年金には、老齢年金・遺族年金・障害年金の3種類があります。
年金と聞くとつい老後のことをイメージしがちですが、年金は老後のためだけのものではないんですよ!
自分に何かあったときには遺族に年金が支払われますし、家族に何かあったときには自分が遺族年金を受け取ることになります。
でも、必ずもらえるものではありません。そしてもらえるとしても、十分な金額がもらえるとは限りません。
このページでは、遺族年金について知っておいてほしい基礎知識を紹介していきますね。
遺族年金とは?遺族年金の仕組み
遺族年金とは、死亡した際に遺族が受け取れる年金のことです。
国民年金や厚生年金などに加入している人が対象となります。
老齢年金・遺族年金・障害年金はそれぞれ別物ではなく、国民年金や厚生年金に加入していれば受給できるものなので安心してくださいね。
ただし、生命保険会社で加入している個人年金については別物なので注意してください。
厚生年金に加入している期間がある人は、遺族基礎年金(国民年金)と遺族厚生年金が受給できます。
自営業の場合は国民年金基金などを利用することで年金額を増やせますよ。
遺族年金がもらえるのは誰?
遺族年金の対象者は、国民年金と厚生年金で条件が異なります。
それぞれ見ていきますね。
遺族基礎年金(国民年金)の対象者
下記いずれかに該当する場合に受給できます。
- 18歳までの子供
- 20歳未満で障害年金の障害等級が1・2級の子供
- 子供がいて、前年の年収が850万円未満の配偶者
- 子供がいて、前年の所得が655.5万円未満の配偶者
※「18歳までの子供」は、18歳になる年度の3月31日まで受給できます。
夫が亡くなった場合でも妻が亡くなった場合でも、条件がクリアできていれば受給できますよ。
ただし、子供がいない場合は支給されないという点に注意しましょう。
遺族厚生年金の対象者
遺族厚生年金は少しややこしいので、分けて紹介しますね。
妻が対象となる場合
- 前年の年収が850万円未満
- 前年の所得が655.5万円未満
子供の有無は関係ありません。
ただし、子供がいなくて夫死亡時に30歳未満だった場合は、5年間だけの支給になります。
夫が対象となる場合
- 妻死亡時に55歳以上で、前年の年収が850万円未満
- 妻死亡時に55歳以上で、前年の所得が665.5万円未満
ただし、受給できるのは60歳からです。子供がいる場合は55歳以上60歳未満でも受け取れます。
子供や孫が対象となる場合
- 18歳までの子供・孫
- 20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の子供・孫
父母・祖父母が対象となる場合
- 55歳以上で前年の年収が850万円未満
- 55歳以上で前年の所得が655.5万円未満
ただし、受給できるのは60歳からです。
遺族年金はいくらもらえる?受給金額について
詳細な金額については、「ねんきんネット」で確認できます。
利用登録が必要なので、基礎年金番号を手元に用意した上で申し込むといいですよ。
ねんきんネットを利用するためのログイン情報は申し込み後に郵送で届きます。
以下からは、年金額の決まり方を紹介しますね。
受給できる金額は遺族基礎年金(国民年金)と遺族厚生年金で違うので、それぞれ解説していきますね。
遺族基礎年金(国民年金)は年額約80万円~
遺族基礎年金の年金額はこのようになっています。
※2016年2月現在
第1子・第2子は1人につき224,500円が加算されます。
第3子以降は1人につき74,800円が加算されます。
たとえば配偶者+子供2人の場合はこうなります。
1か月あたり約10万円ですね。
もし配偶者がおらず、子供2人だけの場合はこうなります。
1か月あたり8万円強ですね。
遺族厚生年金は報酬比例部分+加算で決まる
遺族厚生年金として受給できる金額は、これまでのお給料の金額に応じて決まる部分と、条件によって加算される部分で決まります。
報酬比例部分は「ねんきん定期便」で確認できる
毎年送られてくる「ねんきん定期便」。ここの数字をもとに計算できます。
これまでの年金加入期間のうち「厚生年金保険 計」と、「老齢厚生年金」の金額、2つに注目です。
月数が300以上の人は、記載されている金額の4分の3が見込み額となります。
月数が300未満の人は、これを300月で計算しなおすことで、遺族厚生年金の報酬比例部分の金額がわかります。
中高年の加算が年額585,100円
以下のいずれかの条件に当てはまる「妻」は、中高年の加算として40歳~65歳までのあいだ年額585,100円が加算されます。
- 夫が亡くなったとき40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が遺族基礎年金を受給できなくなったとき
2番目の条件は、わかりやすく言うと「子供が小さくて遺族基礎年金と遺族厚生年金を受けてたけど、子供が18歳(障害がある子は20歳)になって受給要件を満たさなくなってしまった場合」ということです。
経過的寡婦加算は昭和31年以前生まれの人向け
もう1つ、遺族厚生年金の加算として「経過的寡婦加算」というものがあるのですが、こちらは働き盛りの世代の方や、さらに若い方には関係の無いところです。
昭和31年4月1日以前生まれの方は関係してくる可能性があるため、社会保険事務所等で確認されてくださいね。
遺族年金は一生もらえるわけではない!
遺族年金の対象者や金額はわかったけど、それがいつまでもらえるのか?ということも気になりますよね。
遺族年金は一生もらえるとは限りません。
遺族年金の対象となる条件を満たさなくなったら、遺族年金の支給も終了するんですよ。
たとえば子供や孫で遺族年金の対象になっている場合、対象となる年齢を過ぎるともらえなくなります。「子供がいる配偶者」も同じですね。
また妻の場合、前述したとおり「夫死亡時に30歳未満で子供なし」の場合は遺族厚生年金は給付期間が5年のみとなっています。
遺族年金は「未納」があるともらえない可能性も!
国民年金や厚生年金の保険料を払っていても、必ず遺族年金を受給できるとは限りません。
以下の条件を満たしている必要があります。
未納が全期間の3分の1未満であること
加入期間のうち、未納期間が多いと遺族年金が受給できません。
滞納している分が全期間中3分の1以上ある場合は受給資格がなくなってしまいます。
過去1年間のうちに滞納がないこと
正確にはこのような条件になります。
ただし令和8年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。
ちょっと分かりにくいですが、3月に死亡したとしたら、そこからさかのぼって1月から前年2月までの期間に、未納が無ければOKです。
未納と免除は違います!免除申請しておきましょう
お給料から勝手に引いてくれる厚生年金とは違い、国民年金だと支払いが遅れたり、また放置してしまっている人もいますよね。
でも、払えないからと言って放置するのはNGです。
未納・滞納というのは、「本来払うべき保険料を払っていない状態」を差します。
一方、経済的な事情などで納付が難しい場合、免除制度が利用できます。
免除制度は4分の1免除から全額免除まで4種類あり、申請して認められれば、正式に免除となります。
未納・滞納と「免除」はまったく扱いが違いますから、免除申請しておくのがおすすめですよ。
遺族年金だけで生活費は足りる?シミュレーションしておこう
遺族年金に限らずこうした制度というのはわかりにくくて、つい「まぁなんとかなるだろう」なんて気軽に考えてしまいますよね。
でも、もしあなたに何かあったとき、もしくは配偶者に何かあったとき、遺族の生活費は十分に確保できているのでしょうか?
未納はありませんか? 計算した金額は十分な金額だと思えましたか?
もし未納があるなら早めに納めることをおすすめします。
もし金額が少なく遺族の生活が成り立たないと感じるなら、生命保険で補うことも考えたほうがいいでしょう。
生命保険についての記事も書いているので、遺族年金だけで不安な方はチェックしてみてくださいね。