「これはなんでもできるぞ、と思った」獣医学生が失った分だけ見つけた本当にやりたいこと

くいしんの画像

今年(2017年)の3月に大学を卒業された「まだらー」こと班目 美紀(まだらめ みき)さん。

中学時代からの夢を追いかけ、大学は獣医学科へ進学をしたまだらーさんは、多忙な獣医学生活を送りながらも学外の活動やアルバイトに励み、とても充実した学生時代を過ごしたそうです。

現在は自分が本当にやりたいことに向かって、社会人への第一歩を踏み出そうとしているところ。彼女はいったいどんな学生時代を経験し、これからの自身の人生に対してどう向き合っていくのでしょうか?

「神奈川の逗子が好き」

「ディズニーの年間パスポートを持っています」

そんなまだらーさんに、これまでの人生とお金に対する考え方について聞いてみました。

まだらーさんインタビュー

インタビュー日:2017年3月16日(木)

班目 美紀(まだらめ みき)さん

獣医学科に進学した理由

── まだらーさんは僕が普段編集や執筆をしている「灯台もと暮らし」のイベントに来てくれて、そのときに初めてお会いしました。

まだらー:
はい! そうです。

── 先日はイベントに来てくれてありがとうございました!

まだらー:
いえいえ。こちらこそ楽しかったです。ありがとうございました!

── そのときに「獣医学生なんだけど、今後はいろいろ目標があって」というお話をうかがって、獣医学生はどんな生活をしているのかとか、お金に対してどう思うのかって気になっちゃって。

まだらー:
ありがとうございます。

── 先日お会いしたときはまだ6年生(獣医学科は6年制)だったかと思うのですが、今は・・・?

まだらー:
大学は3月に卒業しました。今は、ベンチャー企業でwebメディアの立ち上げを手伝ったり、会いたい人に会いに行っています。

── ご卒業、おめでとうございます。まずは、簡単な自己紹介をお願いしてもよろしいですか?

まだらー:
班目 美紀と申します。現在は24歳で生まれも育ちも東京です。まだらーって呼んでください!

── はい!(笑)。獣医学科をご卒業されたということは、春からは獣医になるんですか?

まだらー:
獣医にはならず、他の職業で生きていこうと思っています。

国家試験に落ちてしまったというのもあるんですけどね(笑)。でも、それはきっかけにしか過ぎなくて。

いまはやりたいことに向き合えるようになりました。

もともとは中学の頃から獣医になりたくて、獣医学科のある大学に進学したんですよ。

── 獣医を目指したきっかけってありますか?

まだらー:
父が福島県出身なんですけど、父の実家では犬とかニワトリとかリスとか、たくさんの動物を飼っていて。

── すごい。たくさんですね。

まだらー:
そうなんです。遊びに行くたびに動物と触れ合うことができたんです。それが動物を好きになったきっかけですかね。

あとは、子供の頃から公園で他人の犬とかを見ると駆け寄って行っちゃうタイプだったんで、無意識に好きだったんだと思います。

獣医を目指そうと思ったのは自分が犬を飼うようになってからです。「この子が死ぬときに後悔したくない」って思ったんですよね。

── 後悔したくない、とは?

まだらー:
多くの動物はどうしても人間より早く死んでしまうので、人間が看取らないといけません。そのときに「もう少し早く動物病院に連れて行ってあげたら・・・」と思う後悔だったりとか。

でも獣医になって最善を尽くせたら、少しは納得できるのかなって思ったんですよね。最終的には人間が納得できるかどうかなのでは?と、自分に問いかけたことが獣医を目指したきっかけです。

関心ごとにとにかく飛び込んだ

班目 美紀(まだらめ みき)さん

── 大学時代は、勉強の他にアルバイトやサークル活動などはされていましたか?

まだらー:
獣医の学生団体で広報をしたり、東北復興のボランティアに参加したり、カンボジアのスタディツアーをしたり、就活生向けのシェアスペースの運営をしたりといろいろな学外の活動に勤しんでいました。

── とても活動的ですね。それに伴いお金もたくさんかかりそうです。

まだらー:
お金はかかりましたね。特に大学1年生の頃はダンス部にも所属していたので、本当に忙しくて。土日に学生団体の活動が入ってしまうのでシフトに全然入れないという悪循環になっていました。

だから、数万稼いだらその月に数万使ってしまうような、ギリギリの状態のときもありました。

── なるほど。それでもやってきてよかったことってありますか?

まだらー:
学生団体に入ってよかったと思うのは、獣医という仕事の職域や他の仕事について興味関心の幅を広げられたことですね。

学生団体では広報を担当していたのですが、自分の団体を広めるために、他の学生団体を見て勉強していたんです。

そしたら、獣医以外のことにもいろいろ興味を持つようになったんです。アルバイトやインターンもそういう興味や関心が入り口でした。

── どんなアルバイトをされていたのかお聞きしたいです。

まだらー:
まずはパン屋さんから始めて、テニスショップ、コワーキングスペースの受付、就活生用のシェアスペース、建築事務所、会員制ラウンジ・・・。

本当にいろいろなことをやりました。

あとは、途中デザインをやっていた時期があったので、プレゼン資料の制作とかホームページの制作をちょっとだけやったりとか。

平日が多忙だったのでアルバイトは主に土日やっていて。朝6時から19時までとかやりましたね(笑)。

班目 美紀(まだらめ みき)さん

まだらー:
だけど、お金のためにやっていたというよりは、自分がやってみたくて、どの仕事もやりたくてやっていたので、楽しかったです。

── 様々な活動をしていく上での資金というのが大きいと思うのですが、お金は何に使うことが多かったですか?

まだらー:
交際費や交通費に使うことがほとんどなんですけど、あとはNEWSですね。

── あっ、ジャニーズのグループのNEWSですか?

まだらー:
そうです。いわゆる中学の頃からジャニオタで(笑)。もともとは嵐のファンでした。

ただ、嵐はチケットが取れなくて。そのうち自分が多忙になってテレビ番組を追えなくなっていったことがきっかけで嵐ファンはやめてしまいました。

グッズを買ったりコンサートに行ったりしていて、大学4年生の頃からNEWSにハマりました。

── 中学の頃からジャニーズにお金をかけてた感じですか?

まだらー:
中学の頃は受験もあったので、CDはたまに買っていたくらい。コンサートに行き始めたのは高校からですね。

班目 美紀(まだらめ みき)さん

これまでの人生でした高い買い物

── 大学6年間の間になるかと思うのですが、自分が買ったもので一番高いものってわかりますか?

まだらー:
パソコンですね。Macを買いました。あんまりお金を貯められなくて(笑)。

── パソコンの次はなんでしょう?

まだらー:
あっ、最近「ディズニーの年パス」を買いました(笑)

── ディズニーリゾートの年間パスポートですね! ランドとシーどちらもですか?

まだらー:
両方ですね。9万円くらいです。

── ディズニーランドっていま高いですよね。何回くらい行くと元がとれるものなんですか?

まだらー:
だいたい月に一回くらい行けば元とれると思います。買ってからは、週一くらいで行ってますね(笑)。

── えぇー! そんなに(笑)。 アトラクションが好きなんですか?

まだらー:
ショーですね。観たいショーに合わせて行って、観て帰ってきます。もともと習い事でゴスペルをやっていて、中学のときは演劇部だったので、演劇とか舞台とか見るのが好きなんです。

ミュージカルを一本観に行くのってすごく高いんですよ。一回一万円とかですよ。だったらディズニーに行って年間パスポートで観たほうが安上がりです(笑)。

オタク気質が逗子を手放さなかった

── 僕は神奈川出身なのですが、まだらーさんは神奈川の逗子がとてもお好きだと聞いたのですが、なぜ逗子なんでしょう?

まだらー:
東京生まれ東京育ちでずっと実家暮らしというのもあって、衣食住について自分が考えたときに「住」だけイメージが湧かなかったんです。

洋服も食べるものも好きなものを取り込めばいいという考えだったんですけど、住む場所は、東京にしか住んだことがないので、選べなくて。

あるとき就活生向けのシェアスペースをやっていたメンバーや東北復興のボランティアのメンバーたちと一緒に「リノベーションスクール」というイベントに参加したことがありました。

そこでは対象物件が与えられえて、「リアルな物件をどうリノベーションしていくか、エリア全体をどう変えていくか」といったことを考えたんです。

その活動を通して、「あっ、住む場所は自分で選べるし、自分でつくれるんだ」ということに気づきました。そこから波及して地域づくりみたいなものに繋がっていくことも知って、おもしろいなぁと思ったんですよね。

班目 美紀(まだらめ みき)さん

── どの地域に住むのか、あるいはつくっていくのかということについて関心を持ったんですね。

まだらー:
はい。それで、たまたまリノベーションスクールで出会った人と数ヶ月後に付き合い始めたのですけど、その人が逗子を好きだったんです。

その人が逗子に引っ越すと言ったので、私も逗子を見に行ったんですけど、そのとき逗子の人が優しかったんですよ。

東京にいるとお店でも「いらっしゃいませ」の一言で終わるのが普通ですけど、逗子ではフランクに話しかけてくれる人が多かったのが嬉しく感じて。

それで「私も逗子、好きだな。海も好きだし」って思いました。でも、その人とは結局別れてしまったんですけど。

── 別れてしまった人がいる場所ってもう嫌になったりしないですか?

まだらー:
ずっとジャニオタをやっていたので自覚があるのですが、オタク気質な人って追求しないと気が済まないんですよ(笑)。

だから、せっかくいま「逗子に住みたい!」って情報を集めていて、素敵な人もいるんだなって知り始めているのに、元彼が理由でそれが変わったりすることはないんですよね。

班目 美紀(まだらめ みき)さん

稼ぐよりもやりたいことをやるイメージ

 

── 冒頭で獣医以外に今はやりたいことに向き合っているという話があったんですけど、今後やっていきたいこととはずばりなんですか?

まだらー:
恋人との別れや国家試験に落ちたことで、獣医という選択肢にとらわれずに、今は逆に「これはなんでもできるぞ」と思っていて。

しばらくはやりたいことを仕事にしたいです。

── やりたいこととはなんでしょう?

まだらー:
ライターです。もともとメディアを立ち上げたいという気持ちは持っていて。

メディアを通していろんな生き方や働き方を知ってもらってみんなが生きやすくなったらいいなって考えているんです。

ライターをやりたいのは、大学時代獣医の領域で学んでいくうちに、あることに気がついたからで。

馬とか牛とかいろんな動物がいる中で豚だけ「臭い」とか「うるさい」とかいう理由でないがしろにされている気がしたんですよ。

それで「なんで豚が嫌いな人が多いんだろう?」と疑問に感じて、宮崎の養豚場に実習に行きました。そこでは農家さんがすごく愛情を込めて豚を育てていて、そのあとに食べた豚肉がとても美味しく感じられたんです。

きっとそれは、つくり手の方が愛情をかけてきた過程を見た上でいただいたからなんだなって思って、そういうことを伝えたいと思いました。

振り返ってみると、これまでやってきた学生団体や東北復興のボランティア、就活生向けのシェアスペースの運営なども全部「人の想いを伝えたい」という思いが根底にあったからなんだって気づいたんです。

── ライターとして働いていくイメージはすでにあるんですか?

まだらー:
国家試験に落ちたことを周囲に言ったら、ありがたいことに大学時代からの繋がりで「うちで働く?」と言ってくれる方もいて。

それには感謝しつつ、でも今はやりたいことに集中する時期かなとも思っていますね。

文章を書く方向だけを選択していきたいなって考えてます。お金よりもやりたいことを優先させたいんです。

── やりたいことができるならお給料は最低限でいい、って感じですか?

まだらー:
そうですね。もともとそんなに贅沢な暮らしをしているわけではないですしね。ひとりでお昼ご飯を食べるときは、コンビニでおにぎり一個買えばいいみたいな感じです(笑)。

でも友だちと一緒にいるときは躊躇せずにお金を使いたいとは思ってます。あとはさっきも言いましたが趣味でゴスペルを習っているんですけど、そういう好きなことにお金を使うことに関しては積極的にしていきたいです。

でももちろん「お給料が上がる」というのは、能力が上がっていることで「社会に対する価値をちゃんと提供できている証明」だとは感じています。そういう意味では、ライターだけで食べていけるくらい成長したいなって思ってます。

【編集後記】インタビューした感想

班目 美紀(まだらめ みき)さん

中学の頃から目指していた獣医になるため、獣医学科のある大学へ進学。

獣医の学生団体をはじめ多様なコミュニティに所属し、社会との接点をたくさん持っていく中で、自分の本当にやりたいことを見つけたまだらーさん。

インタビューの中でも触れましたが、獣医になる将来ではなく「本当にやりたいこと」を選択したことは、もしかしたらとても勇気がいる決断だったかもしれません。

これは、国家試験に落ち、恋愛も一区切りを迎え、まっさらになった状況で「これはなんでもできるぞ」と思えたまだらーさんだからこそ、選択できたひとつの答えなのではないでしょうか。

「逆境をチャンスに」と言うのは簡単ですが、自身の体験をもとに実行していくことは、簡単ではありません。

まだらーさんのこれまでの考え方やこれからやってみたいことを語ってもらうことができた今回の記事が、同じようにやってみたいことがある方や、やりたいことを模索している方に届いていたらうれしいな、と思っています。

ノマド的節約術の裏話

ブログでは公開していない情報をメールやLINEで受け取れます。無料で登録可能ですので、下記のボタンよりお気軽にご登録ください!

この記事を書いた人

フリーの編集・ライター・PR。「灯台もと暮らし」編集部。1985年、神奈川県小田原市生まれ。高校卒業後、レコード店員、音楽雑誌編集者、webディレクター、web編集者を経て、個人事業主に。お金の価値観は「使って回そう」。ノマド的節約術では主にインタビュー記事をつくっています。