大学生や大学院生なら、大学生活の中で卒業論文などの論文を書くことがあるかと思います。
初めて論文を書くときは、「論文ってどうやって書けばいいの?」、「どうやってテーマを見つければいいの?」と迷うのではないでしょうか。
ぼくも同じように悩みましたが、解決する方法はシンプルで、「論文の書き方やテーマのお手本となる論文を探し、読むこと」です。
このページでは、手本となる論文を探すための便利なツールである論文検索サービスを紹介していきますね。
ネットを使うことで、時間やお金に節約につながりますよ。
論文が目指すのは、特定の問題に答えを出すこと
まず、論文を書くにあたっては、「論文とは何か」という基本を知っておく必要がありますね。
別府大学で日本語学を研究している内山和也先生の言葉を引用します。
作文とは、経験や体験に基づいて自分の意見や考えを書いた文章である。
論文とは、理論に基づいた自分独自の主張を論理的に書いた文章である。
(中略)
論文が目指すのは、《特定の問題に答えを出すこと》である。
つまり論文は、問題を提起して、結論を示すものです。
なぜ、論文を書くために論文を探す必要があるのか?
そのため、論文を書くためには、論文を探す必要があります。
証拠としての論文
上でも言ったように、論文は問題を提起して、誰にでも伝わるような形で結論を導くものです。
そのために、結論と合わせて、その結論が正しいことを保証する確かな「証拠」が必要になります。
その証拠は、もちろん自分でおこなったアンケート調査や実験の結果を使うこともあれば、他の人が残した結果を、論文の引用という形で使うこともあります。
論文の中で言及した論文や本は、文章の最後に「参考文献」という形でリストアップすることになっています。
どんな論文も、他の人が書いた論文を必ず使っているということですね。
先行研究としての論文
先ほど論文は、自分独自の主張を書いた文章であるということを確認しました。
自分の問題提起や主張がオリジナルであるかどうかは、それまでに行われてきた研究を知らなければ判別できませんよね。
ある分野でこれまでおこなわれてきた研究は「先行研究」と呼ばれています。
先行研究は、他の人の論文を読まなければ知ることができません。
だから自分の研究テーマに合わせて、先行研究を調べる能力が必要となります。
ぼくが論文検索サービスを使い始めたきっかけ
論文を書くために、まず論文を探しましょう。
ぼくは、このことを大学の研究室(ゼミ)の先輩に教えてもらいました。そのときのことを、少し紹介しますね。
はじめて研究室に所属し、研究室の先輩と初めて顔を合わせた日に、「先輩は、どうやって論文のテーマを見つけたんですか?」と尋ねました。
そして、図書館の中で、論文雑誌が置かれている場所に案内してもらいました。
一つひとつの論文は、分野や学会ごとに雑誌としてまとめられているんです。
学会とは、研究成果を発表し、その科学的妥当性をオープンな場で検討論議する場のことです。
しかしテーマを見つけるためとはいえ、何十巻もあるような論文の雑誌を見ていたら、時間がいくらあっても足りません。
そんなときに紹介してもらったのが、ネットを使って簡単に論文を探せる論文検索サービスでした。
代表的な論文検索サービス
では、代表的な論文検索サービスである「CiNii(サイニィ)」と「Google Scholar(グーグルスカラー)」を紹介していきます。
国内大学の論文を調べやすいCiNiiとは?
引用:CiNii
CiNiiは、国立情報学研究所(NII)が運営する論文検索サービスです。
論文データは1,900万件以上、論文本文は400万件以上収録されています。
CiNiiは無料で利用できて、論文のほか、図書や雑誌、博士論文も検索できます。
特にCiNiiの機能は、以下の3点に分かれています。
日本の論文を探すCiNii Articles、大学図書館の本を探すCiNii Books、博士論文を探すCiNii Dissertationsです。
検索のためのデータベースとして、国立情報学研究所が集めた「日本の大学の論文に関するデータベースがある」のが特徴ですね。
英語の論文を見つけるのにおすすめのGoogle Scholarとは
Google Scholarは、検索エンジンサービスGoogleが提供する論文検索サービスです。Scholar(スカラー)は、日本語で論文を意味しています。
検索結果をどのような順序で表示するかを決めるために、Google Scholarはすべての論文をランク付けして評価しているんですね。
このランクは、研究者がランク付けするのと同じように、著者や引用数などの情報から推定されています。
CiNiiは日本語の論文を見つけることに特化しているのに対して、Google Scholarはどちらかというと「英語の論文を見つけやすい」という特徴があります。
論文検索サービスの使い方
前提:すべての論文がウェブで閲覧できるわけではない
論文検索サービスの使い方を紹介する前に、ひとつ注意しておきたいことがあります。
現在、多くのウェブページは無料で読むことができますが、論文はそうとは限りません。
会員制で有料の論文もあれば、そもそもウェブで閲覧できない論文もあります。
論文検索サービスで読みたい論文が見つかってもその場で閲覧できないときは、所蔵図書館の情報を見て、その論文を大学の図書館へ取り寄せるという原則を忘れないでくださいね。
CiNiiの使い方
さて、検索サービスCiNiiの使い方を紹介していきます。
引用:CiNii
論文のタイトルやキーワードで調べるときは「論文検索」を、研究者の名前で検索するときは「著者検索」を選びましょう。
また、ウェブですぐに読める論文を探したいときは、「CiNiiに本文あり」をクリックします。
さらに詳しく条件を設定するときには、「詳細検索」をクリックしてメニューを表示させます。
今回は、キーワードを「地方創生」に設定し、「2000年」以降に出版された論文を検索しました。
引用:CiNii
検索結果には、論文のタイトル、著者、雑誌名、アクセス権限が表示されています。
引用:CiNii
「CiNii PDF – オープンアクセス」と表示されている論文をクリックすれば、その場で論文のPDFを閲覧できますよ。
Google Scholarの使い方
メニュー画面が英語になりますが、Google Scholarの使い方も、CiNiiと基本的には一緒です。
例えば、「Local Economy(地域経済)」というキーワードで検索してみましょう。
検索バーの下に書いてある「include patents」は特許を検索に含むかどうか、「Case law」は法的にも認められていることを示す判例を検索に含むかどうかを意味しています。
検索バーの右側にある黒い三角▼をクリックすると、検索オプションが表示されます。
検索結果には、論文のタイトル、著者、雑誌名、出版年度、論文の概要などが表示されていますね。
タイトルの右側に[PDF]という表示がある論文は、ウェブ上でそのまま読むことができますよ。
「Cited by 53」という数の表示は、その論文が他の論文でどれくらい引用されているかを示しています。
「Cited by」の部分をクリックすれば、その論文を引用している論文をすぐに検索できるのも便利な機能ですね。
さいごに:論文検索サービスで、論文を書くためのお手本となる論文を見つけよう
論文検索サービスを使えば、無料ですぐに自分の興味ある分野の論文を読むことができます。
実際にいくつか論文を読んでみれば、「どんな風に論文を書けばいいか」、「自分の興味のあるテーマやキーワードについて、どんな研究があるか」がわかりますよ。
論文を書くことに困ったら、まず論文検索サービスを使ってみてはいかがでしょうか?
探すことでヒントが見つかるかもしれませんよ。