日本では、働いて収入を得ると、所得税や住民税を払わなくてはなりません。
でも、学生の場合は所得税や住民税が安くなる制度があるんです!知ってるか知らないかで大違いになってきますよ。
それが、勤労学生控除です。
このページでは、どういう人が勤労学生控除を受けられるのか、どれぐらいお得なのかを解説していきますね。
勤労学生控除の仕組み
勤労学生控除とは、働いている学生に対して、所得税などの税金を少し安くできる制度のことです。
以下の条件を満たす人であれば、27万円の勤労学生控除が受けられますよ。
勤労学生控除の対象となる人
勤労学生控除が受けられるのは、以下の条件すべてに当てはまる人です。
(1) 給与所得などの勤労による所得があること
(2) 合計所得金額が65万円以下(令和2年分以降は75万円以下)で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
例えば、給与所得だけの人の場合は、給与の収入金額が130万円以下であれば給与所得控除65万円を差し引くと所得金額が65万円以下となります。
(3) 特定の学校の学生、生徒であること
この場合の特定の学校とは、次のいずれかの学校です。
イ 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など
ロ 国、地方公共団体、私立学校法の第3条に規定する学校法人、同法第64条第4項に規定する法人、これらに準ずる一定の者(注1)により設置された専修学校又は各種学校のうち一定の課程(注2)を履修させるもの
ハ 職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程(注2)を履修させるもの
ちょっと分かりにくいですよね。簡単に言ってしまえばこういうことです。
- 年収130万円以下
- 高校生や大学生など
条件を満たしているか分からない人は
アルバイト収入以外にも収入源を持っている人、専門学校に通っている人など、勤労学生控除の対象になるかどうか分からないケースもありますよね。
そういう人は、このように確認するのがおすすめです。
収入源が複数ある人は税務署で確認しよう
アルバイトなどの給与収入以外にも収入がある人は、最寄りの税務署に確認してみてください。
給与所得以外の所得が10万円以下、という決まりがあるのですが、これは「副収入が10万円以下」という意味ではありません。
よく分からないなという人は、素直に聞いてみることをおすすめします。
通っている学校が対象になるかは学校へ確認を
高校や大学なら当然対象になります。
しかし、専門学校・スクール系になると、対象になる学校とそうでない学校があるんです。
勤労学生控除の対象になるかどうかは学校に確認するのが確実ですよ。
勤労学生控除で所得税はいくらになる?
勤労学生控除を使うことで所得税がいくらになるのか、所得税の仕組みとともに見ていきましょう。
住民税も基本的な計算方法は同じですが、自治体により微妙に異なるのでここでは割愛しますね。
所得税の仕組み
同じお給料でも、人によって所得税は違います。
たとえばこんな理由があれば、所得税は安くなりますよ。
- 家族を養っている
- 入院などで医療費が高くついた
- 生命保険に加入している
それぞれ、扶養控除、医療費控除、生命保険料控除といった名称がついています。
たとえば、独身の人と家族を養っている人とでは、家族を養っている人のほうがお金にゆとりがなくなりますよね。
「支出が多くなる分、所得税は軽減する」というのが控除の役割です。
そんな控除の一種が、勤労学生控除なのです。
例:年収120万円だった場合
実際に、勤労学生控除を使うとどれぐらい安くなるのか? 知りたいですよね。
ここでは、年収が120万円だった場合を例に見ていきましょう。
給与所得控除はこの場合65万円ですので、合計所得金額は55万円。
勤労学生控除の対象になりますね。
合計所得金額からさらに、控除できるのが以下の2つです。
- 基礎控除 38万円
- 勤労学生控除 27万円
基礎控除とは、誰でも使える基本的な所得控除です。
基礎控除と勤労学生控除の合計は55万円ですよね。
それをもとに計算してみると・・・
=0円
結果が0円になったので、所得税は非課税になります。
もし勤労学生控除が無ければ、上記の式でも基礎控除38万円しか引くものがありません。
勤労学生控除が無い場合の所得税は、13,500円になります。
確定申告するとなると半日ほどかかることもありますが、1万円以上の税金を取り戻せるなら、やらない手はありませんよね。
勤労学生控除を受けるための手続き
では、どうやって手続きすればいいのかが気になりますよね。
勤労学生控除は、放っておいても適用されるわけではありません。手続きが必要です。
年末調整と確定申告の違い
- 年末調整:職場で所得税の計算をしてくれる仕組みのこと
- 確定申告:年末調整を受けていない人がする手続きのこと
年末調整はその名の通り、年末におこなわれます。
年末調整がおこなわれる場合は年末調整用の書類が配布されます。
年末調整用の書類はが配布されていない場合は確定申告をすることになりますよ。
詳しいやり方を以下から見ていきましょう。
年末調整を受ける人の手続き
年末調整を請ける場合は簡単です。ややこしい手続きは会社でやってくれるんです。
年末が近づいてくると、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書という書類が配布されます。
勤労学生と書かれているところに丸をつけます。
そして、詳細として以下の内容を記入してください。
- 学校名
- 入学年月日
- 所得の種類とその見積額
あとは書類を提出するだけで完了です。
確定申告をする人の手続き
アルバイトであればたいていは年末調整を受けられるものですが、中には年末調整が無いケースもあります。
年末調整をしていない人は、年明けに確定申告をしてください。
確定申告の方法は以下から選べます。
- 税務署で書類を作成する
- 自宅で書類を作成して郵送する
- e-Taxを利用する(インターネットで完結)
手軽なのはe-Taxや郵送ですが、不安ならやっぱり税務署に行くのがおすすめです。
以下のものを持参してくださいね。
- 源泉徴収票
- 銀行の預金通帳
- 認印
- (あれば)健康保険や生命保険等の証明書
1年間の収入等がまとめて記載されているものを源泉徴収票と言い、職場で発行してもらえます。
健康保険や生命保険等の書類は学生だと該当することはあまりないと思いますが、あれば持参してください。
あとは、税務署で書類を作成するだけです。
書類の作成方法については、丁寧に教えてもらえますので安心ですよ。
ちなみに、勤労学生控除を受けるための確定申告は、正確には還付申告と言います。
2月16日~3月15日におこなわれている確定申告の期間以外でも受け付けてもらえますよ。
親御さんの扶養控除も確認しよう
勤労学生控除を受けられる人は、親御さん側の扶養控除が使えなくなります。
扶養控除とは、家族を養っている人が使える所得控除のことを言います。
給与収入が年間103万円以下であれば親御さん側に扶養控除が使えます。
子供がいれば誰でも扶養控除が使えるというわけではないのですが、高校生・大学生であれば扶養控除の対象になりますよ。
扶養控除により親御さんの所得が抑えられるので、その分所得税も軽減されます。
ただし、勤労学生控除を受けられるぐらいの所得があると、親の扶養を外れることになるため、親御さん自身が支払う税金が少し高くなります。
でも、親の扶養控除を外れても、勤労学生控除を使えば、世帯全体としては税金の金額を抑えることができます。
面倒くさいと言って確定申告に行かないのはもったいないです。
年末調整を受けていない人も、かならず確定申告して勤労学生控除を受けてくださいね。
浮いたお金を本来使いたい遊びや旅行などに使うことで、より有意義なお金の使い方ができるし、楽しみが増えますよ!