毎週の夫婦ミーティングで「ぶっちゃけられる」関係になるまでの道のり。漫画家・ふっくらボリサット夫妻

みやじままいの画像

私事でたいへん恐縮なのですが、結婚して丸2年が過ぎました。

とはいえ結婚して1年半ちょっとの間は別居していたので、夫婦一緒に暮らすようになってからようやく半年、といったところです。

で、いきなりなんですが、夫婦生活って難しくないですか・・・?

これからの人生、ともに歩んでいくぞと決めたものの、所詮は個人と個人。

それぞれのやりたいことやそのタイミング、お金、生活リズム、小さいことでいえば部屋のインテリアなど、「育ってきた環境が違うから好き嫌いはイナメナイ〜」のオンパレード。

ささいなことで食い違って空気が悪くなったり、逆に喧嘩を避けたいがために言いたいことを遠慮してしまい、薄い紐で縛られているような感覚に陥ったり。

いや、楽しいことももちろん増えています。でも、もっとちゃんと腹割って話していかないと、いつか無理が出る気がする。これからのほうが人生長いしなぁ・・・。

ということで、私が知る中で一番のおしどり夫婦だと思うふたりに、夫婦円満の秘訣を聞くことにしました。

タイと日本を行き来しながら漫画やイラストのお仕事をしている「ふっくらボリサット」ご夫妻。

左が圷健太(あくつ・けんた)さん、右が漫画家のふっくらボリサット(以下ふっくら)さん。タイ語で「ボリサット=会社、事務所」という意味があり、ふたりのユニットで「ふっくらボリサット」なんだそうです。

▲漫画の中に登場するおふたり。垰さんは漫画の中では「サミ太郎」の愛称で登場している

 

健太さんはタイ・バンコクで動画制作の会社を経営しながら、ふっくらさんの右腕として漫画の企画やプロモーション、マネージャー業務を手がけています。

反対に、ふっくらさんは漫画家の仕事とは別に、健太さんの会社でデザイナーのお仕事もしています。

つまり、生活も仕事も常に一緒!
24時間夫婦勤務体制!

戦争が多々起きそうな環境にもかかわらず、常に仲良くいられるのはなぜなのか。お話を聞くと、そこには独自のルールを設けた「夫婦ミーティング」の存在がありました。

ふっくらボリサットさんインタビュー

ポジティブ夫の突然の決断によりタイに移住

── 今はタイ・バンコク在住ということですが、移住のきっかけについて教えてください。

ふっくらさん:
ある日、夫が急に「タイで働いてくる!」って飛び立ってしまったんですよね。

── いきなりドラマですね。

健太さん:
2011年の東日本大震災のときです。僕は当時イベント会社に勤務していたんですが、震災の前日に仙台にいて、前日に通った道が津波で流されているのをテレビで見たんです。

そこで、「いつ死んでもおかしくない。だからこそやりたいことをやるべきだ」と思いました。

その後、いろんな可能性を考えて、ピンときたバンコクの求人に飛びつきました。最初は現地の企業に勤めて、その後現地で映像制作の会社を自分で立ち上げました。

── 健太さんはバリバリの海外起業家なんですね。でも、ちょっと待ってください。その間ふっくらさんは?

ふっくらさん:
わたしは日本の会社でデザイナーの仕事をしていました。

健太さん:
結局1年半待たせたんです。そのあとタイに1回お試しで来てもらって、彼女も住めそうだということで、移住してもらいました。結婚はタイに来てからです。

── ふっくらさんにとっては、いきなりのタイ移住だったんですね。

ふっくらさん:
そうですね。まさに。

── 旦那さんのスケールの大きいワガママに巻き込まれたようにも見えるのですが、そこに不安や不満はなかったんですか?

ふっくらさん:
不安しかなかったですよ! わたし、基本的にすっごく消極的でネガティブなんですよ。夫は、ポジティブで行動力のカタマリで。

夫はいつも「行こうぜ!」「やろうぜ!」と予想のななめ上のことを提案してくるので、タイ移住に関しても不安だらけだったんですが、それをいったん脇に置いて、来てみたら意外とよかったという感じです。

毎週の「夫婦ミーティング」で感情の言語化を習得

── 性格が正反対のおふたりなのに、大きな人生の決断も揉めずにうまくいっているのがすごいです。今日はその秘訣を聞きたくて来たんですよ!

ふっくらさん:
揉めてはいないけど、当時は今のようになんでも話せる関係性ではなかったです。特にわたしは内に溜めてしまう性格なので・・・。

健太さん:
僕も、日本にいるときより自由になったし、ふっくらも来てくれて幸福度も高いけど、「到達点はここじゃない」という気持ちがどこかにありました。

それを、たまたま入ったカフェでぽろっと話したのをきっかけに「夫婦ミーティング」が始まったんです。今では毎週定例化しています。

── 夫婦ミーティング? 何を話すんですか?

ふっくらさん:
本当に様々ですね。最初から議題を用意することもあれば、お互いに読んだ本の感想を共有したり、「昨日の親子丼おいしかったね〜」から始まってなんとなく話しているうちに盛り上がってくることもあります。

── それって、普段のおしゃべりとあんまり変わらないような気がするんですが、あえてミーティングにするのは何か理由がありますか?

健太さん:
夫婦ミーティングにはいくつかルールを設けています。まず「ぶっちゃける」こと。素直に言う。

ふっくらさん:
それは我が家の家訓でもあるんですけど。

── 家訓(笑)。でもそれって、いやな空気になったらいやだな〜とつい遠慮しちゃったりしませんか?

健太さん:
そうそう。ぶっちゃけるって、燃えてる魔球みたいなもので、投げる方も大変だし、受け取るほうも大変なんです。どっちも痛い。

ふっくらさん:
ルールを決めたものの、最初は全然言えなくて。そもそも最初は、自分が何を思っているのかを言語化するのが難しかったんです。

▲cakesで連載中の漫画『メンタルジャングル探検記~ネガティブな自分にかかった呪いを解く!~』より。言語化に苦戦していた時期のことが描かれている

健太さん:
ふたりともすごく溜まってました。でも何を言いたいかもわかってなかったんです。本当に言語化が下手だったよね、あのころは。

── それって訓練すればできるようになるものですか?

ふっくらさん:
なります。わたしは考えを口に出すのが本当に苦手で、今も下手なんですけど、それでもできるようになってきています。

── ほかにもルールはあるんですか?

ふっくらさん:
相手が言ったことに関して、否定しない。なんでもいったん受け入れる。

── 聞いてすぐ「何それ?」って言いたくなるようなことでも?

ふっくらさん:
そういうときは「ほう、君は何を言っているんだ」という感じでいったん静観します。

── (笑)。受け入れ力がすごいですね。

ふっくらさん:
あとは、ミーティングは家じゃなくて場所を変えてやるようにしています。公園を歩きながら、とか。

健太さん:
一番言葉が出るのって歩いているときなんですよ。アイデアが浮かぶときもそうだったりしませんか?

── たしかにそうですね。体を動かすと気持ちもポジティブになりますしね。

健太さん:
そうそう。そんな感じで夫婦ミーティングを手探りで始めて2、3回やるうちに、自分の気持ちを表現するのに最適な言葉がだんだん見つかるようになってきたんです。

そうしたら、ふっくらが急に「わたし、絵を描きたい・・・」って言い始めて。

── ミーティングきっかけで漫画家になりたい自分に気がついたんですか?

ふっくらさん:
そうなんです。美大出身だし、絵を描くことはできるんだけど、それを発信しようという発想はなかったんです。でも話しているうちに「描いてみたい」という言葉が口から出てきて。

健太さん:
消極的なふっくらの口から「絵を描きたい」って聞いたときはうれしかったなあ。

夫婦の会話が増えたことで幸せの利息が得られた

── 夫婦ミーティングを始めてから、おふたりの中で一番変わったことってなんですか?

ふたり:
会話がめちゃくちゃ増えたことですね。

健太さん:
相談するといい答えがもらえるようになって、自分の仕事にも具体的に活かせることが増えてきた。そこでコミュニケーションにはインセンティブがあるというのが脳みそに刷り込まれたんです。

ふっくらさん:
お互いに、隠し事しているよりシェアしているほうがいいぞってことに気づいたことで、なんでも早いうちに相談できるようにもなりました。

煮詰まってから相談すると、「なんでもっと早く言ってくれなかったの?」ってなるから、早いうちに。

── なんだか会社みたいですね。報連相。

健太さん:
そうそう、会社と同じ。ほかにも、月ごとの短期目標や人生単位での長期目標を決めて、夫婦でスプレッドシートを共有していて、小さい目標でも達成したら全力で褒め合うようにしています。

── なんですかそのホワイト企業は・・・!

ふっくらさん:
そんな夫婦のコミュニケーションをSNSで発信していたら「理想の夫婦」と言っていただける機会も増えたので、「プロ夫婦」を名乗って漫画にしたんです。

▲プロ夫婦のライフハックはふっくらボリサットさんの人気コンテンツのひとつ

── たしかに、夫婦間コミュニケーションって悩んでいる人やあきらめている人も多いからすごく需要ありそうです。

ふっくらさん:
わたしたちの場合、拠点が海外なので触れ合う日本人の数も少ないし、夫婦で仕事をしているから、風通しをよくせざるを得なかったんです。でもその方法に対して読者の方から反響をもらえて、うれしかったですね。

── 家計とか現実的なお金の話も夫婦ミーティングで決めてるんですか?

健太さん:
家計に関しては結構自由にやっています。

── いろいろ細かく管理しているのに、そこは自由なんですね!?

健太さん:
僕は会社を経営する中で学んだことが多いんですが、今はキャッシュを貯めるよりも、お金じゃない資産に投資したいと考えていて。

── お金じゃない資産ってたとえばどういうものですか?

健太さん:
たとえば、漫画を描いたとして、今すぐにまとまったお金がもらえるわけではないけど、拡散力のあるメディアと仕事をするとか。

その掲載をきっかけに、知名度が上がったり、ほかの仕事につながれば、それは未来への投資になりますよね。

── たしかに・・・! 将来の仕事につながるなら目先の報酬より価値があるというのは、理解できます。

健太さん:
物価はどんどん上がっていくので、今の100円は10年後にはもう同じ価値ではなくなってしまう。お菓子の値段は変わらないけど、どんどんサイズが小さくなっていっているのと同じです。

だからお金を貯めるよりも、時間とか仕事のチャンスとか、もっと伸び代のある資産に投資していきたいんです。

▲「右肩上がりになる資産を見極めて投資したい」と健太さん

ふっくらさん:
それでいうと、仲のいい夫婦だってことをまわりが認めてくれていることも資産だよね。

健太さん:
そうなんです。夫婦というコンテンツを漫画にできたり、そこから反響をもらって、今日のように話を聞きたいと思ってくれる人がいるなら、もうそれは僕たちの資産なんですよ。

【編集後記】インタビューを終えて

成功している人は必ずどこかで努力している。

ふっくらボリサット夫妻のお話を聞いて、それは夫婦関係でも同じだということがわかりました。

運命のふたりかのように見える夫婦も、もともとの相性がいいだけではなくて、お互いがお互いを知るためにきちんと努力して向き合っているのです。

さらにいえば、ふっくらボリサット夫妻がすごいのは、その円満の秘訣を漫画というコンテンツにのせて、だれでも真似ができるように、世の中に発信していることだと思います。

このインタビューから数週間後。

わたしもついに、今思っているいろいろなことを夫に全部話してみました。たぶん言葉は途切れがちで、うまく要領を得ていなかったと思います。

でも、口から出た言葉はすべて否定をされることもなく、夫は夫で今考えていることを正直に話してくれました。

終わってみれば簡単なことだけれど、最初の一歩が踏み出せなかった。

もし、わたしと同じようなモヤモヤを抱えている人がいるならば、ぜひふっくらボリサットさんの漫画を読んでみてください。きっと背中を押してくれるから。

▼ふっくらボリサットさんの作品はこちら
感情の言語化に悩んでいる人へ
メンタルジャングル探検記〜ネガティブな自分にかかった呪いを解く!〜(cakesで連載中)

夫婦でお金について考えた話
お金は人を変えてしまうのか(noteで連載)

そのほか、連載漫画やブログはHPから
ふっくら生きてるボリサット

▼ふっくらボリサット夫妻のSNSはこちら
Twitter:ふっくらボリサットさん
Twitter:サミ太郎さん(健太さん)

▼サミ太郎(健太さん)が最近取り組んでいるブロックチェーン事業はこちら
LasTrust(ラストラスト)

この記事を書いた人

編集者・ライター。雑誌出版社に勤務していましたが、取材で訪れたタイ・バンコクの街に一目ぼれをし、即移住。現地のフリーペーパー編集部で3年半働き、今は帰国してフリーランスに。人生において毎日の生活をおくる「場所」がとても大切だと考えていて、いつも最高の住みかを探しています。将来はバンコクにも自分の居場所(ゲストハウス)を作りたい!