会保険など、安定感がある。
フリーランスは時間が自由で、やったらやっただけ、お金が入る。
最後はフリーランス1本になるかな? と思ってます。
下の子が大学を出るまでは、がんばりたいですね。
そのあとは、もう引退したいです(笑)。
妻とのんびり旅行したい。
── Dさんは、いろんな仕事をされてますが、そのエネルギーはどこから来るのですか?
Dさん(会社員と兼業中):
僕がずっと取り組んできたのは、収入源を複数持つことです。
そうすると、どれかの調子が悪くなっても、ほかがあるので、気持ちの面で安定します。
例えば、1つの仕事の中でも、複数のタスクをこなす必要がありますよね。
それができるなら、複数の仕事をこなすことも、できるはずです。
自分の中で「これとこれとは、別のことだ」と思うから、難しくしちゃう。
でも、やることが決まっているのだったら、あとはそれをどう配分していくかです。
「私にはこれしかできない」というのは、自分がそう思っているだけかもしれない。
やらなければいけないことを、やりたいことに変えていく
── 「複数の仕事」の中に、家事や育児も入っているんですね。
そうです。
さっきCさんも言ってましたけど、自分のやってることを、好きになることが大事だと思います。
家事も仕事も「やらなければいけないことを、やりたいことに変えていく」のが生き方のコツかなと。
そうすると、結果的にやりたいことだけになっていくんですよ。
家事だって、めんどくさいに決まってるけど(笑)、いやいや続けてると、ストレス溜まって早く死んじゃいそうだし。
Cさん(元上場企業):
まあ、それでいったん「好きになろう」と思ってやってみて、どうしても合わないことは、きっと自分の仕事じゃないんですよ。
そうなったら、やめたらいいと思います。
座談会を終えて
フリーランスで働くパパたちの話を聞いて、想像よりもはるかに、家事や育児を大切に考えているんだなと思いました。
同時に、家族に対する経済的な責任感が強いことも、言葉の端々から感じました。
ここで語られているフリーランスパパの生活は、あくまで一例です。
しかし、今どうしても仕事が「合わない」と感じている人にとっては、生き方のヒントになるのではないでしょうか。
人生は、仕事だけで進むのではありませんよね。
自由だとを感じられる生き方を、探してみてください。