ひらめきメモが生まれた経緯・Twitterとの出会いやお金への執着心がなくなるまでの話|F太さんインタビュー

小山内 彩希の画像

お金で手に入らないものってなんだろう?

こんな問いを一度でも考えたことがある人は、少なくないんじゃないでしょうか。

お金があれば、モノから体験まで、私たちはいろんなものが手に入ります。

話題のお店でご飯を食べることも、流行りの服に身を包むことも、海外旅行に行くことも、ぜんぶお金を払えば実現できます。

このようなお金で買える体験を、お金を払わず実現してきたのが、フォロワー11万人超えのツイッターアカウント「ひらめきメモ」で日々発信をするF太さん。

ツイッターで培った信頼から、会いたい人に会えるようになったり、奄美群島に招待されたりするようになったのだそう。

そんなF太さんは、イベントでトークを重ねたりツイッターで発信をしていくうちに、「お金で手に入らないものは、オリジナルな体験だと気づいた」と教えてくれました。

F太さんインタビュー


インタビューした日:12月21日(土)

公認会計士の試験勉強と「ひらめきメモ」

── ひらめきメモが始まった経緯から教えてください。

F太:
僕は、宮城県出身で東京の大学を卒業しているんですけど。

大学時代は就職活動をしていないんです。大学4年生の頃、周りが就活をしている時期に、全然就活したくなくて。

エントリーシートとか何十枚も書いたりするじゃないですか。それが全くできませんでした。けっきょく自分は、そもそも何が好きなのかわからないと動けない。だからひたすら自己分析をしていたんですね。

── 自己分析を重ねた結果、どんな自分が見えてきましたか?

F太:
今の段階では、自分はやりたいことなんてない、ということに気づきました。

そのときに、ちょうど評論家の勝間和代さんの本を読んでいたんです。その本に勝間さんは大学生のときに公認会計士試験に合格していて、ということが書いてあって。

そこで僕は、「とにかく今はやりたいことはないけど、お金の知識をつけよう!」と思いました。お金の知識があれば、自分がなにか本当にやりたいことが見つかったとき、きっと役に立つだろうと考えたわけです。

そうして公認会計士試験に合格する、という目標ができました。

── お金に関する資格の中でも、難しい資格を取ることを目指された。

F太:
そんな流れで、2年間くらいのモラトリアム期間を獲得したわけです。けれどそもそも、そんな「とりあえず」の気持ちで勉強して受かるほど、甘くはなく。

しかも、全然勉強に集中できなくて。

Twitterに「集中できない」「公認会計士の勉強が辛い」なんてことを書いていました。それが意外と共感してくれる人が多くて。息抜きの方法とか、勉強方法とかも書いていく中で、次第にたくさんの人がフォローしてくれるようになりました。

それが、ひらめきメモが始まったきっかけです。

── 今、ひらめきメモでは、仕事のことや人間関係のことなど幅広いテーマで、新しい視点を与えるようなつぶやきをされている印象ですけど。もともとは公認会計士の勉強の息抜きのように始めたものだったんですね。

F太:
そうですね。僕自身もだんだんとツイッターの方がおもしろくなってきちゃって。

案の定、公認会計士試験には受かりませんでした。

だけど、自分は書くことが好きなのかもしれない、と気づけた。それに、公認会計士試験の合格を目指してなかったら、こんなにツイッターをやっていなかっただろうなと思うから、資格に挑戦したこと自体は結果的によかったのかな、と。

今はそう思えています。

プライドがなくなり選択肢が広がった

F太:
それでもやっぱり落ちた当時は、ガッカリきました。

── そうですよね・・・。

F太:
周りは新卒2年目で、着実に社会人としてキャリアを積み重ねている中、自分はただの無職の男性。しかも当時は会計士氷河期で、雇ってくれるところもなかなか見つからない状況でした。

僕は公認会計士になれなくて、そこではじめて就活をしたんです。上京して、妹の家や先輩の家、カプセルホテルを転々としながら。

すごく惨めな気持ちだったけど、簿記の1級は取れていたから「働きながら税理士の資格を取りたいんです!」と面接官に熱弁したりして。それで、一社、池袋の経理を募集している会社の一次面接に合格したんです。

── おおっ!

F太:
嬉しいのかと思うじゃないですか。でも、一次試験合格通知メールがきたとき僕が持った感想は、「うわ、いやだ」だったんです。

面接官の前であんなに熱弁していたくせに、急に「やりたくない!」と思っちゃって。このまま税理士として働く未来が、突然リアリティを帯びて目の前に立ち上がってきた。けっきょく、2次面接で落ちちゃったんですけど、落ちたことにすごく安心して。

「税理士になる? 公認会計士になる? 無理だ、やめよう」と諦めました。もうこれ以上、自分を騙せないと思ったんです。

── そこからF太さんはどんな行動を?

F太:
もはや2年間で培った簿記の資格も使えないとなったとき、いよいよ自分には何もないことを知りました。そうしたらなんだかもう、笑えてきて。

何もない自分でも、できることはなんだろう?

そう考え、思い出したのはコールセンターでバイトをしていたこと。そのときの自分は、正社員とか、親や友だちに納得してもらえるとか、そういう次元じゃない。とりあえず働かないと!という考えだったので、コールセンターで働くことに。

自分には選択肢なんかないって気づいたんです。でもどこか、精神的に安心したんです。自分にできることしかできない、というシンプルな考え方だったからかな。

── ツイッターは、ずっと続けていたんですか?

F太:
はい、ツイッターだけは。就活していたときも、コールセンターで働いていたときもずっと続けていました。カプセルホテルでビール飲みながらツイッターしていましたもん(笑)。

今思えば、ツイッターに支えられていたのかもしれないですね。

── F太さんのいい時も悪い時も、ツイッターとフォロワーさんがそばにいてくれたんですね。

F太:
そう思います。コールセンターで働きながらも、ツイッター経由で少しずつお仕事をもらえたり、収入を得ることができるようになってきてもいました。

一方で、コールセンターの方は楽しかったけど、どんどん働き方がブラックになってきていて。もしかしたらインターネット上で何かできるかもしれない気持ちもあって、かなり見切り発車で辞めました。

辞めることに対するハードルは、すごく低くなっていましたね。

── どうしてでしょう?

F太:
プライドが全然なかったからだと思います。プライドがなくなったのは、一度、何もない自分を受け入れざるを得なかったから、かな。

独立して上手くいかなかったら、またバイト先を探せばいい。そのくらいフットワークも思考も軽くなっていましたね。

不思議だなと思います。

コールセンターのバイトだって、「自分には何もない、だから選択肢なんてない」と思って始めたのに。そのプライドのなさ、なんの格好もつけなくていいと思えたことが、結果的に選択肢を広げてくれたんです。

お金で買えるものは、みんなが体験できること

F太:
独立してからはありがたいことに、関心があるイベントに呼んでもらえる機会が増えたり、奄美大島に招待してもっらたりなど、ひらめきメモの発信を通していろんなお仕事をいただけるようになりました。

お金を払わなくてもやりたいことができるんだ、と思える経験をさせてもらえることが増えたんです。

── それまでは、お金がないとやりたいことはできないと思っていた?

F太:
ひらめきメモを始めた最初の頃は、そう思っていましたね。

お金ってやりたいことを実現するための手段じゃないですか。

お金を使う目的って、僕の場合、何かしらの体験をすることだと思っていて。行きたいところに行くとか、会いたい人に会うといった体験。

だけど、お金を払わなくても、僕の発信に価値を見出してくれて、その信用がお金に代わって目的が果たされる経験をして。

お金それ自体を稼がないといけないわけじゃないんだな、と思うようになりました。

── 信用とか、自分のスキルとか。そういうものでもいいんじゃないかな、と。

F太:
しかもそれを、必ずお金に変換しないといけない、とも思っていなくて。

お金への執着心がなくなってきたのを感じています。

僕、こういう話をツイッターやリアルな場でもけっこう話したりしているのですけど。9割流されるんですよ。

── ええ!

F太:
だから今みたいに、おもしろがって聞いていただけるのは、自分にとってはものすごく嬉しいわけです。でもそれって、お金でどうこうなる問題じゃないと思っていて。

いくらお金を払っても、僕が嬉しいと思えるリアクションはもらえないんですよね。心の底からの感動とか、関心を寄せてくれる眼差しとか、頑張ってできるものじゃないわけで。

── そうですね。もともとその人のことが好きだったとか、自分の中のアンテナに引っかかるようなことがないと、心からの感想って出てこない。

F太:
そうなんです。自分が一緒にいて嬉しいと思える人って、出会う人みんながそうなわけじゃないですし。

つまり、お金でできることって、誰でもできる体験なんです。ツアー旅行に行くとか、美味しいご飯を食べるとか、お金さえ払えば誰でも平等に体験できる。

でもやっぱり、オリジナリティのある体験がしたいじゃないですか。自分だけの特別な、体験。そうなったときに、じつはお金って役に立たないんじゃないかな、と。

── オリジナルな体験はお金じゃ手に入らない。

F太:
きっと、お金基準とか損得勘定だけで行動していると、心からの感動からはどんどん遠ざかっていくんじゃないかな、と思ったりしています。

僕がお金に執着がなくなったのは、こういうことを思うようになったからかもしれません。

自分が何か価値を持っていて提供するときも、お金に変換する前の段階で提供した方がより良い体験とか出会いがある気がしています。

チームだからできる仕事をしていきたい

── F太さんは今は、会社員だと伺っています。

F太:
はい。1年ほど前に、友人のjMatsuzakiが設立した会社に入社し、会社員をしています。

やっていることは、個人事業主の時と変わっていなくて。オンラインコミュニティやイベント登壇、ツイッターでの発信など自分の好きなことをやらせてもらっています。

── 仕事内容は大きく変わらないということですが、会社員になって何か変わったことはありますか?

F太:
一番の変化は、今まで一人でやっていた仕事もチームで分担して取り組むようになったこと。

たとえば僕自身、SNSのコンサルティングの仕事を今まで一人でやっていたんですけど。それも今は会社のメンバーと分担してやっています。

僕はアイディア出しは得意な方なんですけど、毎月レポートをとったりとか、数字を管理することがすごく苦手で。でもそういうことが得意な人が会社にいるから、今はひとつ一つの仕事を以前よりクオリティ高く提供できていると思います。

── それぞれが、自分の得意なことを活かすことでより良い仕事ができるのは、チームで働くことの良さですよね。

F太:
そうですね、チームだからこそできる仕事があると思うので、今後はそこに注力していきたいです。

参考:jMatsuzaki株式会社で運営しているYoutubeチャンネル

── そこに紐づいて、お金をどのように使っていきたいと考えていますか?

F太:
もともとそんなに物欲もなく、お金のかかる趣味もないので、そんなに浪費家ではないんです。だから、お金の使い方に関しては今のままで、現状維持したいなと思っています。

だけど、周りの人からはけっこうお金の考え方の影響を受けていて。仕事に関するお金の稼ぎ方で影響を受けたのは、パートナー。

── パートナーの方はどんなお仕事を?

F太:
1日カフェのようなことをやっていて、クッキーなど、お菓子づくりをしているのですけど。

今って3Dプリンタとかで大量生産できるじゃないですか。けれど僕のパートナーは一つ一つ手作業で作っているんです。僕は最初それを見て、すごく効率の悪いことをやっているなぁと思っていたんですけど。

でもそれを2・3年続けているパートナーは、着々とファンを増やしていて。そこで僕はやっと、この丁寧さが価値かもしれない、と思うようになりました。

── パートナーの仕事をそばで見ている中で、考え方が変わった。

F太:
大量生産もそうですけど、均一に作るとか、毎日おなじ調子のものを提供するとかについては、技術の革新でどんどん機械には敵わなくなっていっていると思います。けれど、やっぱり人間だからできる仕事があって。

時間をかけて向き合うとか、どれだけ真心がこもっているかとか。ファンはそこに気づいた人たちなんだろうな、と。

パートナーを見て、これが今の時代の稼いでいる人なんじゃないか、と思いました。

僕は最初、お金基準でいろんなアドバイスをしていたんだけど、違ったんだなと。むしろ、本当に自分の中で届けたい価値があるのに、「お金にならないからやらない」なんてすごくもったいないことなんだと思うようになりました。ちゃんとその気持ちにファンはつくから。

というふうに、パートナーからも、たくさんお金の考え方・仕事の考え方の刺激を受け取っている日々です。

インタビューした感想

「お金で手に入らないものは、オリジナルな体験」。

このお話はとても納得感があり、と同時に、「自分自身がこれまで人から何気なく受け取ったり、人に与えていた“特別”は、決して代替不可能なものなんだ」と思いました。

そしてそう思ったら、今まで以上に、自分の気持ちを大切にしてみたくなったりも。

お金は生きていく上でとても大切で、なくてはならないものだと思います。けれどもお金では手に入らないものに、私たちは心から救われたりするのかもしれない。そんなことを考えた取材でした。